第5話 スマホを取り戻せ!
「こりゃあ、結構な願いが必要ですぞ?」
「お前は消費させたいだけだろ!」
「節約して欲しいっていうなら、助けてあげない事もないけど?」
授業が終わり結局収穫は【清水さんに好きな人が居る】と言う事だけだった。正直話やすい環境にはなったものの進展したのかと言うと何も無い。
「やっぱり片思いなのかな?」
「それは無いんじゃない? あの子が好きって言えば大体のオスは落ちると思うけど」
「オスって……まぁ、そうだよなぁ」
「まぁ、私の次くらいに可愛いしね?」
マモ自信満々発言はスルーしておいたが、彼女の言っている事は一理ある。だとしたら清水さんはかなり難しい恋をしている可能性があるのだと思う。
「それはそうと、何で連絡先聞かなかったの?」
「何でって、そんなタイミング無かっただろ」
「いや。あったね、私はスマホの魔人だよ? 課題の事で相談できる様にとか色々あると思うけど?」
そう言われ、俺はハッとした。
「お前、天才か?」
「天才どころか魔人様ですぜダンナ? 何なら今からでも一緒に聞きに言ってやりましょうか?」
「……願いは?」
「一つと言いたい所ですがマケといてやりますぜ」
「よし、頼んだ!」
少し情け無い様なきもするが、この際なりふりは構っていられない。マモが聞いてそのついでにと言う免罪符をゲット出来れば簡単に交換が出来る!
「ちょっと待て、その前にお前スマホ持ってないよな?」
「私自身がスマホだけど?」
「それはそうだが、側からみたら俺のスマホだろ」
「なるほど……それじゃあ、はい」
彼女は遠慮なく手のひらを差し出す。
「二台も持ってねーよ。あ、いやカズキに取られたのがあるか……」
「無ければ願いでも出せるよ?」
「お前のスマホの為になんで願い使わなきゃいけないんだよ!」
「私のためか自分の為かよく考えたまえ!」
「ぐぬぬぅ。無駄に正論なのが腹立つ」
とはいえ、両親や地元の友達なんかのデータも入っている為取り返してはおきたい。なんとなく今のカズキならすんなりと返してくれそうな気がして一度言ってみる事にした。
「何? スマホ? だからあれは悪かったって言っているだろ?」
「やっぱりデータとかもあるしさ……」
しかし、カズキは画面が割れたままのスマホを持っていた。データを移行するのがめんどくさかっただけなのだろうか?
「悪いけど、あれもうねぇから」
「無いってもう売ったとか?」
「とにかくねぇんだよっ!」
「だからどこに?」
「お前、なんか勘違いしてるだろ。同じ班になったってだけで仲良くなった訳じゃねーから。授業以外で関わってくんじゃねーよ」
お前参加してないだろ。と思ったものの、確かに仲良くなる要素は何もなかった。
「清水に住穂が近くに居んだから気をつけろよ」
だが、捨てゼリフの様にそういったカズキの態度が少し引っかかっていた。
「全然ダメだったね?」
「うるさい! でも……」
「それはそうと、スマホないと聞きにいけないよ?」
「もう願いを使うしかないのか?」
「私はどちらでも構わないけど、ただあの子の問題は先に解決した方がいいかもね」
確かにこのままでいい訳はない。最悪売られていたのならそれはそれで諦めが付く。となると、俺がするべき事は。
「よし、決めた」
「ん? スマホ出す事にしたの?」
「いや、願いで俺の持っていた【スマホを探してもらう】。どこにあるのかだけでも知っておきたい」
「そんなに元カノがいいの?」
「元カノて、確かにマモからすればそうかもしれないけど……」
「うそうそ、今回は流石に魔法使わないとだからちょっと待ってね」
そう言うと、彼女の指が光り始める。少しずつ指先に集まっていくとその指で……
「痛っ! いきなり目を突くとか頭おかしいだろ!」
「はいっ出来た。魔眼……だったらカッコいいのだけど魔法で矢印を貼っただけだよ」
潰された訳ではなく、指を入れられただけだった。しかしそれでもかなりの痛みがあり、目潰しが有効と証明されると同時に目を開く事ができる様になってきた。
「うわっ、何これ? 視界の中に赤い矢印が!」
「その矢印の先に、タカシのスマホがあるのよ。心配しなくても取り返したらきえるわよ」
「それはそうと、もうちょっと他に方法は無かったのかよ……」
正直凄く邪魔だ。一瞬見直したのだが、相変わらずのポンコツな魔人に先が思いやられる。
「まぁでも無いよりはいい、とりあえずスマホ場所は分かる訳か……」
「そう、誰かが持っていても売られていてもその場所まで行けばスマホはあるわ」
とりあえず校舎内にあると分かった俺は、休み時間に探したところで取り返すのが難しいと判断し、一旦放課後まで待ってみる事にした。
「一つ気になっていたのだけど、取り返すってどうするつもり?」
「なるべくは交渉だな」
「宮田くんがあげてたとしたら、すんなり返すとは思えないのだけど?」
「その時は実力行使するさ!」
「へぇ、タカシって喧嘩強かったんた?」
「弱いよ? 願い使うに決まってるだろ?」
「清々しいまでのクズじゃん!!」
卑怯なのは分かっている。しかし、スマホを奪うような悪党にはこれくらいしても悪くは無いだろうと正当防衛を掲げた。
教室の生徒がほとんどいなくなると作戦を開始する。矢印が極端に動く様なら合わせて出るつもりでいたが校舎内から出る様子はない。
「ではいきましょうか!」
「はい黄門様!」
「お前が助さんだとして格さんはいないからな!」
「しかーし、お銀はいるみたいよ?」
そう言われ、周りを見渡すと人影がススッっと隠れて行くのが分かる。
「あの……清水さん、何やっているの?」
「ちょっと気になっちゃって」
「まぁ、隠れているなら」
と言うわけで、何故か清水さんまでも付いてきてしまう事になる。取り返した後でマモに渡したら彼女に変な誤解をされないかと言う心配だけがのこる。
そんな事を考えていたせいか、矢印が校舎裏を指している事に気づかずそのまま向かっていた。すると何故かカズキの声が聞こえてくる。
「スマホ返してもらえないっすか?」
……もしかしてアイツ。その意外な言葉に、俺はつい足を止めてしまっていた。
お読みいただきありがとうございます!
そうです、タカシも色々と残念な奴なんです!
主人公でいいのだろうか……。
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次回もまたお会い出来る事を楽しみにしています(*ꆤ.̫ꆤ*)