グランディア城~王妃の間その2
「う……」
……ん?
ありあはゆっくりと目を覚ました。まだ暗い……
(誰か……の声……?)
「う、う……」
蝋燭の光にうっすらと輝る金の髪。間近にグラントの顔、があった。
(ええええええっ!?)
向かい合って寝てるっ!? 目がぱちっと開いた。思わず起き上って、自分の左側にいたグラントを見下ろした。
「……え!?」
グラントの顔が……苦しそう……?
こちらを向いて寝ているグラントの口から、うめき声が漏れた。
「グラント?」
……いつかと同じ。あの巫女の塔での……
ありあはグラントのだらりとした左腕を見た。袖口を上にあげる。
「これ……!」
あの時、消えたはずなのに!? また黒い蔦のようなあざが、左腕に浮かびあがっていた。
(なくなるわけじゃないの!?)
『……一月後に聖水が必要になる』
定期的に聖水を浴びないとだめなんだ……まだ一月経ってないのに……。
グラントの左手を両手で握る。
(なに……これ。冷たい……)
手首から肘までを両手でさすった。血行が少しでも良くなったら……。
「……」
グラントのうめき声が少しずつ小さくなった。どす黒く、冷たかった腕に、温かみが戻ってくる。ありあがさすったところから、次第に文様が薄くなっていった。
(よかった……少しは楽になったのかなあ……)
グラントの頬に貼り付いていた髪を、そっと元に戻した。顔色も良くなったみたい……。
ぐい
「え?」
いきなり右手首を大きな左手、が掴んだ。ひっぱられて、仰向けになったグラントの身体の上、に重なった。
(っ……!!)
顔が熱くなる。グラントの右手がありあの背中にまわされた。ぎゅっと抱き締められて、身動きできない。
グラントのローブがはだけて、薄い寝巻が直接ありあの頬に触れた。大きな胸に押し付けられた左耳に、グラントの心臓の音が聞こえる。
ふう、と大きな溜息をグラントがついた。ありあは顔を上げ、グラントの顔を見た。寝てる。
(ど、どうしよう……)
心臓がどきどきしてる。グラントの心臓は……ゆっくり、なのに。
(お、重たくないの!? 上に乗ってるのに!?)
本当、どうしよう……ありあはしばらく固まったまま、だった。
温かい……身体。規則正しい、心臓の音。ありあは少しずつ身体の力を抜いた。
ふう、と溜息をつき、ありあは目を瞑った。グラントの手が緩んだら……離れればいいよね……。
――そのまま、ありあはいつの間にか、ゆらゆらと夢の中を漂っていた。




