第1話 世界観とプロローグ
惑星イル・グランド。この世界には四つの大陸と一つの小さな島があると伝えられている。
小さな島はエデンシアと呼ばれているのだが、その島に辿り着いた者がいるという記録は残っておらず、人々からは幻の島と呼ばれている。誰も辿り着いたことのない島として知られており、存在するのかどうかも怪しいのだが、何故か過去の文献にはエデンシアについての記述がなされている。
幻の島エデンシアを世界の中心としてみると、四つの大陸は綺麗に四つの方角に分かれており、それぞれ北方大陸、西方大陸、東方大陸、南方大陸と呼ばれている。
四つの大陸にはそれぞれ特徴がある。
北方大陸は他の大陸に比べて技術が発達しており、他の国にはないような武器や機械などがあり、それらを輸出して資金を得ている国もある。
南方大陸は、未開拓の地、または謎の大陸として知られている。南方大陸については大陸の半分ほどはまだ解明されてなく、世界的に知られているのは大陸上部のみである。大陸下部は謎の霧に包まれており、先に進もうとしても何故か元いた場所に戻されてしまう。過去の文献にも、南方大陸下部の情報は記されていない。南方大陸上部では鉱石などの物資が豊富に採取でき、資源の大陸として知られている。それらの資源を使って商業的に成功した者もいれば、そこで修行して傭兵として成功した者もいる。ゆえに、南方大陸は人生をやり直す場所としては最適であると言われている。
西方大陸には、世界に二つある帝国の内の一つであるオラシオン帝国が存在する。オラシオン帝国は西方大陸最大の国家であり、同時に世界で最初に造られた国家として知られている。
東方大陸には、もう一つの帝国であるヴィクリード帝国が存在する。ヴィクリード帝国は、世界最大で最強の軍事国家として知られており、ヴィクリード帝国に努める一般兵は、他国の騎士団長に匹敵する実力を持っていると言われている。
また、ヴィクリード帝国は傭兵国家として世界中から認識されており、ヴィクリード帝国の兵士たちは世界中に傭兵として派遣され、様々な国の戦争に加担している。ヴィクリード帝国はほかの国とは違い、王族や貴族が存在しない。もちろん階級による身分の差はあるものの、法律では戦争で実績を上げれば平民でも高位の騎士になることもでき、実力さえあれば皇帝になることも可能となっている。
オラシオン帝国とヴィクリード帝国は古くから対立しており、両国の間では幾度となく争いが起きていた。争いとはいっても、ヴィクリード帝国から戦争を仕掛けることはなく、あくまでも自衛のための戦いとなっている。
平民が主体となって国を統治しているヴィクリード帝国の存在を嫌うオラシオン帝国に対し、ヴィクリード帝国は傭兵国家として自国の兵を他国の戦争に駆り出すことはあっても、基本的に国としては他国との戦争をすることはなかった。
しかし、歴史は一変する。
大陸歴3085年、ヴィクリード帝国はついに宣戦布告をする。その理由は公式上は度重なるオラシオン帝国の攻撃に対し、これ以上の攻撃を許すことは自国の民を不安にさせるため、やむなくの決断である、というものだった。
これが、後に伝わる東西戦争の始まりとなった。
東西戦争ではオラシオン帝国とヴィクリード帝国以外の国も参戦し、正に大陸同士の面子を掛けた大戦となった。
オラシオン帝国は西方大陸にある国と同盟を結び、これに聖帝連盟と名付け、ヴィクリード帝国を滅ぼすという大義名分で戦争を行った。
一方のヴィクリード帝国は他国に協力を仰ぐことはしなかったが、東方大陸の国々がオラシオン帝国が聖帝連盟を結成したことから、ヴィクリード帝国に自主的に手を貸す形になった。
戦争は50年近くに及ぶ長さとなり、多くの兵士たちが戦争によって命を落とした。戦場は戦況が変わる度に変化し、西方大陸が戦場となる場合もあれば、東方大陸が戦場となる場合もあった。戦争によって多くの村々に被害が及び、これによって命を落とした者も大勢いた。それに加え、国を追い出されたならず者や賊たちが、戦争の混乱を利用して略奪行為を及ぶようになった。
東西戦争が行われたことによって、両大陸の治安は大きく乱れ、オラシオン帝国、ヴィクリード帝国以外の国は存続の危機に直面するほどとなってしまった。この現状を受けた両国は、凄惨な被害を見て反省し、表面的な和解をすることによって大陸歴3135年に戦争を終結した。
そして、物語は東西戦争が終結した5年後である、大陸歴3140年から始まることとなる。