26. Day1.9:00 R1-1『ナイトホーン第一試合』
『一回戦第一試合を始めます。1番から8,192番のチームは、闘技場に登壇してください。繰り返します。1番から8,192番の――』
会場にアナウンスが響き渡る。同時にシャフとナイトホーンの端末がピピピと音を発して明滅を始めた。
『ボス! シャフ! 頑張ってください!』
『おー! 任せろ!!』
ナイトホーンは楽しそうに笑いながら、緊張でガチガチになったシャフを咥えて闘技場へ飛び込んでいく。
それを見届けて、観覧席にはクレイグ、私、サーペントさんが残された。
『凄いですね。まさかこの大会にダークワイバーンの方が出場なさるなんて』
誰に向かって言うでもなく、サーペントさんはローブの奥からナイトホーンの飛んで行った方向をじっと眺め、独り言のようにつぶやいた。
『アイツってそんな珍しい魔物なの?』
『ああ、ダークワイバーンの方が珍しいというよりかは……あのような一位種の方ですと、だいたいが既に国軍に所属されていることが多いので』
いつもの営業スマイル。なるほど。大会の参加条件が『魔王軍非所属』であるから、相対的に上位種の魔物ほどあまり出場できないのね。
『んでも、ボスは昔魔王軍にいたらしいぜ? シュオール様の時代』
その話を聞いていたクレイグが横から誇らしげに口を挟む。シュオールとは先代、二代目魔王の名だ。反人派で、人魔戦争を引き起こした張本人。
『そうですか、退役(※退役軍人)の方……』
サーペントさんはそこに何やら思い当たるフシがあったのか、少しだけ俯いて考えたあとに先を続けた。
『失礼ですが、あの方のお名前は?』
『ボスなら、セフィリア・ナイトホーン様っすよ』
『セフィリア』
『ヘビさん、知ってるの?』
『ああ、いえ。存じませんでした。ただ、良い名だなと思いまして。同じですよね。お……初代の魔王様と』
と言うかトークスの名前欄を見た時から思ってたんだけど、アイツが普段名乗っているナイトホーンってのは名前じゃなくて苗字のほうなんだよね。私で言えば『フェリシアです』と自己紹介するようなものだ。なんでそんなに他人行儀なんだろう。
『そうなんっすか? 俺、初代の魔王様って知らないんすよね。ガキの頃魔王様なんていないと思ってた所から、気付いたときにはもうシュオール様になってたし』
『昔すぎて知らなかっただけじゃなくて?』
『んなことねぇと思うけどなあ』
『クレイグって今いくつなん?』
『二十一』
まさかの私より四歳も歳上。人狼の寿命は知らないけれど、私が年下だとバレたら今以上にイキられるだろうから、バレないようにしなきゃと思った。
◆ ◆ ◆
第一回戦・第一試合。
広大なフィールドで八千を超えるチームが同時に試合を行うため、もちろん肉眼でシャフ達の試合を見ることは出来ない。
『この端末で試合を観戦できますよ』
サーペントさんが尻尾の先で器用に端末を操作する。 これは受付の際、ゼッケンと共に全員に配られた端末だ。シャフ達のエントリー番号、【6,103】を打ち込むと、彼らの戦うアリーナの俯瞰映像がホログラムのように映し出された。
シャフ達の初戦の相手は二頭の犬人であった。見たところまだ子供だ。新品でピカピカの装備を身に纏った彼らであったが、試合前の顔合わせの段階で、見るからにナイトホーンにビビり散らかして既に泣きそうになっている。
(うわあ……可哀想)
見るからに大会も初参戦だろうに、最初の相手がいきなりアイツって。こんなのトラウマもんじゃないか。
『それでは第一回戦第一試合……始め!』
アナウンスが流れると、会場がワアッっと熱気に包まれた。
ナイトホーンと相対したコボルドの片割れは破れかぶれで剣を構えて突撃を仕掛けたが、目の前で大きく足踏みをされただけで腰を抜かし、一瞬で戦意を失ってしまった。
『あっちの勝負見てようか』
『はい……』
そのままナイトホーンとコボルドは隣同士になってシャフ達の勝負を見守り始めた。
『うおりゃァーー!!』
『うわあーっ!!』
シャフの巻き起こす突風にコボルドの軽い身体が吹き飛ばされる。
そのままシャフは小ぶりのナイフを風の渦に乗せると、風を操り攻撃を始めた。
『シャフの戦い方ってあまり見たことなかったけど、ああ言う感じなんだね』
『おう。あいつ力よえーからさ、あんまり近寄られたく無ぇんだとよ』
『クレイグならあのシャフとどうやって戦うの?』
『俺ならあいつが風を起こす前に瞬殺』
『…………』
つくづく、クレイグが味方で良かったと思った。
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