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13. きゃぷちゃーショック

『メイ……もしかしてお前があの野郎を倒したのか?』


 しばらく経ち、目を覚ました三馬鹿トリオはぽかんと口を開けて尋ねる。

 別に噓をつく必要もない。私は正直に話した。


『いや、あんたらのボス、なんとかホーン様が』


 その言葉を聞いた途端、ヤツらの顔がとたんにぱっと明るくなる。


『やっぱボスってすげぇ~!』

『なんとかホーンじゃなくてナイトホーン様』

『ボス、わたくしの召喚に応じて下さったのですねぇ!』


 思い思いの言葉で感情を露にする魔物達。アイツの名前ナイトホーンだったっけ。ようやく覚えたよ。

 覚えたと言えば、あの時アイツが気になることを言ってたのを思い出した。去り際のあの一言。


『あのさ。ナイトホーンが言ってたんだけど、ヒって何?』


 アイツはバイトを抜けて、ヒでここに来たとか言っていた。

 あの様子だとどっかのセレス(バーガーショップ)でバイトしてるっぽいんだよねアイツ。鉢合わせたくないし、なんか行きにくくなっちゃったなぁ。


『ヒはヒだろ。まさかそんなんも知らんの? 人間って意外と頭悪いのな』

『今時子供の魔物でも知ってますよ。きゃぷちゃーショックですねぇ』


 戦いの功労者でないと分かった途端、クレイグとシャフは私を小馬鹿にしたように煽り始める。コイツら覚えてろよ。

 あとコウモリ、てめえが言いたいのは()()()()()()じゃなく()()()()()ショックだ。


『なんか、召喚術で召喚される側のこと』


 シードだけが真面目に答えてくれる。

 ああ、やっぱり私が頼れるのはシードだけだよ。


 聞くところによると、魔物を召喚する『召喚術』は近年で一般化されたらしい。

 昔は召喚術と言うと、命の契約を交わした魔物が従者関係を持つ使い魔を一方的に呼びつけるための魔術であった。だが現在『一時契約』という手法が確立されると、永続的であった命の契約自体が不要となり、主従関係や強制力も無しに他者を呼ぶことが可能な謂わば『移動ツール』のようなものに敷居が下がった。そのため上下関係や従者のイメージを持つ『使い魔』という呼称が排斥され、今では『被召喚者』、縮めて『ヒ』が使われるようになったとか。


 だが、良いことを聞いた。

 これって私がユキちゃんのヒになれば、いつでもユキちゃんに会いに行けるってことじゃない? 多忙なユキちゃんが私を呼んでくれるのか、という問題もあるけれど。



  ◆  ◆  ◆


 その後、泉へと戻ってきた私達は無事にフィーネさんに合流した。


『皆さん、お待ちしておりましたよ。森でリフレ……ッシュ、は……』


 傷だらけの三馬鹿や私の姿を確認して、フィーネさんは語尾を弱める。

 何やってたんだこのアホウ共は。絶対にそう思われてる。


『死ぬかと思いました』


『えぇ……、一体何があったのです……』


 あんな事件の起こった後だ。私達はフィーネさんにお願いして、もう少し泉で休ませて貰うことにした。

 突如影の魔物に襲われたこと、クールな人狼が仲間を守るために自ら囮になったこと、魔術のエキスパートのコウモリが敵を撃破したこと、そして世界最強の飛竜に助けられたこと。一連の出来事をフィーネさんに報告した。二馬鹿のせいでだいぶ話が盛られた気がするけど。


『単に人間だから狙われた……? それとも、まさかメアリーさんの素性を知って……? ですが、それをどうやって知り得たのでしょうか……?』


 彼は考え込んでいた。


『これは、なるべく早く魔王城(安全な場所)へ戻った方がよいかもしれませんね』


  ◆  ◆  ◆


 しばらくの間、泉の村で皆は思い思いの時間を過ごしていた。リフレッシュのロスタイムだ。


 クレイグはなんかそこら中を走り回っている。

 シードは日向ぼっこしてる。

 シャフは虫を捕まえてる。

 いや、さっきと同じじゃねえか。


 私はフィーネさんと話をしていた。


『私って、ユキちゃんのヒになれるのですか?』

『はい?』

『私もユキちゃんのヒになりたいかなって』


 私の問いにフィーネさんは少しの間考え込んだが、次に彼から返ってきたのは意外な回答だった。



『申し訳ございません、その「ヒ」とは何でしょうか……』




『『え』』


 クレイグとシャフがハモる。シャフはポロリと虫を落とした。

 あー、なるほどね。完全に理解した。


『おい、そこのクソ犬とクソコウモリ。ちょっと(ツラ)ァ貸せや……』


 お前ら、散々マウント取って来てたよな。今時子供の魔物でも知ってるって? 国のトップが知らねえってことは非公式のスラングじゃねえかよ。


 二馬鹿コンビは冷や汗を垂らしながら静かになっている。私はソイツらの肩をポンと叩くと、木の影に連れ込んだ。


『ああ、被召喚者……』


 そうこうしている間に、シードがフィーネさんに意味を教えていた。




『結論から言うと、難しいと思います』


 私が木の影で『ヤボ用』を済ませて戻ってくると、フィーネさんは言った。


『召喚術とは魔術の一種です。個々の持つ魔力の形、「魔紋」が全て異なることを利用して、対象者の身体の一部などから非召喚者の魔紋を特定し、一時契約を結びます』

『おれたちもちょっと前まで、ボスの爪のカケラを持ってたからね……』

『そのため、魔力を持たない人間の方ではそもそも魔紋を持っておりませんから、一時契約を結べず、被召喚者になりえないのです』


 なるほど、またこれか。人間が紋様魔晶石を使えないのと同じ理由だ。

 だが、私はなんか「選ばれし人間」っぽいから行けるんじゃないかな?

 だって魔晶石使えるし。

 後でユキちゃんかサーペントさんに聞いてみることにしよう。


 ===================

 ☆舞台裏 (以降本編とは関係ありません)


 シャフ『んもーーー何なんですかあの暴力人間!!』


 クレイグ『魔物(俺たち)も人間も、女が凶暴なんは同じよな』

 

 シード『ふつーにおまえらが悪いんじゃないの』


 シャフ『大体、なんでシードだけ許されてる感あるんですか! それも納得いかないんですよ!!』


 クレイグ『この前槍でブッ刺されそうになって逆らえなくなったんじゃね?』


 シャフ『おお! じゃあわたくしもこのナイフでアイツを脅せば……』


 メイ『面白そうな話してんじゃんシャフ。私も混ぜてよ』


 シード『もうおれ向こう行ってるね……』


お読みくださりありがとうございました。

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