鋼の鼓動 嫉妬の炎
不時着した辺境の廃都。そこはかつて、軍が「新たな人間」を生み出すための極秘施設が存在した場所だった。カイ、リア、そして機能不全に陥ったノア、さらに彼らを追ってきた整備士セレスの四人は、一時的な休戦状態にあった。
揺れる四角関係
焚き火を囲む夜、リアはノアの傷ついた人工皮膚を丁寧に手当てしていた。 「……なぜだ。私は君を殺そうとした。修復する合理的理由がない」 無機質な声で問いかけるノアに、リアは微笑む。 「理由なんてないわ。あなたが、一瞬だけ私のことを見てくれた気がしたから」
その様子を遠くから見つめるカイの拳には、力がこもる。 「……チッ。あんな機械野郎、放っておけばいいんだ」 そんなカイの背中に、セレスが寄り添うように声をかけた。 「カイ……あんた、そんな顔するんだね。昔の、戦うことしか知らなかった頃のあんたの方が、私には眩しかったよ」 セレスの瞳には、リアに向けられるものとは違う、切実な熱が宿っていた。
機械化中ボス軍団「鋼鉄の猟犬」の襲撃
静寂を切り裂いたのは、地響きのような金属音だった。 バルト中将が送り込んだ、ノアの「兄弟機」たち。感情を完全に排除し、戦闘能力だけに特化した機械人間たちが、廃都を包囲したのだ。
「ターゲット:欠陥品ノア、および反逆者一同。細胞レベルでの解体を許可する」
リーダー格の機械人間が、腕を巨大な振動ブレードに変形させて突進してくる。その身体能力は、生身の人間を遥かに凌駕していた。
「リア、セレス、下がってろ!」 カイは拳銃と、廃材で作った即席の爆薬で応戦するが、敵の鋼鉄の肉体には傷一つ付かない。 「無駄だ。人間の反射神経では、我々の演算速度には追いつけない」
ノアの覚醒
カイがブレードの餌食になろうとした瞬間、ノアが動いた。 「……エラー。胸の奥の計算が、合わない」 ノアがカイの前に立ち、素手で敵のブレードを受け止めた。火花が散り、ノアの白い肌が裂けて機械の骨格が露出する。
「ノア! ダメよ、無理しないで!」 リアの叫びが響く。その時、ノアの頭脳にある「ロック」が、彼女の涙に反応して完全に吹き飛んだ。
「理解した。私の存在理由は、抹殺ではない。……この温かさを、壊させないことだ!」
ノアの瞳が青から鮮烈な金色へと変わる。彼は超高精度の演算能力を「守るため」に使用し、敵の動きをコンマ数秒単位で先読み。流れるような体術で、三体の機械人間を瞬く間に沈黙させた。
敵であったはずの最強の個体が、今、カイとリアの「盾」となったのだ。
新たな敵の影
しかし、敵はそれだけではなかった。 空を覆い尽くすほどの巨大な影――バルト中将が自ら指揮を執る、移動要塞「リヴァイアサン」が姿を現す。
「ふむ、欠陥品が愛を知ったか。面白い。ならば、その愛ごと焼き尽くしてやろう」
要塞から放たれた、広範囲を制圧する重力弾が廃都を直撃しようとしたその時。 カイはノアの手を、ノアはカイの手を、互いに反目しながらも「生き残るため」に強く握りしめた。




