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第12話 千年牢獄①

「ふう、水着が少しきついな、やはり太ったのかも……」


 ルーシーはお尻の肉に食い込む水着を引っ張りながら昨日のグルグルを思い出す。

 お父様は平気だと言っていたが、やはり無理をしていたのでは……少し自重しなければと思った。

 

「いや、それは嫌だ。やはりダイエットをしなきゃだ……」


「やめておけ、お主の場合は成長しただけじゃ。別に太っているわけではないぞ? それに成長期の無理なダイエットはやめておくことだ。水着がきついなら新しく買えばよい」


「それもそっか、お小遣いもらったし今から買いに……いや今日は我慢だ、このお金はおもてなしの為……ベアトリクスよ。この金貨を預かってくれ。

 それと、このあと皆で食事するからお主も参加するように、勘違いするなよ。これはお父様のご厚意だ。受け取らないと我がメンツが潰れちゃうんだからね!」


「ほう、クロードが戻ったか。ならば喜んでお招きにあずかるとしようかの」


 ベアトリクスはルーシーから金貨を預かる。


 そしてそのままルーシーの腕をつかむと勢いよく引っ張る。

 ルーシーは仰向けに倒れかけたがベアトリクスのもう片方の腕に抱かれる形でその場に横たわった。


「ひっ! 痛い! な、何をするのだ!」


「いやなに、ちょっと調べることがあっての。ところで呪いのドラゴンロード、ルシウスよ。お主に少し聞きたいことがあるんだがのう……」


 上から覗き込むベアトリクスの顔は笑っていなかった。


 いつもと違う態度のベアトリクスに驚くルーシー。

 少し目に涙をためるが、ここで負けるわけにはいかない。


 堂々としなければ。泣いてしまっては今まで築いてきたキャラが台無しになってしまう。

 ルーシーの声は少し震えていたが、それでもベアトリクスに対して気丈な態度で言い返す。

 

「なんのことだ、私はルーシーだぞ? そいつは別人だ! 昨日の授業で習ったところだから間違いない!」


「それは、これから聞こうじゃないか。私は門外漢ではあるがそれなりに呪いは詳しいのだ」


 ベアトリクスはルーシーの額に手の平をかざして何やら呪文を唱えた。


「極大呪術、『千年牢獄』!」


 次の瞬間。ルーシーは意識を失った。


 目覚めたときには一人で薄暗い部屋の中にいた。

 その部屋は無機質な石の壁に囲まれており。先ほどのビーチとは違い、不気味な沈黙が漂っている。


 一方の面には鉄格子が張り巡らされており。その鉄格子を抜けた先にある扉からは光が漏れ出していた。


 ルーシーでもさすがに気づく。ここは牢獄だと。そしてここに閉じ込めたのは間違いなくベアトリクスだ。


「おのれ、ベアトリクスの奴。ついに本性を現したか」


 しかしなぜ閉じ込めたのか理由は分からない。 


 牢獄には何もない。

 せめてベッドくらいあってもいいのではと、とりあえず腰掛ける為の何かを探すために薄暗い牢獄の隅々を見回す。

 

 ルーシーは一瞬、びくっとした。


 牢獄には自分一人だと思っていたが、同居人がもう一人いたようだ。


 真っ黒いローブを着た何者かが部屋の隅に縮こまりながら立っていた。


 フードを深く被っており横からでは顔はわからなかった。

「あのー、私はルーシーといいます。あなたもベアトリクスに捕まってしまったのですか?」


 そのローブの人物はルーシーに振り返る。


 その顔は骸骨だった。その恐ろしい外見にルーシーは絶句する。

 だが、同時に、どこかで見たような気がした。

 本だろうか、物語の中で闇の魔術師が骸骨を動かすシーンが何度かあったのを読んだ気がした。


 しかし、それも違う。よく思い出せない。


 実際に会った気がした。どこだっけ?

 でも骸骨に? そんなことあるはずない。


 そんな有り得ないはずの既視感と疑問の前に恐怖心はすっかり無くなっていた。  


「骸骨さん。どこかでお会いしましたか? なんかどこかで見たことがあるんですけど、なかなか思い出せなくて……」


 ルーシーは基本的に初対面の人には丁寧な口調でしゃべる。

 なんとなく知り合いかもしれないからといって、いつもの口調でしゃべってもし違ってたらとても恥ずかしいからだ。


「お、おしまいだ。千年牢獄に囚われてしまった。ああ、なんというまぬけよ」


 骸骨は誰に言うわけでもなく、ローブの袖から覗く骨の手で頭を抱えながら声を上げる。

 その声色にルーシーの疑問は一瞬で解消された。


「あ! その声、貴様はハインド君だな。こんなところで何をやっているのだ?」


「む、そういう貴様こそ、ルーシーという生意気な小娘。まだ生きていたか。闇の魔術を受けたはずなのに……。それにいきなりその格好はなんだ! 墓前で服を脱ぐとは恥知らずめ」


「ぐぬぬ、言わせておけば、ビーチで水着を着るのは当たり前ではないか! それにまだ生きているとはどういうことだ!

 我はずっと生きておるぞ、今日もビーチで遊ぼうとしているのになんだ! お前こそ頭おかしいんじゃないか?」 


 だが、自分で言いながらルーシーは思った。ここはビーチではない。

 牢屋で水着姿はさすがにどうかと羞恥心を覚えた。


「たしかに、ハインド君の言う事も一理あるか……。というかここはどこだ?」


「おそらく、ここは『千年牢獄』の中だろう。闇の魔法の一つで、その規模は極大魔法と同等、私は貴様に呪いをかけた直後ベアトリクスに囚われてしまったと思ったのだが……貴様はここがビーチと言ったな。

 ではここはグプタの中ということか? いよいよ分からぬ。私はあの土地に縛られて一歩も動けなかったというのに」


 ハインドも自分がなぜここにいるのか分かっていない。そもそも時系列がずれている。


「ほう、ルシウスを捉えようとしたのだが……これは、どういうことかのう」


 いつの間にやら鉄格子の向こう側にベアトリクスが現れた。


「やはりベアトリクスか。貴様、どういうことだ! この娘はルシウスではない。 こんな幼い少女を『千年牢獄』に閉じ込めるとは見損なったぞ。

 貴様はマシな方だと思っていたが……やはりドラゴンロードなど、所詮人類の敵ということか」


「ふむ、亡霊の分際でよく言う。お主こそルーシーを呪い殺そうとしたではないのか?」 


「だまれ! それとこれとは話が別だ。『千年牢獄』だぞ! こんな非人道的な魔法を平気な顔で子供に掛ける貴様と一緒にするな!」


 さっきから置いてけぼりにされているルーシーであったが。

 一つ思ったことがある。ハインド君、実はいいやつなのでは……。


「まあよい。しかし、分からぬな。ルシウスならば、こんな低級な呪いに囚われるはずはないし……(ふむ、もう一つ試してみるか)

 ルーシーちゃんよ、ここから出たければ、大好きベアトリクス様って大声で言ってみなさい?」


「なんだと? そんなこと言えるかバカ者が!」


「じゃあ、出してあげなーい。じゃあねー」


 ベアトリクスはそのまま階段を上り外につながる扉を開けると牢獄から出ていった。


 再び牢獄は沈黙に包まれる。


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