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第15話 鬼気迫る

 この状況で告白ってズルいんですかね。いや、この状況になっても告白しない方が俺はズルいと思っている。


「もう、長嶺くんは私の事大好きなんだから」


 そんな自信満々みたいな事を照れながら言う清水さんも可愛い。彼女ははそう言うと俺の胸に顔を埋めている。


「えっと清水さん?」

「スー」

「あの……何してるんですか?」

「匂いを嗅いでるの。一日動いたあとの匂いは格別なんですよぉ?」


 そっちもですかい!

 だが、今日の俺は一味も二味も違う。夜景が綺麗な普段は絶対泊まる事が無い様なスウィートルームに好きな子と二人で抱き合っている。


 これはもう、手を出さないのは罪なんじゃないですかね? そう考えながらも出してはいけない理由を必死に考える。


 清水さんも俺の事は好き

 思い出としては最高のロケーション

 既に抱き合っている


 ……彼女じゃない。これだ!


「あの、清水さん?」

「ふぁい?」

「色々考えたんですけど、俺たち付き合った方がよくないですか?」


 最低の告白。もっといい感じの事をいいたいのだが、言いくるめるような言葉になる。


「どうして?」

「どうしてって……清水さんは俺の事好きじゃないですか?」

「好きだよ?」

「なら……」

「でもきっと、長嶺くんは後悔すると思うな」

「そんな事はない!」


 彼女の意外な一言に俺は反論した。


「だって……」

「大丈夫です。清水さんが腐女子でショタ好きで百合もいけて匂いフェチの変態だって事は知ってます!」

「あれ? そんな風に思ってたの?」

「あ……」

「あと、覗きとMも追加で! ぬいぐるみになるのもハマりそうかな?」

「増やすのかよ!」


 よく考えたら確かにとも思う。だけどそれでも俺はそういう所も含めて彼女の魅力だと思っている。


「そういう感じ好きだなぁ……」

「だから付き合ってくれれば」

「うーん……チュッ」


 彼女は顔を近づけると優しくキスをした。甘くどこかほろ苦い様な雰囲気は俺の心をかき乱す。


「これってOKって事?」

「キスしちゃった。だけど答えはダメかな」

「なんで?」

「長嶺くんは私の事が好きな自分が好きなんだよ。本当にキミが好きなのは……」


 清水さんがそこまでいうと、インターホンが鳴り焦る様なドアを叩く音がした。


「行った方がいいんじゃない?」

「くそ、どんなタイミングなんだよ」


 ドアを開けるとカズキが食い入る様に言った。


「長嶺!」

「カズキ、急にどうしたんだよ」


 もしかして、ロミの正体が分かったのだろうか。


「お前、すぐに住穂の所に行け!」

「なんでだよ。マモは今日は用事があるって」

「その用事なんだよ。ロミに聞いたんだけど先代と話すことになっているらしい」

「別に普通の用事じゃねぇか」

「そうじゃねぇ……先代と住穂は虐待する様な関係なんだよっ!」

「嘘だろ?」

「ロミが言ってた。先代は厳しいらしく今回失敗しているのを知り折檻(せっかん)しに来たらしい。だからアイツは……」

「わかった……」


 魔人の折檻がどれほどの物なのかはわからない。だが、俺のせいでアイツがそうなるのは止めなければいけない。


「準備ができたらロミが下で待ってるから、案内してもらってくれ」

「おう」


 俺はそれを聞いてすぐに出る準備を始めると、清水さんは言った。


「ねぇ、行くの?」

「なんかマモが大変らしいんだよ」

「あのさ……行かないなら付き合ってもいいよ?」

「何言ってんだよ」

「……エッチな事してもいいよ?」

「だから清水さん、それはすっごく嬉しいし今すぐ飛びつきたいけど、今は友達を助けに行かないといけないだよ」

「そっか……わかった。頑張ってね」


 寂しそうな彼女の表情に後ろ髪をひかれながらも、俺はロミの元へ向かう事にする。部屋を出る途中清水さんは小さな声で「バイバイ」と言っていたのが聞こえた。


「ロミ、どこに行けばいい?」

「ごめんなさい。僕がもっと早く言っていれば」

「マモに口止めされてたんだろ?」


 ロミはコクリと(うなず)く。すると人気のない場所まで案内されスマホを開く様に言った。


「召喚するのか?」

「多分今は出来ないと思う」

「じゃあどうすれば?」

「僕が扉を開くから、召喚のボタンを押しながら中に入ってくれれば多分辿り着けると思う」

「わかった、やってみるしか無いよな」


 ロミが魔法を使うとそれまで見た事が無い様な扉が現れた。


「これが僕らが帰るための扉。キミは守護者の神器を持っているから彼女の場所に辿り着けると思う」

「ロミ、ありがとう。なんかいい感じの所邪魔して悪かったな!」


 俺がそう言うとロミははにかんだ様に笑い、小さく手を振った。よくよく考えれば俺は結構凄い事をしているのかもしれない。


 目の前の扉を開け中に入る。もちろんロミが言っていた様にスマートフォンを持っている。心なしか赤い宝石の様な物が光っている様にみえた。


 中に入ると、瞬間移動(しゅんかんいどう)をした様な気にはなったものの、街の中の裏路地と言った様な場所に着く。いくつかお店は並んでいるものの人の気配はない。


「不思議な場所だな……」


 ふとスマホを見ると、それまで表示されていなかったマップの様な物が開いている。


「マモのアイコン、ここに行けばいいのか?」


 灯りは付いているもののにぎやかな声は聞こえては来ない。現実世界の様な異世界は、それほど大きくは無さそうにみえた。


 歩いて行くにつれ、ご飯屋さんの様なものがチラホラと見える。「味噌煮込みうどん」「あんかけパスタ」「エビフライ」「ひつまぶし」……。


「なんで名古屋名物ばっかりなんだよ!」


 そういえば、マモが食べた事が有ると言っていたものも名古屋名物だった。もしかして魔界は名古屋なのか、それとも名古屋が魔界なのか……。


 そんな事を考えていると古い日本家屋のお屋敷の様な建物の前に着くと、どうやらアイコンはこの中を示している。とはいえ勝手に入るのは抵抗があるほどに誰かの家だ。インターホンでも有ればいいのだけど……あるはずも無い。


 マモは今、この中で一体なにをしているのだろうか。もしかしたらもう既に先代の折檻というのは始まっているのかもしれない。


 俺は勇気を出して中に入ってみる事にする。入り口は古めかしいスライド式の扉。出来るだけ音を立てない様にゆっくりとガラガラ開けてみる。


 すると中からマモの声が聞こえてきた。


「それは違うんです!」


 一体なんの話なのかはわからなかったものの、感情のこもったその声はヒートアップする様な話をしているのだけは分かった。

お読みいただきありがとうございます!

もしよろしければ評価、ブックマークをして頂けると創作の励みになります!


感想などもございましたらお気軽に書いていただけると嬉しいです★


次回もまたお会い出来る事を楽しみにしています(*ꆤ.̫ꆤ*)

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