表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

005.始まるキミたちとの共同生活(1)


────

─6月のはじめ…

────


 何だかんだで、香純ちゃんと夢花の母娘が我が家へと、転がり込んで来ることとなり、その日を迎えた。

 とりあえず、2人を出迎えたりする準備をしなければならないので、友之にも手伝って貰おうと考えた。


 ──コンコンッ…


 今、友之の部屋のドアをノックしているが、いつもならすぐに反応があるのだが、今日に限って反応がない。


 ──コンコンコンコンッ…


 「友之ぃ?起きてるかぁ?」


 おかしいな?

 声を掛けても反応がない。


 ──ガチャッ…ガチャッ…


 友之の部屋のドアノブを回すが、中から鍵が掛かっていて開かない。

 仕方ないので、ドアに耳を当ててみる…。


 「(はぁ…はぁ…。香純さんっ…!!香純さんっ…!!)」


 ああ…。

 そういうことか…。

 独りでお楽しみ中だったようだ…。

 まぁ、お年頃だし?

 今日から、歳上で元人妻の香純ちゃんが来るのだ、妄想は無限大に膨らむか。

 はぁ、仕方ない…。

 お出迎えの準備は、私1人ですることにしよう。


 ──ヴヴッ!!


 狙ったかのようなタイミングで私のスマホが振動した。

 誰だろうか…?

 最近、香純ちゃんにインスカのアカウントを教えた。

 教えたというか、遠回しに例の件をチラつかせて脅されたに近いのだが。

 そのせいで、夢花と香純ちゃんと2人からメッセージが、絶え間なく来るようになってしまっていた。


 ──『今から、友梨さんのアパートへ伺います。」

 ──『お母さんが、常連さんから軽トラを借りたようで…持ち出せるものを積んであるみたいです。』


 スマホのロックを解除して、新着メッセージを見ると夢花からだった。

 すぐにインスカを起動すると、彼女からのメッセージを確認した。

 軽トラの荷台は意外と積めるので、侮ってはいけない。

 借りている部屋にはそんなに荷物はないが、あまり置かれると狭くなるので、気が気ではない。


 ──『どれくらい積んであるかな?」


 香純ちゃんが運転して、夢花が助手席だろうと私は勝手に思って、夢花にメッセージを返した。


 ──『私とお母さんの衣類の入った収納チェストくらいです。』

 ──『もうそろそろ、着きます!!』


 返ってきたメッセージを見て、少しホッとした。

 しかし、もう着くのか…。

 やはり2km弱の距離がある、徒歩と車だと早さが違うな。


 ──ガチャッ…


 玄関の扉を開けた私は、アパートの外廊下を歩き始めていた。

 このアパートは木造2階建で部屋数は10部屋あり、私達の住む部屋は2階の一番奥の部屋だった。

 一番奥と一番手前の部屋が2DK、真ん中の部屋が1DK、その両脇の部屋が1Kの間取りになっている。

 だから、住んでいる人達の生活様式は様々だ。

 事前に大家さんには、同居人が2人増えると伝えて承諾を得ている。

 まぁ、大家さんと言っても…中学時代の同級生の実家なので顔パスだったが。


 ──トントントントントントントントン…


 アパートの2階から地上へと降りる為、唯一鉄骨で造られた階段を降りながら、私は周囲を見渡した。

 すると、向こうの方から派手な青色の軽トラが向かって来るのが見えた。

 まさかな…とは思ったが、そのまま階段を降り切った。


 ──キィッ…!!


 アパートの目の前に、先程見かけた派手な青色の軽トラが止まったのだ。

 恐る恐る軽トラの運転席に目をやると、そこには香純ちゃんが座っており、隣の助手席には夢花の姿もあった。


 ──ギッ…


 「運転、お疲れ様?」


 「あ、友梨ちゃんっ!!わざわざ、お出迎えしてくれたのぉ!?」


 ──バタンッ!!


 軽トラの運転席側のドアが開いたので、開口一番で私から香純ちゃんに声を掛けた。

 嬉しそうに車から降りるとドアを閉め、私に駆け寄ってきたのだが、今からお仕事にでも行くような服装だった。


 「まぁ…ね?夢花から、“お母さんが、常連さんから軽トラを借りた”って連絡あったから。荷物あるのかなってね?」


 「あらぁ!?夢花、友梨ちゃんへ連絡…してくれてたのねぇ?ありがとうねぇ?」


 母親とは思えない程、皮肉っぽく夢花に向かって香純ちゃんはそう言った。

 先を越されたという妬み嫉みだろうか。


 「じゃあ、この勢いで荷物運んじゃおっか?」


 ──バタンッ!!


 「はいっ!!」


 私の言葉を聞いて、慌てたように夢花も車から降りてきた。

 夜の蝶のような香純ちゃんとは対照的に、彼女の出で立ちはいつもの中学のジャージ姿だった。


 「引越しにはやっぱり、動きやすいジャージ姿が良いよねぇ?」


 「そうですよねぇ!!私、着てきて正解でしたぁ!!」


 夢花は、わざとらしく香純ちゃんの方を見ながら私に向かってそう答えた。

 全く、この母娘…仲が良いのか悪いのか…。


 ──バタンッ…!!バタンッ…!!バタンッ…!!


 そんなこと考えつつも、私は軽トラの荷台の側あおりと後あおりを下ろした。

 最近、会社で平ボディのトラックへ、災害地への支援物資の積み込みを社員総出で手伝う機会があり、その時にあおりの下ろし方を見ていた。

 なので、今日がぶっつけ本番だったが、軽トラと言うこともあり、意外と簡単に下ろせてしまった。


 「わぁぁっ!!友梨さんすごぉいっ!!」


 「これで、収納チェスト下ろしやすくなったよね?って…どうやって積んだの!?」


 「車、貸してくれた常連さん達がねぇ?手伝ってくれたのぉ!!」


 ああ、そういうやつね…。

 なら…なんでついて来なかったんだろ?


 「下ろすの、手伝いに来てはくれないんだ?」


 思わず、口からポロッと本音が溢れ出てしまった。

 そんなに量はないとはいえ、女性3人だけでは結構しんどいものがある。

 部屋には友之も居るが、独りでお楽しみ中なので邪魔するのは悪い気がする。


 「友梨ちゃんに…ね?悪い虫つくの嫌だったからぁ…。私の方から断ったんだけどぉ…?」


 収納チェストを、夢花と私で軽トラの荷台から下ろしているのを尻目に、香純ちゃんがそう答えたのだ。

 悪い虫って…常連さんに失礼じゃないのか?

 そんなことを思いつつ、収納チェストを地面へと下ろした。

 ああ、下ろす前にその地面の上に段ボールを敷いたので、荷台から下ろしたものの底面が汚れたりする心配はない。


 ──トントントントントントントントン…


 「お、おはようございますっ!!ゆ、ゆ、友梨の弟の友之ですっ!!今日から、よ、よ、宜しくお願いしますっ!!」


 何というタイミングだろうか。

 鉄骨製の階段を友之が足早に降りてくると、香純ちゃんに向かって自己紹介を始めた。

 何事も、第一印象が肝心なのは彼も理解しているようだ。

 これで、荷物の運び手が出来た。

 そうだ。

 弟の友之は12歳なのだが、背が170cm近くある。

 まだまだ成長真っ只中なので、顔は少し下ぶくれで身体も太くはないがぽちゃぽちゃしている。

 亡くなった父親は若い頃、背が180cmを超える醤油顔の美青年だったらしいので、友之は有望株なのだ。

 と言うのも、父親と母親は歳が大きく離れており、親子程の差があった。

 その為、私の知る父親は他所の家で言う、祖父みたいだったので、若い頃を見たことがない。

 生前、母親がそう言っていたので、きっとそうなのだ。


 「わぁ…っ!!キミ、友之くんって…言うんだぁ?すっごぉく、おじさんの若い頃の面影あるぅ…!!きっと、おじさんに似て女泣かせなイケメンになるよぉ?」


 「え?!本当ですか!?お父さん…女泣かせだったんですか?!」


 ん…?!

 女泣かせって、どういう事!?

 それに…香純ちゃん、若い頃の面影って言った?


 「え?!お父さんの若い頃、香純ちゃんがなんで知ってるの!?」


 「だってぇ、うちの両親と昔の写真とか見せ合ってたから…ねぇ?あの頃はぁ、私も小さかったけどさぁ。」


 そんな交流してたとは…。

 仲良かったとは言え、まさかそこまでの間柄だったなんて…。

 両親が亡くなった時は素っ気なかったから、驚きだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ