鋼の檻と 偽りの愛の終焉
バルト中将の要塞「リヴァイアサン」の内部。神へと覚醒しかけているノアを中心に、空間が激しく歪んでいた。カイとリアは、火花を散らすジェイ・フィフティーンで要塞の防壁を突き破り、中枢へと飛び込む。
そこにいたのは、機械の腕に拘束され、絶望的な表情でノアを見上げるセレスだった。
孤独な観測者
「……どうして。どうしてあんたたちは、いつもそうなのよ」 セレスが力なく笑う。彼女の足元には、バルトによって破棄された一族の記録媒体が転がっていた。
セレスの一族は、代々「神」の完成を待つだけの、文字通り「管理者の部品」として育てられてきた。彼女に許された唯一の自由は、幼い頃に出会ったカイに密かな恋心を抱くことだけ。しかし、一族の掟は「ノアの完成」以外の愛を禁じていた。
「カイ……あのキスは、あんたを絶望させて、私から遠ざけるための嘘だった。そうしないと……私の親族たちが、あんたを殺してしまうから」
セレスの頬を涙が伝う。彼女がカイを突き放し、リアを傷つけたのは、二人をこの呪われた「神の儀式」から守るための、彼女なりの最後で唯一の「悪役」の演じ方だったのだ。
セレスの最期の一撃
「バルト! お前なんかに、私たちの何千年の執念を渡してまるか!」 セレスは、自分の細胞内に埋め込まれていた「非常用自爆コード」を起動させた。彼女自身が、ノアを停止させるための、生身のストッパーだったのだ。
「リア! 今よ! ノアの精神に入り込んで! 私が……この要塞の演算を数秒だけ止める!」
セレスの身体から、まばゆい光が溢れ出す。それは彼女が一生をかけて押し殺してきた、一人の少女としての情熱の輝きだった。
精神世界の邂逅
セレスが作った一瞬の隙を突き、リアはノアの意識の奥底へとダイブした。 そこは、数千年の人類の憎悪と悲しみが渦巻く、漆黒の海。その中心で、幼い子供の姿をしたノアが膝を抱えていた。
「怖い……誰もいない。私は、ただの記録の器なんだ……」
リアはその小さな身体を、力いっぱい抱きしめた。 「いいえ、ノア。あなたは記録なんかじゃない。セレスが命を懸けて守り、カイが必死に手を伸ばし、そして私が出会いたかった……大切な友達よ!」
リアの「真実を映す瞳」が、漆黒の海に光を灯す。ノアの「感情のロック」が完全に砕け散り、彼の中に「自分」という魂が確立された。
鋼鉄の決別
現実世界では、セレスの自爆エネルギーが要塞を内側から破壊し始めていた。 「カイ……最後くらい、格好つけさせてよ。リアを連れて……行きなさい!」
崩れゆく床の向こう、セレスはカイに最高の、そして本当の笑顔を見せた。 「大好きだったよ、カイ」
爆炎がセレスの姿を飲み込んでいく。カイは叫びながら、覚醒したノアを抱えたリアを機体へと引き寄せた。




