第10話 敵だらけだ……
「なんじゃ、広島がどうかしたんか?」
マモの奴、一体なにがしたいんだ……。もしかして今のうちに逃げろという事か。いやいや、アイツに限ってそんなカズキみたいな思考はしていない。
「そうね……それなら一つだけ言わせてもらおうかしら?」
「おう、ゆうてみい」
「広島以外の世間からは『広島焼き』と呼ばれている事を自覚した方が宜しくてよ!」
「なんじゃと貴様、やおい娘ちゃろうとぶち殺しちゃる!」
意味のわからない油の注ぎ方してんじゃねぇよ。面子を大事にするって話してた所だろうが。本人どころか地元の面子まで潰しやがって。
ユキオは彼女を掴んで持ち上げようとするもマモは平然とした顔をしている。やっぱり魔人だから強いのだろうか?
「なんじゃ娘っ子、えろう重たいのう」
「エロいのか重たいのかどっちかにしてよね!」
「貴様、わやじゃのう」
「長い東京生活で、母国の言葉を失い始めたようね?」
もうやめてくれ……というか、解決出来るならさっさとしてくれ。するとマモはこちらを向いて何やら口をパクパクと動かしている。
「た」「す」「け」「て」「は?」
は?
自分で悪化させておきながら願いを使わせようとしてやがるのか? どう考えても既に決着はついているじゃねぇか。
「な、長嶺。住穂って何者なんだよ……」
「アイツはちょっとおかしいんだ」
「おかしいの方向性がちがうだろ」
「まぁ、そっちの方にもおかしいんだ」
全く納得が出来ないという顔をしているカズキをよそに、ふと俺は願い事を決めかねていたのが分かりマモが導いてくれたのではと思う。しかし、煽っていた事を思い出し撤回した。
「あーもう、仕方ねえ。【俺たちを助けろ】」
しかし彼女は不服そうな顔をすると、首を振りどうやら違うと言いたいらしい。違うってほぼ契約破棄じゃねぇか……とはいえ彼女がそんな事をするはずがない。となると奴はただ単に「たすけて」と言わせたいだけなんだろう。
ふざけんな!
しかし、カズキや清水さんをこれ以上不安にさせるわけにはいかない。あーもう、魔人だってバレてもしらねぇし今回だけだからな!
「マモ、【たすけて!】」
「やっと言ったのね! いいわ、私の力を見せてあげる!」
……ドタンッ!
えっ?
単純に投げただけ?
いや、そのまま肩をキメた?
「はい、ギブアップは?」
「ぐあぁぁ……わしは言わんぞ」
「肩外れちゃうよ?」
「やるならやるんじゃ」
マモも大怪我をさせるつもりは無いのか、少し困っている様に見える。彼女は試行錯誤の上、そのまま耳元で囁きだした。
「折るよ?」
「やれー」
「ボキッと行くよ?」
「だからやれといっとるじゃろ!」
「……結構痛いよ?」
「一思いにやってくれ!」
ボキッ!
「ぐあああああ」
「ユキオさーん!」
やっぱり奴は魔人だ。一周回って拷問みたいに酷い事になっている。彼女はパンパンと手をはたくと何事も無かったかの様にこちらに歩いて来た。
「はい、一丁あがり!」
「……」
「……」
その悲惨な光景に、俺もカズキも言葉を失っていた。
「もしかして、武術家なのか?」
「ちがうよ、だって私魔ジ……本気と書いてマジだもん!」
「いや、喧嘩は大体の奴は本気だけどな……」
しかし、ユキオの腕は大丈夫なのだろうか?
そう思っていると、彼女の後ろに大きな黒い影が現れた。
「お、お好み焼きは広島のもんじゃい!」
外れていない左手で大きく振りかぶった拳がマモを襲う。
「うしろっ!」
「えっ?」
彼女に当たる瞬間、魔法陣が発動しユキオが飛ばされて行った。
「あ……」
「なるほど、お好み焼きは広島のもんじゃと……もうそれもんじゃ焼きだよね?」
「いや、マモ。それは酷すぎる。文化戦争には気軽に踏み込んではいけない。ってそうじゃなくて、お前何人前で魔法発動させてんだよっ!」
「あちゃー。別にそのまま殴られてもダメージ無かったんだけどねぇ……」
それはともかく、カズキや清水さんならまだしも先輩達にも見られている。記憶を消す願いとかをした方がいいだろうか。
「なぁ、今何か光ってユキオさんが飛んで行ったよな?」
「さぁどうだろうねぇ」
「いや、俺には見えたぞ?」
「まあまあ、たまには光る事もあるさ!」
カズキをこれ以上誤魔化せる気がしない。言ってしまうべきか、願いを使うべきか。彼女に視線を送るも今までに無いケースだからか、目を逸らしやがった。
「なぁ、長嶺。俺に、いや俺とサキには本当の事を教えてはくれないか?」
「まぁ、仕方ないか。とはいえ何から話せばいいのかちょっと難しいんだよね」
「そうか、分かった。ならこれだけでも教えてくれ……アイツは一体何者なんだ?」
俺は一度深呼吸して息を整えた。まぁ、なんだかんだ言った所で言う事は一つしか無い。そのうちこの二人には言うつもりだったのが少し早くなってしまっただけだ。
「マモは……魔人なんだ」
「魔人?」
「そう、正確に言えばこのスマホの魔人だ」
俺は包み隠さず、本当の事を言った。もしこれで二人がマモを身近に置いておけないと言うのなら、仕方がない。その時はマモに願い事失敗だった事にして貰おう。
「タカシ? 今なんかゲスい事考えたでしょ?」
「はっ? べ、別に考えてねーし」
「あはは、長嶺。いくらなんでもそれは無いだろ」
「はい?」
「いや、魔人でしかもスマホの魔人って。色々とツッコミ所が多すぎて流石に嘘だってわかるわ」
「あ、いや。全く嘘は無いのだけど……」
「だってスマホだぞ? 魔人と言えば指輪とかランプだろ? なんで現代科学の結晶に封印されてんだよ?」
俺は目を細め、マモを煽る。
「言われてんぞ?」
「魔道具にもスマホはあるもん……」
再び、カズキの方を向くとやはりまだ疑っている様だった。
「まぁ、信じる信じないはカズキ次第だけどさ。とりあえず嘘じゃねぇから」
「本気かよ……」
小さくマジとルビを振ってやろうと思っていると、季節外れの突風が建物の間に大きな音をたてながら吹き嫌な気配を感じた。
「あはっ❤︎ 魔人みーっけ!」
幼い声と共に、どこからともなく小さな男の子が飛び降りてきた。問題はそこじゃ無い、この子はマモが魔人という事を知っている。あたかも魔人を探していた様な口ぶりに俺は冷や汗が溢れるのを感じた。
お読みいただきありがとうございます!
今回もイメージを入れてみました。どんどん新しい事に挑戦していきたいと思います!
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次回もまたお会い出来る事を楽しみにしています(*ꆤ.̫ꆤ*)




