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第19話 クルーズ船の旅②

「ルーシーちゃん、どうかな……、似合ってるかな……ドレスなんて生まれて初めて着たよ」


 アンナは生まれて初めてドレスを着た。そしてここは豪華なクルーズ船、しかも一等客室の豪華な部屋で着替えをするという初体験に緊張しっぱなしだった。

 そしていよいよ社交界デビューという、これまた初めての体験に少し不安げにルーシーに尋ねた。


 アンナが着ているドレスは深い青色でボリュームのあるスカートは波を思わせるグプタでは人気のデザインのドレスだ。

 ベアトリクスドレスと言われる定番のドレスはグプタの女性なら誰もが一着は持っているので値段も安いのが揃っている。


「うん、とってもいい感じ。はっきり言えば青色のドレスは私の好みじゃないけど、アンナちゃんにとても似合って、あいつよりも百万倍素敵かな」


「もう、大げさだよ。でも、ありがとー。ルーシーちゃんのドレスも素敵ね」


 ルーシーは真っ黒なドレスを着ている。シンプルで優雅なデザインが大人っぽさを引き立てている。


「うむ、私のイメージカラーは今後は黒でいこうと思ってるのだ」


 着替え終わった二人は客室から外に出る。


 外で待っているのはタキシードを着た男の子が二人、談笑をしながら待っていた。


「遅いぞ! まったく、これだから女の子の着替えは長いんだから」


 そう言うのはジャン。12歳の少年、新調したタキシードは初々しい。


「なにをー! 文句を言う前に言う事があるだろうが! これだから子供は、お父様を少しは見習いないさい!」


 男の子などズボンを穿いて、ジャケットを着てネクタイ締めれば完成だろうが。簡単に言ってくれる。

 と、ルーシーは怒り心頭だ。

 お父様は私が新しい洋服を着たらかならず可愛いと言ってくれたのに。目の前の男は本当にダメだと思った。


「ルーシーちゃんのパパって本当に気が利くよね。カッコいいし優しいし、ちゃんと大人の女性として扱ってくれるから私も大好きー」


「アンナまで……、まあ、そうだよな。クロードさんはかっこいい。俺だって憧れてるんだ。だけど俺だって女性の扱いは長けてるんだぞ! ……こほん、その……アンナは良く似合ってるよ。海の様なドレス、まるで女神様みたいだ。……でもルーシーのそれは、ぷっ、葬式にでも行くのか?」


 たしかに見ようによっては葬式にも着ていける真っ黒なドレスだった。

 アンナを褒めたのは良い。だが葬式とはなんだ。ルーシーの怒りは有頂天に……。無言で震えるルーシー。


 レオンハルトは察する。姉が無言で震えるのは本気で怒っている証だ。


「ね、姉ちゃん……黒は似合うけど……父上は何も言わなかったの? ……あ、そうだ、ちょっと待ってて」


 レオンハルトは自室にもどると真っ赤なリボンのカチューシャを持ってきた。


「こんなこともあろうかと買っておいてよかった。これをつければ葬式っぽさは無くなるんじゃないかな」


 怒ってはいたが、弟があまりにもきびきびと行動をするので言われるがままにリボンのカチューシャを髪に着けるルーシー。


 しかし、手鏡を見て大満足だった。


「かわいい……さっすが我が弟よ。でかしたぞ!」


「かわいいー、なんか絵本に出てくる魔女っ子みたいだねー、私も今度買おっかなー」


 ご満悦のルーシーはすっかり笑顔になっていた。ジャンも反省したのか今度は可愛い可愛いと連呼しだす。さすがに空気は読めるようでレオンハルトはほっと一息ついた。


「これで戦闘準備ばっちりだ。よーし、いざ行かん。決戦のダイニングルームへ!」


「姉ちゃん、大きな声ださないでよ。子供は卒業したんでしょ……」


 4人はそれぞれ、レオンハルトがルーシーを、ジャンがアンナをエスコートする形で。ダイニングルームへ向かった。


 クルーズ船『レスレクシオン号』の一等客専用のダイニングルームは、まるで夢の中にいるような場所だった。

 高い天井にはシャンデリアが輝き、その光がダイヤモンドのようにキラキラと舞い落ちるようだ。

 大きな窓からは深海の青が広がり、透明なガラス越しに外の世界を眺めることができた。

 テーブルは白いリネンクロスで覆われ、シルバーのカトラリーセットが整然と配置されていた。


 一等客たちは美しいドレスやタキシードに身を包み、上品な笑顔を交わしながら食前に配られる泡の立つワインを楽しんでいた。

 ピアノの音楽が静かに流れ、その音色は部屋全体に優雅な響きをもたらしていた。


 ウェイターたちは静かに料理を運び、一皿一皿が芸術品のように美しく盛りつけられていた。

 香り高い香辛料の効いた肉料理や新鮮なシーフードがテーブルに運ばれ、一等客たちは贅沢な味わいを楽しんでいた。


 ダイニングルームの窓からは夕日が沈み、海面にオレンジ色の光を映し出し、一等客たちはこの至福の瞬間を永遠に刻み込みたくなるような風景を楽しんでいた。


「お、おい、お前等、び、びびってんじゃねーぞ……。こ、ここは俺がテーブルマナーってやつを見せてやるぜ」


 カチカチとナイフとフォークとお皿で音楽を奏でるジャン。


「ぶふっ! ジャン君が一番びびってるんじゃん。あはは、まったく。普段通り食べればいいじゃないか」


「でも、姉ちゃん。ちょっと緊張しちゃうよね。グプタのレストランなら顔見知りってのもあるから緊張しないけど、ここまで豪華だと……」


 たしかにとルーシーは思った。さすが一等客専用のダイニングルームだけはある。


 壁には豪華な装飾が施され、金箔が煌めく彫刻が優雅に飾られてる。 

 テーブルもそうだが、いま腰かけている椅子でさえ美しい彫刻が施されている。


 なによりダイニングルームの広さだ。


 一等客だけで200人はいる。

 子供達4人、しかも上流階級というわけでもない。我らは完全にアウェイなのだ。


 だが、偉大なるドラゴンロードのルーシーは豪華なクルーズ船のおもてなしには負けない。

 子供だからお酒は飲めない。だからこそ、いろんな料理を食べて元を取ろうと思ったのだった。


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