第3話 友達を作りたい
「あ、あのー申し訳ないとは思ってますよ?」
「本っ当信じらんない!」
「もしかして怒ってます?」
「当たり前でしょ? 分かってる? これは契約なの、あくまで魔人としてのお仕事なのっ!」
出てきた時の丁寧な感じとは打って変わり、本心がむき出しになっている様だ。
「お仕事ってもしかして……」
「ノルマがあるの! それを訳の分からない願いを聞いたせいでブラック企業もびっくりの低賃金長時間労働が始まってしまったの!!」
「ご、ごめんなさい。そんな営業職みたいな仕組みだとは思ってなかったんだ」
明らかにご立腹の様子だ。俺としてもそんな背景が有るとは知らなかったが、ズルい事をしたというのは充分に理解している。
「もう魔法陣の力は使えないし私の力にはキャパがあるの。100個も増やしちゃったらあんまり大きな願いは叶えられないから。それと、もう二度と同じ様な願いは受けないからそれだけは理解しなさい」
「なんかスミマセン……」
「やっちゃった事だからもう別にいいわよ。なるべく早く使い切ってくれればね」
この感じになんとなく既視感が湧いた。だが、100個に増やしてもらえたものの、どの程度出来るのか、どのくらい慎重に使わなければいけないかが掴めずにいた。
「とりあえず一つ目言いなさいよ。100個もあるんだから悩む必要はないでしょ?」
「じゃ、じゃあ……学校の友達が欲しい」
「なにそれ、アンタ友達いないの? まあいいわ、とりあえず叶えてあげるから明日の学校を楽しみにしてなさい」
そういうと彼女はスマートフォンの中に戻って行く。すんなりと叶えると言った事から、キャパは有ると言っていたもののこれくらいなら余裕があるのだろう。しかし、転校したばかりの俺にとって大きな問題でもあるため一体誰と友達になれるのかが楽しみで仕方なく俺はすぐに家に帰って翌日の準備をした。
あれ? そういえば何か忘れている様な……まぁ、いいか。
♦︎
次の日、学校に付くとカズキをみて警察に言いに行こうとしていた事を思い出す。正直なところ今となってはどうでもいいのだが、また何かして来ないとも限らない。
「よう、学校に来たんだな?」
「なんだよ?」
「昨日は悪かったな。正直やり過ぎたっていうかスマホ返すよ」
態度の変化が気持ち悪い。もしかしてこれが魔人の力なのだろうか。だとしたら残念な事に友達になるのはコイツという事になる。
「いや、いいよもう」
「えっ、いいのか?」
「もう代わりのスマホ買っちゃったし」
「なんかそれヤバそうなスマホだな……」
「有る意味ヤバいけど。まぁ、次似た様な事があったら本気で警察に行くから」
「それはちょっと……」
「今回は謝ってきたからそこまではしない。それになんかお前、事情ありそうだしな」
彼の事情は知った事では無い。だがスマホを取られた事がきっかけで、魔法のスマホを手に入れる事が出来たと考えると許す位はしてもいいと思えるくらいには寛大になっていた。
だが、授業が始まるタイミングで願いで出来る友達というのがカズキでは無かったという事がすぐに分かった。先生と共に、転校生らしき制服の女の子が入って来る。髪は銀髪で目は緑色という既視感しか無い女の子。その姿に俺の時とは比にもならない位にクラス中がざわつき始めた。
「えっ、海外の子?」
「美しすぎるんですけど……」
「マジかよ、惚れた!」
クラスメイトの心の声が漏れまくっているのが分かる。突然の登場に俺も驚きはしたものの、ドヤ顔の彼女の顔をみてそういう事かと納得していた。
「えー、今日から同じクラスになる住穂マモだ」
「ちょっとまて、名前そのままじゃねーか!」
「なんだ、長嶺。知り合いなのか?」
「ま、まぁ……」
「タカシ、こっちでも宜しくね?」
それにしてもなりふり構わずガンガン友達感を出してくる。しかし、その様子にクラスメイトは驚きが隠せない様だ。無理もない、ただの田舎者に芸能人にもいない様な美少女の知人がいたというのは衝撃でしかないだろう。
転校生が来るのだと足した机だからなのかも知れないが、案の定席は隣になる。しかし同じクラスに入れている時点で奴の何かしらの能力が働いているのだろうと思っていた。
(いや、友達ってお前かよ!)
(文句あるわけ? これが一番手っ取り早いのよ)
彼女の言う通り、【本人が友達になる】というのが確実に叶えられる方法で有る事は間違いない。しかしながら、明らかに普通の人では無い見た目と、名前位はもう少し工夫があってもいいだろうと思った。
休み時間になると、奴の周りに人だかりが出来ている。しかし彼女だけでは無く友達という事で俺にも話しかけて来る。
「二人はなんの知り合いなんだ?」
「えー? 地元が同じだけだよ?」
そう言うと彼女はアイコンタクトを送る。あくまで地元の友人で押し通したい様だ。
「ソウ、地元同ジ」
「なんで片言なわけ?」
「もしかして追いかけてきたの? 実は付き合っているとか?」
「それは無いかな。普通に近くに引っ越す事になったから同じ学校にしただけだよ?」
彼女を見ているとチヤホヤされるのも大変なのだと感じる。俺はその場にいるのが面倒になり、トイレに行く事にする。すると後ろから聞き覚えのある可愛らしい女の子の声がした。
「長嶺くんちょっと待って!」
「あっ❤︎ 清水さん、どうかしたの?」
「怪我はもう大丈夫?」
「うん、そこまでダメージはなかったみたい」
「良かった。でも、警察に行くの止めたんだね」
「ちょっと色々あってね。あと、カズキも謝ってきたから今回だけは許しておこうかなと」
「うん。長嶺くんが納得してるなら、それがいいと思う」
清水さんは優しい笑顔でそう言った。やっぱり彼女は優しくて凄くいい子なのだと思う。もちろん心配してくれていたのだろうけど、彼女はカズキの事も心配だったのだろうと思った。
「なんか、心配かけてごめんね」
「気にしないで。あと、住穂さんが気疲れしてるかも知れないから気にかけてあげてね。って、長嶺くんの方が仲いいから気にする必要ないか……」
「でも、清水さんもすぐ仲良くなれると思うよ」
「うん。ありがと」
彼女の気遣いに心が洗われる。きっと昨日も清水さんが声をかけてくれたのは、偶然じゃ無かったのだと思った。こんな子が彼女になったらいいのに……俺はその事を一度あの魔人に話してみようかと考えていた。
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