30. Day1.11:00 R2-1『ボスって凄えんだぜ』
『二回戦第一試合を始めます。1番から16,384番のチームは、闘技場に登壇してください。繰り返します。1番から16,384番の――』
会場にアナウンスが響き渡る。同時にシャフとナイトホーンの端末がピピピと音を発して明滅を始めた。
『よーひ! ヒャフ、行くほー!』
『ボス! 痛い、痛いです! 食い込んでます!! 歯がぁぁ!!』
ナイトホーンはシャフを咥えて闘技場へ飛び込んでいく。
観覧席にはクレイグ、私、サーペントさんが残された。
『あれ、ヘビさんの試合は?』
サーペントさんの【へびのとぐろ堂(回復薬売ります)】は14,002番。順番は来ている筈だが、彼の端末は鳴らなかった。
『ワタシは次の相手の方がどちらも棄権されたようなのです』
サーペントさんはいつもの笑顔でシュルシュルと舌を出し入れすると、尻尾で手持ちの端末を見せる。たしかに【へびのとぐろ堂(回復薬売ります)】の対戦相手にはDefの記載がされており、一足先に彼は三回戦へと駒が進んでいた。
『運が良かったです。どうやら相手はネズミの方とカエルの方だったようですが』
『あっ……』
色々と察した。
サーペントさん、本当に分かっていないのか気付かないフリをしているのか……
『ところでメイちゃん。あの飛竜種の彼とはどのようにして知り合ったのです?』
『え、ナイトホーン?』
『ええ』
サーペントさんはナイトホーンの飛んで行ったアリーナの方角を眺めながら尋ねてくる。
『何というか、腐れ縁と言うか。初めはガルデニアでアイツに襲われて』
『おや、それで無事だったのですか……?』
『いや実際には襲われてなくて、アイツは応援してただけっていうか』
『えぇ……?』
何というか上手く説明できない。何度も何度も明確な敵意を向けて来るのに、実際にはアイツに襲われたことが一度もないし。もはやアイツは一周回って危険な存在とは思えなくなっていた。
『でもヘビさん、随分あいつを気にするんだね?』
『ええ、思い出したのです。彼はかつての人魔戦争の際、何度かお見掛けしていたなと。直接お話したことはありませんでしたし、お名前も存じませんでしたが』
サーペントさんはフードの奥でかすかに表情を綻ばせた。
『あの方は確か当時、現魔王軍の第三軍団長であるアヴェリムと共に先代様直属の隠密の部隊として働かれていた筈です。お強い方ですよ』
『え……』
もしかしてやばいヤツなの?あいつ。
そう思って隣のクレイグに視線を遣ると、ヤツはまるで自分の事のようにどや顔をキメ込んでいた。
『おうよ、ボスって凄えんだぜ? むかし隠密訓練っつって真っ暗な中、気配だけを頼りに模擬戦したことあんだけどよ』
『うん』
『ボスってあのデカさでも全く音を立てねえし、全く気配が分からねえの』
実は、それは私も経験があった。初めてアイツに会ったあの時、気が付いたら真後ろで声を挙げられてビビり散らかしたから。
『そのような方が参加されているとなると、もしかするとこの大会、彼が優勝されるかもしれませんね』
二回戦の相手、相変わらず及び腰になっている小鬼たち。サーペントさんを真似ながら彼らを尻尾で軽く薙ぎ払うナイトホーンの映像を眺めながら、彼はそう締めくくった。
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