表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当の言葉  作者: beats
1/2

箱から出た猫のよう

拙く短い小説ではありますが、よろしければ見ていってください。


僕はおじいちゃんが嫌いだ

だっておじいちゃんが僕の事を嫌いだから

口も聞いてくれない

だから…嫌い…












僕が小学校低学年の頃にお父さんは死んだ

交通事故だった…


お父さんが死んでからお母さんは僕を育てるために毎日仕事に行く

その間、僕は一人暮らしをしている父方の祖父の所に預けられる


おじいちゃんからすれば息子が

死んだばかりだったはずなのに僕には

弱い部分を見せないで、ずっと強くて…

優しかったんだ


僕はおじいちゃんの前で

何回も泣いて

何回も笑って

何回も怒って

何回も落ち込んで

何回も色んなことがあって

嫌いなんかじゃない


大好きなはずなんだ





なのに最近になっておじいちゃんの態度が

急変した…

何度か会いに行ったが暴言を吐かれてしまう








僕はもう一度おじいちゃんの家に訪れた

引き戸の横に付いているインターホンを押すと、家の中から外にも聞こえるような

少し不満そうな…そんな足音

ガラガラと引き戸を開く音と共におじいちゃんの姿が見える

おじいちゃんの顔は明らかに不満そうだった



「…」



おじいちゃんは少し口を開いたが

結局声も発せず、体を後ろに向けようとした




「待っておじいちゃん、お願い話を…」




おじいちゃんはわざと叩きつけるように引き戸を閉めた

拒絶と怒りと音が僕に恐怖を感じさせ

目からは涙が流れ始めていた

中学生三年生の僕には好きな人からの

拒絶や怒りをぶつけられるという事にまだ慣れていなかった

いや、今まで出会った人達が優しい人ばかりだったからかもしれない


弱い自分を情けなく思う


僕はしばらくドアの前で泣いていた

もう三回目なのに未だに泣いてしまう

少しは泣く時間が短くなってきたとは…思いたい

泣くたびに、おじいちゃんなんか嫌いだと思ってしまう自分がいる

本当は嫌いじゃないはずなのに

大好きなはずなのに

自分の都合の良いように進まないだけで人を嫌いだと思ってしまうなんて…

三度目の正直だと思って来てみたが

二度あることは三度あるようで。

涙が乾いた頃には「嫌い」という感情も少しずつ薄れていた

そして、前回と同じようにとぼとぼ歩いて帰る


歩きながら空を眺め弱い自分について考える

泣かないで、あと一歩を踏み出せば何か変わるんだろうか

単純におじいちゃんが怖くて

これ以上嫌われるのが怖くて

歩みだす勇気が僕にはなくて


「昔に戻りたいな」


ふと歩きながら呟いた本心は、僕の心をより傷つけてしまった

楽しかった時の時間を思い出すと、また目から涙が流れそうになる

考えちゃ駄目だ

泣きたい身体を泣きたくない気持ちで押さえつけながら家に帰る




もう泣かない

お母さんに心配をかけないためにも

玄関の前で気持ちを切り替えて…



「ただいま」と言う




お母さんのお帰りに安心しながら

二階の自分の部屋に向かう

明日から夏休み

何をして遊ぼうとか

どこに行こうとか

ではなくおじいちゃんの事ばかり考えていた

どうやったらまた元の関係に戻れるのか

また一緒に楽しくお話したいと…

そんな事ばかりをベット寝ながら考えていた





こうしたら、ああしたらと考えていると

下の階からお母さんのご飯だよー

という声が聞こえてきた

僕は身体をゆっくりと起こして下の階に向かう

僕が席に着く

お母さんも席に着く


いただきます


目の前にある美味しそうなカレーを食べ始める

するとお母さんが重たそうに口を開いた





拓真、またおじいちゃんの所に行ったのね


な、なんで知ってるの…


もう行かないって約束したでしょ


ご…ごめんなさい


お母さんはね、拓真に悲しんで欲しくないから言ってるんだからね…


う、うん。わかってるよ






わかっていた…それでも僕はまた行ってしまった


先週もおじいちゃんの家に行った

二度目だった

怒りに満ちたような「帰れ!」という言葉に涙する

泣いて家に帰ってきた僕を見てお母さんは

すぐさまおじいちゃんの所に向かった

僕は家で泣いていて分からなかったけれど

おじいちゃんはお母さんにもキツく当たったのだと思う

おじいちゃんの所から帰ってきたお母さんは怒っているようだったから。

それ以来、お母さんは僕におじいちゃんの所に行かせないように約束をさせた


今後、おじいちゃんの所には行かない


僕はその約束にしたはずだった

その場では、もうおじいちゃんなんて嫌いと思っていたから。

でも、しばらくすると元に戻って

今度こそ…と思ってしまったんだ









カレーを食べ終えるとお母さんは

また口を開いて




おじいちゃんは変わってしまったの

だから、もう行ったらダメよ


う…うん、わかったよ




食事を終え自室に戻る

ベットに横になりながら、ずっと同じ事を考える


どうしたらいいんだろう


このまま、ずっと…



おじいちゃん…

僕は考え込みながら眠ってしまった












夢の中で一度目に泣いたあの日を思い出した


学校が終わって友達と遊ばない日は

きまって、おじいちゃんの家に遊びに行く

お母さんは働きに行ってるから家に居ても一人だったからだ


その日は、おじいちゃんの家に行っても

鍵が掛かっていた…

どこかに出掛けてるのかな

と思い、家に帰ろうとした時だった


ちょうど帰ってきた、おじいちゃんに会った

暗い顔をしていて、少し話しかけるのが気まずかった





おじいちゃん…大丈夫?


…拓真か


大丈夫?凄く顔色が悪いよ?


わしは、大丈夫だ……

悪いが今日は帰ってくれないか



でも、おじいちゃんが体調が良くないなら僕、看病するよ!だって一人だと大変でしょ!




僕の言葉におじいちゃんは一瞬嬉しそうな顔をした。だけどその顔は本当に一瞬で見間違えだったかのように変わっていった

嬉しいではなく、迷ったような辛いような

そして決心したかのように僕に言葉を放った



いいから帰れ!





おじいちゃんの大きな声に僕は体をビクッとさせて恐怖を感じてしまう

驚きのあまり、ほんの少しだけ涙が流れた

どうして?と聞く前におじいちゃんは

家の中に入っていた…

わけがわからなかった


いつものおじいちゃんは、そんな怒り方をしない

僕が悪いことをしたら、それを正すかのような

しっかりとした意味のある怒り方をするのに

今のじゃ、ただの八つ当たりみたいだ


何がいけないのかったのかも分からないまま

怒っていいのか、泣き続ければいいのか

わからないまま家に帰った










嫌なところで目が覚めた

そうだ、あの日のおじいちゃんはおかしかった

いつもと様子が違ったんだ


そう考えていると何故だか背中に悪寒が走った

なんだろう

凄く嫌な予感がする

今、何かをしないと後悔するような…


…あ!





僕は、ある事に気がついて自分の部屋から飛び出して、おじいちゃんの家に向かった

※作中に猫は出てきません

期待した方は申し訳ありません





次回は主人公じゃないお話

来週の同じ位の時間にはあげたい(希望)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ