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第8話 平和と闇

 結論として俺は納得していない。

 清水さんがリアル対象の腐女子(ふじょし)でさらにはちょっとストーカー気質だったと言う事もある。しかし、それはそれでたとえ歪んだ愛情だったとしても、好きな子の好意の対象に俺が入っているのは嬉しい。


 だが、それ以上に問題はマモだ。


 てっきりドキドキワクワクの共同生活がはじまるのかと思いきや、家に着くなり「ご飯出来たら呼びなさい!」と、飯だけは頂くつもりであっさりとスマホの中に戻りやがった。


「はぁ、スパゲッティでも作るか」


 実家にいる時は、母親がツンデレな事もありツンモードの時は基本的に俺が飯を作る事になっていた。そのせいもあり、簡単な物であれば大体の物をつくる事が出来る。


「おい、出来たぞ?」


 返事はない。ただのスマホの様だ。


「マモ、出て来ないなら先に食うぞ?」

「ふあーあ。なに? ご飯?」

「お前、寝てただろ?」

「寝ているわけないじゃない! これでも世界情勢とか世界平和とか色々と考えてたんだから!」


 いやいや、(うそ)にしてもスケールがデカすぎるだろ。それにファンタジー世界の魔人が考える事じゃない。


「何コレ?」

「スパゲッティだよ。食ったこと事ねぇのか?」

「似た様な物はあるけど、【あん❤︎】がかかってないのは初めてね……」

「それあんかけパスタだろ! 何で名古屋名物ばっかりなんだよ。ローカルすぎて魔人がそっちを食べた事があるのにびっくりだわ」


 とはいえ、特に抵抗はない様だ。一口食べては天井を見上げてモグモグと味を確かめている。意外と可愛らしい所があるじゃないかと思っていると、納得した様な顔をした。


「ああ、ケルベロスとおんなじ味だ!」

「マジかよ、ケルベロスを食べた事が有るのも驚きだが、スパゲッティみたいな味するのかよ!」

「そうそう、ケチャップみたいな味なんだよね」

「ちょっと待て、それならわざわざそんな魔獣で例えずケチャップでよくないか? というよりスパゲッティ自体はほぼケチャップの味だからね?」


 この時ばかりは想像する魔獣ではなく、ケルベロスという料理名であって欲しいと願った。


「少し気になったんだが、もしかしてマモ以外にも魔人はいるのか?」

「そりゃいるにはいるよ。その中でも私はSランクの魔人だけどね」

「ほぼトップクラスかよ。まぁ、どんな願いも叶えられるレベルだからそのくらいなのか……」

「まぁ、私の上にはSSR、UR、魔王といるわけなんだけど上位である事には違いないかな?」

「魔王はともかくなんでそんなソシャゲみたいなランクなんだよ」


 とはいえ彼女の上がいるのは確かな様だ。スマホを買った時に他にも【魔法の】と付く道具はいくつかあった。となると他にも手に入れた奴が居る可能性もあると言う事だ。


 だとしたらコイツらの目的は一体なんなのだろうか? マモを見る限りではそんなに害がある様には思えないのだが、手に入れる人によってはどうとでもなる能力には違いない。


「あー、ひつまぶしが食べたい!」

「だから何で名古屋名物なんだよっ!」



♦︎



 次の日、学校は至って普通だった。

 強いて言うなら、カズキは素直ではないが、それほど悪い奴じゃないという事と、俺の清水さんを見る目が変わってしまった事くらいだ。


「俺も手伝えばいいんだろ!」

「手伝うというか、グループ課題なんだけどね」

「ふふふ」


 微笑ましく笑う清水さんが何を想像しているのかは考えない様にする。せめてBLでもスタンダードな内容であってほしいと切に願う。


「言っとくけどな、こういうのは性に合わねーんだよ」

「そのあたりは分かっているさ。とりあえず、参加しているフリだけでもいいよ」

「うんうん。私と長嶺くんでつくるよ?」

「清水さん❤︎」


 見るからに不良のカズキは大人しくしていてくれるだけで充分だ。ただ問題はこの残念な魔人が全くと言っていいほどやる気がない。


「お前も一緒に調べるんだよっ」

「もしかしてそれが【お願い】?」

「んなわけねーだろ。勝手に学生やってんだから学校のルールに従えよ」

「えーっ、ぶぅ」


 よくわからず膨れている。しかし清水さんと二人で進めるのも悪くはない。


「それにしてもサキと随分仲良さそうだよな?」

「俺?」

「そうだよ。お前以外に誰がいるんだよ」


 マモに視線を送るも、机にへばりつきかまぼこの様になっている。


「というかカズキは名前で呼んでいるんだな」

「まぁ、幼馴染だからな。知ってて昨日連れてきたんじゃねーのかよ」

「いや、清水さんは付いてきただけで……」


 彼はそれがストーキング活動の一環だというのは気づいていないのだろうか?


「まぁ、心配性でお人好しだからな」

「心配性ねぇ」


 清水さんは人差し指を唇に当てると小さくウインクした。やはりカズキにはバレてはいないらしい。


「長嶺が付き合いたいなら応援してやるぜ?」

「幼馴染じゃないのかよ?」

「だからだよ。お前なら別に悪い様にはしないだろうし、妹みてぇなもんだしな」

「まぁ、清水さんにその気があれば俺は大歓迎なんだけどね」

「ははっ、ちげぇねえ!」


 カズキには微笑(ほほえ)ましく見えているのかもしれないが、俺には清水さんが(えつ)(ひた)っている様にしか見えなかった。


「せっかくだしよ。学校終わったら四人で遊びにいかねーか? 親睦会って事で!」

「なにそれ楽しそうじゃん!」

「私もいいよ?」

「長嶺は?」

「まぁ、そういう事ならいいと思うけど?」


 一番乗り気ではなさそうな返事をしている清水さんだが、表情は大満足を隠しきれずにいる。なによりマモに一般的な常識を知って貰うにはいい機会だと思った。


 しかし、彼女は魔人。いつかは二人に話す時が来るのだろう。ただ願いを叶え終えたら居なくなるかもしれないのだと知ったらと思うと、なんとも複雑な気持ちになっていた。

お読みいただきありがとうございます!

ひつまぶしが食べたいです。


もしよろしければ評価、ブックマークをして頂けると創作の励みになります!


感想などもございましたらお気軽に書いていただけると嬉しいです★


次回もまたお会い出来る事を楽しみにしています(*ꆤ.̫ꆤ*)

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