第15話 リクトの決断
「リクト……?」
「家主の俺が許すよ。少なくとも怪我が治るまではこの家にいていいぞ」
「ちょっとあんた、さっきの話聞いてたの?」
リコが呆れたような口調で諭す。
「もちろん聞いてたさ。確かにリコが危惧することは今後起こり得ることだし、その可能性は非常に高いと思う。けどさ、それって結局リコの推測に過ぎないんだ。リコの言葉を鵜呑みにして、自分の考えを持たずに決めてしまうのは愚かだよ」
「リクト……」
「俺はリコの意見を鑑みて、その上で自分で考えて決断した。確かに普通に考えればここでラグナを見捨てて今までのことはさっぱり忘れていつも通りに暮らした方がいいと思う。でも、困っている人を見捨てて何気なく過ごせるほど非情にはなれない」
「……ふん、じゃあミソラちゃんはどうなってもいいの?」
「そういうわけじゃない。ミソラも大事だけど、ラグナも見捨てることはできないってだけだ。第一、お前がさっき言ったことが本当に起こるかどうかなんて、誰にもわからないだろ」
「起きてからじゃ遅いのよ」
リクトとリコは論争を続ける。
「とにかく、俺はラグナを見捨てない。あまい考えと言われてもだ」
「……あんたの考えはわかったわ」
納得はしていないが、理解はしたようだ。
「……リコ」
「まあ、あんたならそう言うと思ったけどね。人としては正しい選択だと思うし」
「お前はどうする……っていっても、答えは決まっているか」
「あんたがラグナ様を見捨てないなら、私も同意するわよ。あくまでもミソラちゃんのためだけどね」
「……素直じゃないやつだな」
そう言いながらも、リクトは苦笑した。
「というわけだ。二人とも怪我が治るまではこの家にいろよ」
「そうですよ!」
「ま、お人好し兄妹がこう言ってるんだし、厄介になったら?」
三人はラグナたちに残るように提案する。
それを聞いたラグナは、
「……本当にすまない」
と礼を述べた。




