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第5話 最強の英雄たち


「……えっと、つまり俺のジョブが霊媒師(シャーマン)だから、英霊ともお話ができるってことですか?」


 ロクサスはヒミコと名乗った和服を着崩した女性の霊体に尋ねる。


〈そうじゃ〉


「じゃあ、やっぱり幽霊じゃん」


〈英霊じゃ〉


「いや、ゆう――」


〈英霊じゃ〉


 なぜかそこは譲ろうとしないヒミコにロクサスは睨まれる。

 一緒にされたくはない妙なプライドがあるのだろうか。


 しかし、すぐにヒミコは諦めるようにため息を吐いた。


〈はぁ、やめたやめた。自分の子孫と小競り合いをしても勝てる気がせん〉


 豊満な胸を持ち上げるように腕を組み、ヒミコは気になる発言をする。


「えっ、俺って貴方の子孫なの?」


「えぇっ!? ロクサス様のご先祖様!? お、お世話させていただいております! ミーナ=マーリンです! ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします!」


 ロクサスの言葉を聞いて、ミーナは明々後日(しあさって)の方角に頭を下げる。

 少なくともロクサスのお世話を()()()()という自己認識らしい。


〈そうじゃ、だから正直お前が可愛くてたまらん。どんだけ言動が憎たらしくてもな〉


「そんな可愛い子孫が今、野垂れ死にしそうなんですが」


〈ワシからはどうすることもできんな〉


「ありがとうございました、役立たずのご先祖様。どのお墓に住まわれているのですか? そこの掃除は少し手を抜きますので」


〈残念ながら、お主が一番最初にピカピカに磨いてくれた墓じゃな。おかげで快適じゃ〉


 先祖だと言われて、ロクサスは今一度ヒミコの顔をじっと見た。

 確かに自分と顔が似ている……ような気がする。

 しかし、女性耐性のないロクサスは恥ずかしくなってすぐに視線を逸らしてしまう。


「くそっ、こんな美少女に成長できるなら俺も女に生まれてくれば良かった!」


「ロクサス様のお顔も素敵ですよ! 可愛らしくて!」


「この女々しい顔立ちのせいで『男らしくない』って馬鹿にされて引きこもりになったんだよなぁ……」


〈我が子孫ながら、陰気でメンタルが弱いのぉ〉


 口元に袖を当ててクククと笑うヒミコを無視してロクサスは再び腰をおろして墓を拭き始めた。


 これ以上話しても、恥を晒すだけだと判断したからだった。

 あと、着物がはだけているせいでどうしても胸に視線がいきそうになってしまう。


「墓石はあと10個くらいか……ミーナ、他の墓も全部拭き切っちゃおう」


「あっ、はい!」


 その後、一生懸命に墓を拭く2人をヒミコは何も言わずに微笑ましそうに眺めていた。

 ロクサスはさっさと終わらせてしまおうと、ミーナと共に熱心に墓の掃除を続けた……。


 ――数時間後、英雄の墓を全て綺麗に拭き終えた。


 ミーナは自分の頭に着けていた花の髪飾りをちぎって、それぞれのお墓に花びらを一枚ずつ置いていく。

 そして、2人で一緒にしゃがんでそれぞれの墓に手を合わせた。


 一通り終えると、ロクサスは立ち上がって踵を返す。


「それじゃ、ご先祖様もここで元気に死んでいてください。ミーナ、行こうか」


「ロクサス様、もう良いんですか? せっかくのご先祖様とのご対面ですからもう少しゆっくり……」


「あぁ、ミーナ。ご先祖様は残念ながら俺たちを助けてくれないらしい。俺の先祖だけあって役立たずだからな」


〈――おや? ワシからは助けられないと言ったが、お主が《《自分で助かる》》分には別じゃぞ?〉


 何やら含蓄のある言い方にロクサスは足をピタリと止める。


〈お主は霊媒師(シャーマン)、そしてここは古今東西、あらゆる時代の英雄たちの魂が集まる場所じゃ。……ここまで言ってもまだ分からんか?〉


「……まさか」


 ロクサスが振り返ると、


 ――百戦錬磨の覇気を身にまとった英傑たちが墓の前に立っていた。



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