シルヴェスタ城~巫女の石
――起きて
(ん……?)
――ありあ、起きて。
ありあは……目を開けた。
(え……?)
一面緑色の光に包まれた、不思議な空間。ゆっくりと身体を起こした。
ここ……?
――ここは、巫女の石の中。あなたの意識を……移したの。
巫女の石? ありあは立ち上がり、手を伸ばした。緑色のガラスの様なものに手が触れる。
――あなたの身体は今……闇の眷属が憑依している。
闇の眷属!? ありあは目を見張った。緑の光の向こうに……薄っすらと透けて見える、のは……
『グラントっ!?』
闇の刃が、自分からグラントに飛ぶ。グラントが剣で薙ぎ払う、のが見えた。
『これ……私がやってるの!?』
――正確には、あなたの身体を乗っ取った、闇の眷属の力
グラントが顔をしかめた。まさか左手……!!
――あなたの身体は……魔力に耐性がある。だから、闇の眷属が憑依しても……身体が腐る事もない。
『じゃあ……』
――このままでは、あなたは……『闇の眷属』として、人の命を奪うようになる。
『!?』
(そんな……っ)
ありあはガラスを叩いてみたが……びくともしなかった。
――グラントは……そんなあなたを、そのままにしておけない。
『え?』
――彼は……あなたを止めようと、している。
『グラント……?』
――あなたに……自分の手で、とどめを刺すつもりよ。
『――!?』
グラント……が!?
『……い、や……』
『嫌っ!!』
――ありあ?
「城に戻った俺は……父上を闇から解放した」
「……闇に支配された貴族達も、城の使用人も……俺がこの手で……」
「『魔王』と呼ばれるようになったのは、その時からだな……」
――抑揚のない声。感情のない横顔。
『も……う……』
『もう……グラント、に……』
『あんな顔……させたく、ないっ……!!』
もし……私を殺したら。グラントは……グラントは、どうなるの!?
『いや、なのっ……!! グラントが……悲しい思いをするのはっ……!!』
――グラントを……助けたい?
『助けたい! もう……もう二度と、心が凍るような事、させないっ!!』
――では……強く想って。彼の事を。
『想う……?』
――あなたの想いが……世界を超えて、道を造る。
『世界……を……』
――そう。あなたの……金の炎を取り戻すの。
『金の……炎……』
――想って、ありあ……
ありあは……目を閉じた。そして……祈った。
『……どうか……どうか、グラントを……』
『グラントを……守って』
――ありあの胸元にある……巫女の石と十字架の石が……何かに呼応するように、輝き出した。




