表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/108

二人の王子~ジェヴェタイア=ヴェルナー視点4

 ――ウィリアム陛下御子息、グラント=アルシュ=グラディノール王子殿下帰還――


 その知らせは、瞬く間にグランディア全土に広がった。そして王宮内では……



*******************************************************


――何年も前に行方不明になっていた、グラント王子だと!?


――本物なのか!? 


――しかし、あの容姿に銀の瞳。本人には違いあるまい。


――また、あのヴェルナーの仕業か。陛下に取り入りおって……


――使用人としてお育ちになられたとか。そのような者が、この大国グランディアの王子に、だと!!


――我がグランディアには、すでにリカルド王子がおられるではないか! 今更グラント王子など……


――王太子にはどなたがなられるのか。我々は……


――アスタリア妃殿下が黙ってはおられまい。グラント王子を推すことは、妃殿下の御不興を買う事になるぞ。


――……


*******************************************************



 ……貴族達の反応は、予想通り、というところだった。グラント王子に好意的な意見など、ありはしない。

私は荘厳な雰囲気の中、執り行われている戴冠式を見守りながら、今後の事を考えていた。


 ――王子はまだ、陛下へのお目通りが叶っていない。まずは、戴冠式と婚姻式を終わらせ、ウィリアム陛下が正式な王となり……巫女姫ファーニア様が正妃となられてからの方がよい、との判断からだ。

(陛下と正妃のお言葉であれば……貴族共の反対も抑え込めるはず……)

 ……私の脳裏に過ぎった、青い瞳。私は戴冠式の最前列で列席している、アスタリア妃殿下を見た。


 銀の髪を高めに結い上げ、白と金のドレスを着た、さながら女神のような容姿。賢妃と名高く、リチャード元王太子殿下への献身的な看護も知らぬ者はいない。加えて、ご子息のリカルド王子は、王太子としての教育を受けられていたこともあり、剣の腕も優秀、知性的で穏やかな御方だ。

(王太子には、リカルド王子を、との意見が多いだろう……)

 私は、グラント王子の真っ直ぐな瞳を思い出していた。王子として御育ちでないにも関わらず……グランディアの王子として恥ずかしくない、強い意志を秘めた聡明な御方だ。

王宮で御育ちになられていたのであれば……あの御方を王太子にすることに、誰も反対などしなかっただろう。私は知らず知らずのうちに、拳を握りしめていた。


 ――最期まで、グラント王子を案じておられたリデア様。グラント様が王子として生きる事は……あの御方(リデア様)の意志ではないのかもしれない。

(それでも……私は……)

 グラント様が、王座につくところを、見たい。我が剣を捧げたウィリアム陛下の、血を分けた唯一人のご子息。王としての資質は十二分にある。必ずや、あの御方は素晴らしい王になられるはずだ。

 私は……頭上に冠をいただく陛下のお姿を目に焼きつけながら、決意を新たにした。


*******************************************************


『……グラントが帰還した、とな?』


『はい……そのようでございます』


『本物か?』


『あの容姿……恐れながら、リカルド様に瓜二つ、でございます。疑いをかけている貴族共も、姿を見れば……』


『……』


『……いかが致しましょう』


『今は……あのヴェルナーの事、グラントの周りの警護を固めておるはず。陛下の戴冠式に、騒ぎを起こす事はできぬ』


『……では』


『……機会、を待つ。隙は……いくらでもあろう。あやつらから目を離すでない』


『……仰せのままに』



 暗闇に響く……抑揚のない声。


『あの女――死してもなお、我の邪魔をするのか』

 

『許さぬ……許さぬぞ』


『グランディアの王に相応しいのは、誰なのか……あの女の息子にも、わからせてやろうぞ』


 ――闇の中に、声はかき消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ