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「あ……あぁ? なんだ、これ」
「イヤなタイミングで来ちゃったなぁ」
どうやら玲奈は何度か遭遇しているらしい。
「これは、ファクト。死ぬ前の行動が、ここに映されるの。それで光の世界か、闇の世界への扉が現れる。一人しか通れなくて、行き先はどっちか分からない。二回まで扉を拒否してもいいけど、それ以降は永久的に生まれ変わる事は出来ないみたいだよ。……私は、これで三回目。もう、拒否出来ない」
つまり、ここに閉じ込められる事は地獄よりも辛い経験を積むという事なのだろう。 どおりで、すれ違う者たちは全員嘆き悲しんでいるわけだ。
ファクトには、まるでホームビデオのように玲奈の生前が映されている。
「やっと出会えたのにね。……けーくん、ずっと私を探してくれてたのに……」
ずっと二人して眺めていた。
あったよな、こういう事、などと懐かしがっていると、天を見上げるような扉が現れた。
行ってしまう。大好きな玲奈が、伝える前に行ってしまう。
「あっ、玲奈……!」
「んっ?」
「あっ、あの……」
全然、男らしくない。自分でも分かっている。言ってしまえば、楽になるのに。
「……言わなくても、ちゃんと分かってるよ。だって、何回も聞いたから」
エスパーは、いた。目の前に。柔らかな笑顔で啓介を見上げている。
「けーくん、本当に素直じゃないんだから。ユイちゃんの心を守るために真っ白な嘘をついた事も、大切な事に気付いて涙を流していた事も、私……ちゃんと見てたよ」
腕を優しく身体に絡めてくる。啓介の鼓動が、一気に高まった。
嫌だ。離れたくない。もう二度と、この手を離したりはしない。
「だから……来世で、待ってるね」
本当は涙を堪えていたのだろう。
最後だから。二度と、会えないから……言おう。
「愛してるよ、玲奈」
胸に手を当て、微笑んでいる彼女に、渡すものがあったのを思い出す。
「……どうかこの指輪、受け取ってくれないか」
ポケットの中には、あの指輪は入っていない。代わりに、赤いマフラーの毛糸くずが入っていた。
嗚咽は聞こえなかった。扉が開いたかと思った途端、玲奈は眩いまでの光に包まれ、消えていった。
最後に顔をくしゃくしゃにし、涙ながらに何か言っていた事だけが、啓介には心残りだった。




