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憧れた放浪者(ニコライ・レスコフによる小説の単略サマリ)

作者: ニコライ・レスコフ

前書き

チェホフの意見では、レスコフが文学評論家達によって正義なく価値を下げられ、一番列に並ぶべき作家である。日本でも、ドストエフスキー、トルストイ、ブルガコフに比べて余り知られず、「憧れた放浪者」小説を単略サマリー化する事にした。


憧れた放浪者

1872年夏、ラドガ湖周辺の修道院を船で回る巡礼旅行の時であった。カレラという歴史のある町に寄って、その貧しさと寂しさにうっとうされ、船に戻って印象交換を始めたのがこのストーリーの切っ掛けである。

「別に、犯人を遥々サハリンまで送らなくてもさっき見たカレラとかに送れば国家予算も節約され、犯人もここの淋しさに負けて反省が早いちゃうか」と一人が言い出した。

「あんなとこで反省するのか?逆にすれっからしのギャングになるなんじゃないの?」と傍に座っていた50歳過ぎの坊主が反論した。

「懲役所とか刑務所が要らないということ?」と商人に見えるぽっちゃりした男が聞いた。

「悔い改めが出来れば懲役所なんか要らない。悔い改め出来なかったら懲役所にも無理がある」と坊主が答えた。

「あなたがきっと犯罪を一杯起こしている」と商人が聞く。

「御尤も。でも、前部反省し、懲役所逃れたものの、数年前に出家修業を始めたのだ」。

「お前の人生を詳しく話せるのであれば話しておくれよ」と数人が坊主を励ました。


坊主の話

俺の本名はイワンである。オリョールというモスクワから南西300キロにある町に生まれた。父が馬車の御者だったので俺が赤ちゃんの時から馬屋で過ごし、人間よりも馬の事を分かっておる。11歳になったら四頭立て馬車の第一列左馬騎手として使え始め、何時間も馬に乗ると意識を失ったり寝込んだりする時に落ちないように縄で締め付けられていた。それで、ある夏、我が地主が遊びに向かい、修道院を通る際、ゆっくりと動く2頭馬車が先に見えた。追いついたら馬車の中に疲れそうに寝ている坊主がいる。正に、今俺が着ている服と同じなのだ。追い越す瞬間にその人に悪戯にむちをかけた。坊主がびっくりし、飛び上がり、馬車から転び、その右足が手綱に填まり、何十メトルも引っ張られた。橋辺りでようやく止まり、坊主の状態を確かめれば顔が血だらけで死んでいた。我が地主と父が即座に修道院に行き、謝って、俺を罰する事そして修道院に小麦粉、馬の餌等約束して納得得られた。しかし、その日の夜からあの亡くなった坊主が夢に出始めた。

「お前は何回も死ぬところを迎えるが死なない」

「早めに出家修業しなければ悪循環に巻き込まれるぞ」

「ここでお前の母と会い、お前が無事に生まれれば代わりに自分の命を神にやると約束したそうです。だからお前が生まれたら間もなく亡くなったのだ。君に宜しくを伝えていたよ」

等と言うのだ。うるさかったが、後に起こった事件の連鎖で見れば確かに言われる通りにすれば良かった。

***

馬屋には鳩二匹がいて、非常に可愛くて、餌を馬と同じものを食べ、お互いに離れられず、ずっとカップルとして一緒に過ごした。しかし、子供が出来ると、ある猫が秘かにそれを盗み、食っちゃう。また子が生まれるとまた盗まれる。俺は罠を作り、猫を捕まえ、斧で尻尾を切って離したのだ。あの猫が地主の使いの猫で、奉行が使いの苦情を聞いて俺に鞭掛け100回と馬屋から石割に転勤を命じられた。鞭掛けは痛くて数日間動けなかったものの、それよりは石割への転勤の方が恥重かった。それで、一晩、縄を取って、森へ行って、縄を松の木の枝から釣り下げ、ループを作った。そしてお祈りして、頭をそのループに嵌め、釣り下がるところでバタンと地面に落ちた。目を上げれば森の暗闇の中で一人のジプシー男が真っ白な歯を露わに微笑むのだ。

「自分で首を絞めるなよ。それよりは我々の仲間になってさ、捕まったらその時誰かに絞められればいい。人生が酷いんやったら一番良い馬二匹あの地主から盗んで来い」

俺の頭が完全に迷い、ジプシーの言う通りにした。ジプシーが馬の首に狼の歯を掛け、凄いペースで走り出した。ペンザという町に着いたら市場でこの2匹の馬を300ルーブルで売った。ただし、儲けた金をジプシーが前部収め、俺に5ルーブルしかくれなかった。「お前はまだ弟子だから見習い期間中だ」という。あんな弟子の役なんだかいやで、ジプシーと別れ、もらった5ルーブルを食い潰してから警察に逃走反省に行こうと思ったのだ。

ピロシキ10個にクワス2杯飲んでぶらぶらすると最寄りの平野で人が集まって、奇麗な白い小馬の訓練を眺めている。その横に一人タタール人が偉そうに煙管を吸う。間もなくもう二人のタタール人が馬に乗って来てあの小馬の駆け引きを始めた。二人とも7百ルーブルに馬30匹に洋服まで脱ぎ始めたが、「鞭の掛け合いで決めろう」と煙管のタタール人が言い切った。そしてこの二人が地面に腰を掛け、左手を握り合い、踵を合わせ、右手に鞭を持たされ、順番にお互いの背中に鞭を掛け始めた。その一人がポチャリで思い切って打つが、相手の細いタタール人がじっくりとキメをしながら打つのだ。150回まで行ったらポチャリのバクシという奴の背中が真っ青に膨れ上がり、細いチップクンという奴の背中が腫れずに血だらけである。「血だらけの方が耐え易いのだ。バクシがそろそろ切れるやろう」と隣に立っている男が言った。そう言われると、あと10回ぐらいでバクシの目が凍ったかのように見え、鞭を掛けようと上げた手が弱弱しく落ち、体も後ろに倒れた。

煙管のタタール人が「チップクン、おめでとう、お前の馬だよ」と言って、小馬を譲った。

チップクンが立ち上がって腹部を小馬に掛けた感じで乗り、去った。

しかし、煙管のタタール人が気が乗ったようで、もう一匹の素晴らしい馬を連れ出させた。

原価700ルーブルで勝負は鞭の掛け合いで決めるという。一人の対決者が決まり、背が低いがごつい体のタタール人、サバキラという奴。俺の隣に立っていた商人っぽい男が金ありそうだが鞭合いで負けそうなもので、「お金は貴様から、鞭合いには俺が出る」と提案した。そしてサバキラと2百回程まで鞭合ったのだ。非常に強い相手であったが、俺が先程眺めたチップクンのタックチックスを応用し、辛うじて勝てた。立ち上がったら、サバキラの顔が真っ青になっている。後ろに並んだタタール人が「イワンさ、サバキラ死んだから我等と逃げなければ警察に刑務所の命だぜ」と耳に囁いた。止む無くタタール人達と逃げた。カスピ海辺りの平野で馬を飼う騎馬族なので俺の馬の知識が治療・訓練に役立ち、10年ほど一緒に過ごした。そして、転売された。タタール人の仲間達が市場で馬を売っていて、横にジプシーに騙されそうな軍隊の馬購買担当を俺が可愛そうに思い、助言したら非常にありがたく思われ、タタール人達から俺を買い取ったのだ。

それでこの馬購買担当の家で住むことになった。ただし、俺の運命が波乱万丈なのかまた悪循環に巻き込まれた。購買担当が偉い博打で、トランプだけでなく女たらしという意味を含めて。奇麗なジプシー女に惚れ、5万ルーブルも出してジプシー群れから買い取り、家に連れ込んだ。素晴らしい女だったが、こいつには勿体なく、暫くして飽きたのだ。ある金持ちの娘と正式な結婚をする運びとなり、ジプシー女が川辺の崖より飛び降り自殺した。俺はあの家にこれ以上泊れないと感じ、宛もなく放浪し出した。とぼとぼとモスクワまで歩いたのだ。馬サーカスに雇われ、選別、治療、乗り馴らしを任せられた。その時はイギリスの有名な馬専門家ジョーン・ラレーイがモスクワに滞在し、ある一匹の馬をどっちが先に乗り馴らせるかと俺と賭けをした。あの馬が非常に荒れった性格で、乗ってくる人の膝を噛んで食べていた。ジョーンが鉄製の膝パッドを付けたので生き残れたが、乗り飛ばされた。俺はタタール人の所で習った「足運転」と俺なりのノーハウ「歯軋り」で何とかこの馬を乗り馴らせたのだ。ジョーンが賭けで負けたのでウォッカ飲みに連れ、ノーハウについて聞きまくったが、「歯軋り」が気合いでしか出ないものなので身振り・手振りで説明しても通らず、二人ともがっかりしたばかりである。イギリスで馬馴らしの仕事しないかと誘われたが、言葉も海外の習慣も分からないので断った。

年が去るに連れてあの自殺したジプシー女の冥福を深く祈るべき奥義を感じ、修道院に参った。そこでも一応馬の仕事がメインになったが、そもそも宗教心ではないのでチョンボが頻繁に繰り返され、「巡礼者になればいい」と神父の判断に至り、ここで貴方と一緒に船に乗っているものです。先祖や身近であった人の冥福を祈れば國も国民も救われると信仰しているもの。

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