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第48話 喫茶

 首都ベラサグン。

 学生に人気のとある喫茶店にて。


 コーヒーをすするジャンは向かいの魔法道具店からありえない人物が出てくるのを見た。


「ん? 今出てきたのは第七皇子様じゃね?」


 極めて治安の良い首都ベラサグン。

 そして皇室と民との関係が歴代でも最も良好なこの時代において皇子が街に出るのは珍しくない。


 だが、それでも薄暗い古い魔法道具店から出てきたのには少し驚いた。


「ジャン君どこ? あ! ほんとだー。皇子様だー。なんかオーラがあるよねー。ルーシーちゃん達がうらやましいなー」


 ジャンとアンナの目線の方向にオリビア学園の制服を着た金髪の少年と取り巻きたちが数名、魔法道具屋からなにか大きな荷物を運んでいた。


 皇子様に関心のなかったルーシーだったが、二人が興味津々だったのでちらっとそっちに目線を送る。


「へぇー。私、皇子様って初めて見た。ジャン君もアンナちゃんもすっかり帝国の人なんだねぇー」


 ルーシーの関心はすぐに目の前に運ばれてきたスイーツに戻る。


 カルルク名物の生クリームをふんだんに使ったケーキをフォークですくい口に運ぶ。

 甘くてクリーミーで口いっぱいに幸せが広がる。


 これはグプタにはない甘味だった。さすがは広大な牧場があるカルルク帝国の首都だ。


「それ、ほんとに旨いよな、俺も初めて食べたときにはビックリしたぜ。アンナはこれの味を盗むからって毎週通ってるんだぜ?。

 ……って、あれ? おい、ルーシー。皇子様は今年魔法学科に入学したはずだぞ? お前の同級生じゃないか。なんで顔を知らないんだよ」


 ルーシーは、きょとんとしながらソフィアをみる。


「うふふ、ほんとですわ。彼はニコラス・カルルク。この国の皇子様で私達のクラスメートですわ」


「ふーん、そうなんだ。アイザック君にリリアナさんは知ってた?」


「ええ、もちろんですよ。っていうか知らないのはルーシーさんだけかと……」


 アイザックは若干驚いていた。この人は本当に自己紹介で何も聞いていなかったのだと。


 リリアナはフォローをする。フォローしきれないがフォローをしないといけないと思った。

 

「気にしないでね。ルーシーさんはグプタ出身ですから。そう言う事もあるかと。まあ、それでも王子様は丁寧に自己紹介はしてましたから、次に会ったときに知らないっていうのはちょっと失礼な気はしますけど……。

 でも運がいいですね、今からでも顔を憶えてください。ほらあの真ん中にいる金髪の男子が皇子様です」


 リリアナが指差す先の人物にルーシーは注目する。普通の少年だ。皇子様と言えばキラキラ光ってるものだと思っていたが普通すぎて印象が薄い。

 近くで見たらキラキラ光るのだろうかと、失礼な事を考えるルーシーであった。


「ふーん、皇子様ねぇ。確かにクラスにいたかも? まあクラスメートだし、できればお友達になってくれると嬉しいな」


 とりあえず顔は覚えた。まあ何とかなるだろうと、再びルーシーはケーキに向き合うことにした。


「うふふ、ルーシーちゃんったら相変わらずねー。そういえばアイザックさんとリリアナさんは幼馴染なの? お二人とも髪色も一緒だし兄妹みたいねー」


 アンナの質問にアイザックとリリアナは互いに顔を見合わせる。


「うーん、兄妹ではないです。まあ、リリとは遠縁の親戚というか、そんなところですね」


「そうなんだー。二人ともそっくりだからてっきり兄妹かと思っちゃった。ルーシーちゃんにも弟がいるけど、こっちは全然似てないから不思議だよねー」


「そうだな。そういえばレオには一年以上合ってないからな。去年は忙しくて帰れなかったけど、今年の夏季休暇はグプタに帰るし、あいつの成長が楽しみだ」


 兄貴分のジャンとしてはレオンハルトもきっと立派な男になっているとだろうと、腕を組み一人頷く。


「ところで、魔法機械学科ってそんなに忙しんですか?」


 ソフィアはジャンに質問をする。


「おう、魔法学科より取らないといけない単位が多いし、毎週のレポート提出が正直大変だ。それに学費も高い。

 だから俺達は夏季休暇はアルバイトしてたんだ。でも今年は両親から帰ってくるようにって手紙があってな。


 どうやら俺の両親は直ぐに諦めて帰ってくるって思ってたらしくてな。

 俺が一年も帰ってこないもんだから、これはいよいよ本気だなって思ったんだろうぜ。お金の心配はいらないから夏季休暇には帰ってこい。って書いてあったんだよ。


 だから、今ではこうして、だべりながらケーキとか食えるんだ。最初はほんと大変だったぜ。学費だけは払ってくれてたけど、お小遣いなんてなかったからな」


 ジャンは思い出しながら語る。

 なるほどジャンは苦労したのだ、だからすっかり大人のような顔つきなのだとルーシーは思った。


 リリアナはジャンの話を聞き終えるとアイザックを見つめて言った。


「ね? やっぱそうだったでしょ? ザックったらカッコいいからって理由で魔法機械を学ぶっていってたんだから。

 授業料だって高いってご両親は反対してたし。それに私だって反対したよ。ザックは飽きっぽいから。私と同じ魔法学科で良かったでしょ?」


「……まあ、そうだな、俺にはそこまでの情熱はないや。それに魔法学科だって結果的によかった。ソフィアさんやルーシーさんとも同級生になれたしな。リリの言うとおりだった」


 そんな取り留めもない会話をしながら。午後の時間は過ぎていった。



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