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第68話 夢再び

 ルーシーはもやもやの中にいる。

 なぜか体が随分と重い。口の中で何かを数回咀嚼する。

 うーん味がしないし筋張っていて正直美味しくない。


 だが自分はこの食べ物が好きなのだろう。さっきから指先でそのナニカをつまんでは口に運ぶ。

 爪が長い。まるでフォークのようだ。それに腕全体が黒いウロコで覆われている。……ということは。


『フハハハ! おい、ハヴォック。今日の生贄はなかなか魔力の質が良いではないか、褒美を取らしてやろう。お前は何を望むのだ? 我に聞かせよ』


 ああ、久しぶりにドラゴンロードの夢を見た。

 ベアトリクスは大人になったら次第にこの夢を見ることはないと言ってたけど、まだまだ自分は子供なのだと思った。


 ふと眼下から自分に声を掛ける人物がいた。


「はは、ありがたき幸せ。このハヴォック。偉大なるロードの為につくし、生涯お仕えすることが望みでございます」


『フン、つまらんな、貴様の命などせいぜい数十年ではないか。矮小な貴様ごときで我にどう仕えるというのだ?』


「おっしゃる通り。ですので偉大なるロード。私はこの人間の寿命の呪縛から解き放たれたいのです。その為に憎悪の君である我がロードより祝福を賜りたいのです!」


 何やら、自分は生前のハヴォックと取引をしているようだ。

 しかし、ニコラス殿下の中に入っていたのが、こんな虫みたいに小さい人間だったとは。


 ……いや、今の自分はドラゴンだ。人間の大きさなんてそんなものだろう。

 今食べているナニカと同じくらい……。だが不思議と平気だった。


 夢の中なのでそれを当然として受け入れ、その行為自体に全く嫌悪感を抱くことはなかったのだ。


 なるほど、ハヴォックはこうして生贄を集めてはルシウスに媚を売っているのだろう。


『そんなに我の祝福がほしいか、ハッハッハ。それはなかなかの強欲よ。……だがまだ足りぬな。

 これではせいぜい命のストックを一つか二つといったところか、まあせいぜい我に尽くすことだな、貴様の働き次第で考えてやらんことも無い』


「ははっ! ではこのハヴォック、今生の人生を全て掛けて貴方様に尽くしたいと思います。では!」


 目の前のハヴォックは直ぐに姿を消した。


 森に一人寝そべるドラゴンロード。

 今日の生贄は少し多かったので気まぐれに一匹開放する。


『おい、おまえ。何か喋ってみろ。我は機嫌がいい、お前の話が面白ければ生かしてやってもいいぞ?』


「ひっ。お、お許しを。私は何も悪いことなどしていません。あのハヴォックに騙されたのです! どうか、命だけは」


『ふん。そんなことはどうでもいい。我は退屈だと言ったのだ。食後に何か面白い話を聞かせよ言っている。……おっと、さすがにそれは無茶振りというものか。

 ところでお前、ハヴォックに騙されたと言っていたな。どうだ? お前、ハヴォックに復讐する気はあるか? お前の奴に対する憎悪しだいで特別に祝福を授けてもよいぞ?』


 その場にへたり込む男性はハヴォックと同じ高級そうな黒いローブを着ていた。彼はやがて意を決したのか立ち上がり返事を返す。


「はい、奴をこの手で殺せるなら何でも致しましょう……」


『良い返事だ。ではお前には少し力をやる。見事ハヴォックを殺したらまた戻ってくるとよい。その暁には特別に我の眷属に迎えてやっても良いぞ?』


 こうしてハヴォックを追いかけるようにその男も姿を消した。


『さて、奴らはどちらが勝つか……。だがどちらが勝ってもまた退屈になってしまうな。

 もっと面白いおもちゃは無いものか。それにしてもエフタル王族どもは自身の派閥闘争に我を上手く利用しているようだな、最初は怯え切っていたが慣れとは実に怠惰なものだ。奴らには憎悪が足りない。

 ……そうだな。今度は王族から生贄を要求するのも面白いかもしれん』


 ドラゴンロードは次の楽しみを見つけたのか満足して眠りについた。


 ――目が覚める。


 久しぶりにドラゴンの夢を見たのか寝覚めが悪い。

 しかし、直ぐに夢の記憶はルーシーの頭から霧散していた。


 昨日は食べ過ぎたのか胃に若干の不快感を覚える。

 さすがに大人の冒険者がお腹いっぱいになる量だ。少し自重せねばと思いながら朝の支度をするルーシーであった。


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