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第23話 お願い❤︎戦争

 そうだ、彼女は今契約者じゃない。と言う事はつまりは箱が開けられる状態だったという事だ。


「オルゴールが鳴ってる……」


 静まり返った部屋で、綺麗(きれい)なメロディに(まぎ)れ清水さんがそうつぶやいたのが分かる。だが箱は開いてしまっている……。


「箱が開いている」

「あ、ああああ……」


 少し驚いた様子のカズキとは違い、ロミはまるでこの世の終わりの様な顔をしている。マモを呼んだほうがいいのか? だが、今の所音が鳴っている事以外は特に変わった様子はない。


 俺はゆっくりと身を隠し、首輪に触れマモを呼ぼうとすると、カズキの動揺する声が聞こえた。


「何だよあれ……」


 その視線の先にある窓の外は、まだ夕方前だと言うのに夜中の様に暗くなっている。まさか外なのか?


「えっ……何? 何が起こっているの?」

「外に出るぞ!」

「で、でも……」

「ロミも来い、どうにか出来るとしたらお前だけしかいない」

「む、無理だよ……」


 カズキ達が出るのに合わせ、俺も外に出る。咄嗟に物陰に隠れ首輪に触れた。


「マモ……箱が開いた。直ぐに来てくれ」


 その瞬間、俺は元の姿に戻り魔法陣と共にマモが現れた。今回は魔道着も着て、見た事の無い杖も持っていた。


「何であけちゃったのよ……」

「仕方ないだろ。まさか清水さんが契約破棄するとは思ってなかったんだから」

「契約破棄って、ロミとの契約を破棄したの?」

「ああ、今はカズキがロミと契約している」

「まぁ、カズキくんと契約したのならまだマシね。だけど、どうなるかわからないよ?」


 そう言うとマモの(ほほ)を汗が伝っていくのが分かる。彼女がこれほど真剣な顔をしているのは今まで見た事が無かった。


 暗くなった空を見ると穴が開いた様に光りが差し込んでくる。まるで願いを叶える龍でも呼び出したかの様だ。その光りは清水さんの前に伸びていくと禍々しいオーラを(まと)う黒い髪の大人のお姉さんが降りて来た。


「ウソでしょ……なんでアタンが……」

「マモ、知っているのか?」

嫉妬(しっと)の魔人よ。何でよりにもよってアイツなのよ……」

「一応、聞いておくがランクは?」

「UR……あれは元神よ……」


 はぁ?

 元神って、トップクラスに強いんじゃねぇのか?


(わらわ)を呼び出したのはお主じゃな?」

「えっ、呼び出してはいないですけど……」

「ほう。ではそのオルゴールは誰のじゃ?」

「わ、私のですけど……」

「ならばお主が、契約者じゃ。しかし、何やら小物が混じっとる様じゃのう……」


 そう言ってアタンは周りを見渡す。ロミが居る事に気づいたのか。異様な空気の中物凄い威圧感を感じる。


「ロミには手を出さないでくれ」


 カズキはロミの前に立ち、アタンにそう訴えかけると鋭い蛇の様な視線はカズキにもロミにも向いてはいなかった。


「お主はそこで何をしているんじゃ?」


 その瞬間、俺の背筋は凍りつき崩れいく様な感覚に陥っていた。


「……アタン」

「久しぶりではないか? こそこそとせず挨拶位すれば良いものを」


 今どうやって後ろに来たんだ。マモですらその姿を追えてはいない様だ。それにしても、180cmはあるだろうか、近くで見るとデカい……。


「別にいいでしょ。アタンは何しに来たのよ?」

「なぁに、妾を求める心地よい気配を感じただけじゃ。そうでなければ神器は手にできんじゃろうて」


 カズキ達もようやく俺たちに気づいたのだろう。しかし、声をかける余裕は無くなっている様だ。


「アンタあの子をどうする気? 私の知り合いなのだけど?」

「いつも通りじゃ、嫉妬の心を解放する力を貸してやるだけじゃ」

「嫉妬って……」

「気づいておらんのか? 相手はお前じゃよ」

「なっ……」


 マモの顔を掴み、蛇の様にニヤリと笑みを浮かべながら顔を近づけると、まるで空き缶でも捨てるかの様に彼女を投げ捨てた。


「マモ!」

「おっと、小僧には用があるのじゃ」


 そういい(つか)まれた腕はまるで岩の中に挟まれた様に重くびくともしない。


「はっ離せ……」

「無理じゃ、用があると言っておるじゃろ?」


 そのまま清水さんの前まで引きずられ、目の前で話された。


「清水さん……」

「ごめんね長嶺くん。こんなつもりじゃ無かったのだけど」

「なんじゃ小僧、娘の事を好いておるのか? 気の多い奴じゃのう」

「俺は元々彼女の事は好きだし、嫉妬される覚えはない」

「ふむ。無意識というのが一番罪なのじゃが、おかげで娘の感情は妾の好みに仕上がっておるというのは皮肉じゃのう」

「無意識?」

「気があるなら話は早い。身体でもくっつけてやろうか? それともイチモツか心の臓でも娘にくれてやろうか?」


 とんでもなくヤバい奴じゃねぇか。しかしマモより(はる)かに力が有る事を考えると、この魔人は容易にそれをやってのけるだろう。


「あの……」

「どうした娘?」

「それってもらったら長嶺くんはどうなるんですか?」

「なに、渡しただけで死にはせん。娘がそれを潰したりするなら話は別じゃがのう」

「なら取り上げるだけって事ですか?」

「そうじゃ。他の者にドキドキする事も操を勃てることも出来ん様になるだけじゃ」

「それはちょっと、欲しいかも……」

「ちょっと清水さん!?」


 そうだ、彼女は変態だった。しかし、彼女が持ったとしてどうするつもりなのだろうか。まさか一人で使う気なのか? それはそれで気になる。


 それはさておき、清水さんの返答次第で俺はとんでもない事になってしまう。興味はあるものの自分の生活の為にも阻止しなくてはならない。


「ちょっと待て、何勝手に話を進めているんだよ」

「なんじゃ小僧、妾にたてつくつもりか?」


 そう言って(にら)む目はまるで獲物(えもの)を獲る時の様に鋭く、俺が抵抗したところでコイツの決定には逆らえないのだと悟る。だからといってはいそうですかと受け入れるつもりがない俺はこの魔人に気持ちだけは負けない様に睨み返した。


「ほう……小物とは言え、守護者と契約しているだけの事はあると言うのじゃな?」

「だったらどうだっていうんだよ?」

「幸いにも小僧は娘に少しは気がある様じゃ。それにどうやったかは知らぬが欲望の魔人と長期的な契約もしておる……」


 そういうと少し考えている素振りを見せ、思いついたかの様に手を叩いた。


「ならば妾と小娘、小僧と小物で戦争といこうではないか?」

「……戦争?」

「そうじゃ、欲望の強さを比べる『お願い❤︎戦争』じゃ!」

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