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古びた男

作者: つきびと

古びた街並よりも古びた男が街を訪れる

飯食うにもお金は無し

安眠する寝床も男には無し

男は生きる1つの命を燃やし続けながら生きる

それは意味の無いことだとしても

生きている


古びた廃屋よりも古びた男が寝ている

焼け落ちている廃屋には人はいず、それを直そうともしてない

故に男はここで寝ている

雨やどりそのつもりの廃屋は男の住処となっていた


古びたパンよりも古びている男がそれを食している

口に入ればそれでいいとゴミ箱から取ってきた

空腹に耐え切れずそれを口にする

少し不安な味だが男はそれを食べ終える

またゴミ箱を漁りにいった


古びた男と同じくらい古びた男がゴミ箱を漁っていた

最初はお互い警戒しあったが古びた男たちは気の合う仲間となった

苦労話をして共にそれを分かち合って

それから

古びた男と同じくらい古びた男は

油断していた古びた男を背後から棒で叩いていた

古びた男はそこで死んだ

古びた男と同じくらい古びた男は古びた男の持っていたリュックを担いで

歩き出した


古びた男と同じくらい古びた男はリュックを漁っていた

数年前、住んでいた町が戦争により荒廃した

地位も名誉も財産も家族も失った

生きる為になんでもやった盗み騙し殺し

このリュックの中身がどうであれ生きなくてはいけない

その為にならどんなことをしてでも生きてやる

リュックの中には食い物なんてなかった

ガラクタばかりが入っていた

ハズレだと思った

リュックの奥のほうにインクが切れた万年筆と手帳が入っていた

その手帳には写真が挟まっていた

何年か前の兄弟と写っている自分の姿だった

男は狂った兄弟を殺してしまった

男は殺した古びた男のところに戻った

殺した古びた男の遺体は何処にもなかった

古びた男と同じくらい古びた男は泣きながら叫んでいた


古びた教会の中で古びた男を殺した古びた男と同じくらいだった男がそこで懺悔していた

「神よ私に救いを・・・」

多くの罪は全て兄弟と再会する為、生きる為に仕方が無かった

その兄弟を殺してしまった

戦争により離れ離れになる前に私たちは約束した

「私たちはここで別れることになるだろうそれでもどんなことをしてでも生きてまた会おう」

私たちは逃げる船と人ごみに紛れて別々に分かれた

「神よ、私は多くの罪を犯しました、生きるため約束のため私は罪を犯しました」

この男の後ろにはリュックが置かれているその兄弟の持ち物全てがそこに入っている

「神よ私は兄弟を殺してしまいました」

長い時間古びた男と同じくらい古びた男はそこで伏せていた

古びた男と同じくらい古びた男の後ろにあったリュックが少しずつ古びた男と同じくらい古びた男から遠ざかっていきました。

古びた男と同じくらい古びた男は頭の後ろに衝撃を感じた

神よ、私に兄弟と会わせてくれ

古びた男と同じくらい古びた男はそう願いながら息絶えた

古びた男と同じくらい古びた男は死体となっていた


古びた男の持っていたリュックを持っている普通の男は住処へと戻っていた

「探し物はみつかったかい?」

古びた男の持っていたリュックを持っている普通の男は手に持っているリュックを見せた

「ああ、大切な兄弟の写真と一緒に取り返せたよ」

兄弟を殺した兄弟は約束と思い出のために盗まれたリュックを取り返した

「よかったな、兄弟と会えるといいな」

「大切な兄弟なんだ絶対再会してまた一緒に・・・」


神よ、あなたは叶えてくれたのですね

またもう一度兄弟と出会わせてくれたのですね


その数時間後その街でまた戦争が起こった


それからどうなったか誰にもわからない

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