バッドエンドなんて存在しない
……長きにわたって連載していた物語を完結させた。
いわゆる、バッドエンドだったこともあり、批判が殺到している。
どうして二人を…
なんでこんなひどい結末に…
心は痛まなかったんですか
もう読みません
見て後悔しました
サイテーでした、今後はバッドエンドタグ作品は読みません
バッドエンドが地雷になりました
……バッドエンドでしか、伏線を回収する方法が見つからなかった。
……バッドエンドにしなければ、まとまらない物語だった。
長い、長い物語を完結させるために…、致し方なしにバッドエンドは選ばれたのだ。
だが…しかし。
俺の中では、この物語は続いていたりする。
【おわり】の文字の後で、人知れず…主人公とヒロインはハッピーエンドを迎えるのだ。
【おわり】の文字の後ろで、登場人物たちは悲惨なエピソードを笑い飛ばしているのだ。
何を隠そう、俺はバッドエンドがキライだ。
不幸で終わる物語など、まっぴらごめんなのだ。
バッドエンドが嫌すぎて既成の小説が読めず、自ら執筆を始めたくらいなのだ。
みんな笑って大喜び、ご都合展開大歓迎、敵も味方もわちゃわちゃ慣れあってたまに諍いを起こしつつ丸く収まって大さわぎ…、それが俺の創作の信念だ。
最高潮で盛り上がって、おさまりの良いところで締めはするが…、俺が執筆したすべての物語にはコメディムードがデフォルトの日常が用意されている。
作者に罵詈雑言を浴びせた人々もビックリの、超ウルトラハッピーエンドが…ちゃんと存在しているのだ。
物語というのは…いろいろと考えた上で慎重に発表しなければ、問題が起きてしまう。
つじつまが合わなければツッコミが入るし、設定をスルーすればダメ出しされるし、階級のミスや地球上の物質について誤った説明なんてしようもんなら作家として致命傷を負ってしまう事もある。
だからこそ、物語をバッドエンドの状態でまとめるという作業が必要になるのだ。
完結したあと、自由奔放自由気まま自由自在に改変して、心の奥底から物語を堪能するのが…たまらない。
自分ひとりが納得する、なんでもありのご都合主義展開は…作者だけが楽しめる、極上の物語なのだ。
辛辣な感想に憤慨してプリプリするヒロイン、斜め上の持論でツッコミにかかるライバル、真面目な意見を茶化すヒーロー、とにかくエロにすり替える真面目キャラに知的キャラの地球規模で凍り付くアメリカンジョーク…、 た ま ら な い 。
これだから、創作は…やめられない。
次の作品は、もっと…ぐふふ。
いやいや、まだまだしばらくは悪ノリを楽しんで……。
俺は、ニヤニヤしながら…キビシイご意見に対面し。
わざとらしく悲壮感を背負いつつ、真面目そのものの謝罪文を打ち込むのだった。