赤いジュークボックス
暗い日曜日のレコードを聴いた人が自殺すると言う話がありましたね。
「町は夏は涼しいが、冬は無茶苦茶寒いな」
「ああ、そうだな。それでもここは俺たちの生まれ育った町だ」
「違いない」
異国のある町。二人の男性が仲良く雑談をしながら道を歩いていると、
「何だアレ?」
道の先にはジュークボックスがあった、真っ赤なジュークボックスが置かれていたのだ。
「何でこんなところにジュークボックスが?」
二人は赤いジュークボックスに近付き、品定め。
「こいつを売っちまおう」
「いいね、高く売れたらサーモンを肴にビールで一杯やろうぜ」
二人は赤いジュークボックスを持ち上げようと掴んだ途端、反射的に手を引いた。
「な、何だコイツ、生温かいぞ」
「まるで生き物みたいじゃないか」
二人が気味悪がっていると、何の前触れもなく赤いジュークボックスから音楽が流れ出す。それも聞いたことのない、不気味な音楽が。音楽は町全体に鳴り響く。
たらりと鼻血が垂れ、二人の目が真っ赤に血走る。
「ぎゅうえああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
「うごえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
奇声を発し、二人は殴り合う。お互いの命を考えない程に激しく。これは喧嘩ではなく、殺し合い。
二人だけではない、不気味な音楽を聴いた人たちが全員が目が血走り、殺し合う。元々銃規制の緩い地域だったこともあり、あちらこちらで銃声が飛び交う。
音楽が鳴りやんだ時、そこには誰一人生き残ってはおらず、全員死んでいた。
いつの間にか、赤いジュークボックスの姿は消えていた……。
世界各地で赤いジュークボックスが現れ、流れる音楽を聴いた人たちは凶暴化して殺し合い、屍の山を築いていく。
いつどこで赤いジュークボックスが現れるのか解らない、それはいつどこで現れてもおかしくはないと言うこと。
日本の某観光地、飛び交う各国の言語。日本人以外にもいろんな国の観光客が楽しそうに往来している。
突然、赤いジュークボックスが現れ不気味な音楽を鳴り響かせた。
不気味な音楽を聴いたいろんな国の観光客たちが鼻血を流し、目を血走らせる。
「あぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ」
「いぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ」
観光客たちが凶暴化、暴れ出し殴り合いを始める。
いろんな国の観光客の誰も彼もが殺し合う中、
「一体、何なんだ?」
「SNSで言っていた赤いジュークボックスはフェイクニュースじゃなかったのか?」
日本人は不気味な音楽を聴いても凶暴化することなく、奇怪な状況に戸惑っていた。
大柄な外国から来た観光客の一人が赤いジュークボックスを蹴っ飛ばして倒す。倒れて尚、不気味な音楽を流し続ける。
「――」
「?」
近くにいた日本人は何を喋っているかは解らないが、英語でないことは解る。
会話が通しなくても、日本人の仕草を見て、
「ワタシ、ポリネシア人」
と片言の日本語で話す。話しながらも赤いジュークボックスを蹴っばし続けている。
ポリネシア人の意図が解った。赤いジュークボックスが何なのかは解らくとも、このままにはしておけない。日本人たちも赤いジュークボックスを取り囲んで攻撃を開始。
近くにあった看板を手に取ったり、頑丈な椅子を店から持ち出して赤いジュークボックスを叩きまくる。
「私もやるわよ」
事態に気が付いた地元の主婦が息子の使っている金属バットを手に家から土びだしてきて、赤いジュークボックス攻撃に参加。
ゴルフクラブを手に参加した地元の男性も。
観光に来ていた日本人たちとポリネシア人、地元の人たちも一緒に赤いジュークボックスを攻撃していると、何か液体が流れ出した。
それはオイルのような燃料ではなく――。
「オイ、これ血だぞ」
「このジュークボックス、血を流しやがった」
「――」
何を言っているのか解らないけど、ポリネシア人も同じようなことを言っていることはニュアンスで知れた。
ついに赤いジュークボックスは不気味な音楽を流さなくなり、溶けて跡形もなく消えた。
暴れていた観光客たちは木を失っていた。骨折などの重傷を負った者もいたが死者は出ず。
この日を境に、世界各地に現れていた赤いジュークボックスは現れなくなった。もう被害者は出ることは無い。
ただ赤いジュークボックスが何なのかは解らないまま……。
音を西洋人は機械音や雑音として右脳で認識するのに対し、日本人とポリネシア人は言語として左脳で認識する。
自然の音や虫の鳴き声を声として認識するのは日本人とポリネシア人だけなんだそうです。
赤いジュークボックスの正体は正体は曖昧にしています。




