表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/108

シルヴェスタ城~二人の王子2

『……お初にお目にかかります、セレスタインの姫君。我がグランディアまで、お連れ致します』


 ――そう言って、私の手を取ったその御方は……大好きだった物語に出てくるような、夢の騎士、そのものだった。


***********************************************************


(済まない……?)

 ありあは、呆然と生首(リチャード公)を見た。どうして、この方が謝ってるの……?

『……全て……わ、たしの……』

「あの……?」

 苦悩に満ちた青い瞳が……ありあの漆黒の瞳を見た。

『……グラント……は……』

「……グラントもシルヴェスタ城(ここ)にいます。今……」

 ――リカルドさんと戦ってる。ありあは胸の前で両手を組んだ。

(どうか……二人とも、無事で……いて……)

『……助けて……ほしい……』

 途切れ途切れに聞こえる、絞り出すような……声。


『……グラントを……リカルドを……アスタリア……を……』


「……え……」

『……わたし……が……言えた……義理、では……ないが……』

 何だか苦しそう。ありあは心配になって、ガラスの筒に両手を置き、リチャード公を見上げた。

「大丈夫ですか?」

『……お……前は……』

 青い瞳が……揺れた。

『優し……い……子、だった……な……』

(私の事も……知ってる……?)


 ……暫く沈黙が続いた後……再び生首(リチャード公)が、語り出した。


『……わ……ウィリ……アム……王子は……毒……を盛ったり……は、して……いな……い……』

「!?」

 ありあは目を見張った。

「やっぱり、とうさまじゃ、なかったんですね!? とうさまが、そんな事するはずないって……」

『……なぜ……』

 苦しそうな声が続く。

『そう……思え……る。お前の母、を……手にかけ……お前……も、殺そう……とした……男……を……』

 ありあは、青い瞳を真っ直ぐに見た。

「……とうさまは……闇の眷属に……負けてしまった、けれど……かあさまを……愛してくれた、方です」

『……』

「かあさまがいつも……言ってました。とうさまに助けてもらったって……一番心細い時に、手を差し伸べてくれた人だって……」

『……』

 ありあは少し俯いて唇を噛み……また顔を上げた。

「とうさまは……私が自分の子じゃないって言ってたけれど……私のとうさまは、とうさまだけ、です」

『……っ……』

 リチャード公の顔が……ぐしゃぐしゃに歪んだ。何かが……外れたかのように、また涙が……青い瞳から溢れだした。

「ご、ごめんなさい、何か気に触る事……」

 慌てて謝るありあに、掠れ声が聞こえた。

『……手が……』

「……手?」

『……こんな……姿に……なる、前に……自由に……なる、手がある……うちに……』


『お前を……』


 リチャード公の言葉を聞いたありあは……呆然と、その場に立ちつくした。


***********************************************************


 鋭い金属音が響く。荒々しい呼吸も。踏み込む足音も。


 グラントとリカルドは、互いに一歩も引かぬまま、膠着状態が続いていた。


「……母もアーリャ様をいたく気に入っていましてね」

 ぴくり、とグラントの眉が動いた。

「どうやら、私の妃に、と目論んでいたようです」

 グラントの表情が消えた。

「……そんなことだろうとは、思った」

 ふふふ……っと、リカルドの笑い声が響いた。

「本当に……アーリャ様が大切なのですね、あなたは……」

 油断なく剣を構えるグラントに、リカルドは微笑みながら言った。

「あなたのそんな顔が見られるとはね。なかなか愉快だ……」

「……お前はどうなのだ? リカルド」

 グラントの問い掛けに、リカルドが黙った。

「……シャルロッテは……お前にとって、只の道具だったのか? それとも……」

「……彼女が王妃にもなれず……貴族の正室にもなれる身分ではないことぐらい、お判りでしょう」

「……」

 リカルドがグラントを見た瞳には、何か、の影が映っていた。

「……我々は似た者同士でした。それだけの関係です」

「……お前の、子は?」

 リカルドの表情は……変わらなかった。

「まあ、陛下の子……と言っても、あなたを騙す事はできないと思っていましたが……」


「……アーリャ様がどう思うのかを知りたかった、ということもありましたね」

「……」


 ふっと諦めに似た笑いが、リカルドの口元に浮かんだ。

「……子どもを大事にするよう、取り計られたそうですね。何一つ、シャルロッテを責めなかった、と」

「……ありあは、子を孕んだ女性に嫌がらせなどしない。王宮から追放するな、と俺に言った」

「……その想いに……シャルロッテが根負けした、のでしたね……あれほど、『光の巫女』を憎んでいたのに」

「……リカルド」

 グラントが言葉を継いだ。

「俺には……お前が王位を望んでいるようには見えない。望んでいるのは……アスタリア妃の方か」

 リカルドがグラントの瞳を見据えた。青い瞳には……躊躇いの色はなかった。

「……だとしたら、どうだと? 私のする事は、何一つ変わりませんよ」


 ――一拍置いた後……リカルドの青い瞳が、銀の瞳を真っ直ぐに射抜いた。


「……私があなたを憎んでいる事も。何一つ、変わる事はありません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ