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ロイドと犬

翌日、髪を結って貰っていると

「お嬢様、お客さまがお見えです」

「あら?どなた?」

「子犬の人ですと言えば分かると…」


(ああ、あのわんこさんね…)


「いいわ、通してちょうだい」


庭のテラスで子犬と戯れる大型犬の様な人がいた。

「お久しぶりです。よくここがお分かりになりましたね」

「良かった!あ、僕はカイエン・ホワイトと申します!」

きびきびとした動きでお辞儀をした。

「私はセレン・ウエストバーデンと申します」

それにしても彼の服装は…


「騎士でいらっしゃるのですね」

「犬にも怖がっていた男が、意外ですか?」

「ええそうね」

と言って笑った。


「そういえば、その子犬は」

「ええ、あの後すぐに飼い主が飛んできたのですが、なぜか懐かれましてね…どうやっても離れないもので飼うことに決めたのですが…」

「お名前はなんて?」

「タルトです。タルト屋さんの前でお嬢様にあった記念に。ご迷惑でしたか?」

「いえ、とんでもないです」

意外と可愛いところがあるのね、と思い微笑ましかった。


「そうそう、この帽子を。あのまま持ち去ってしまったので」

私は紫のツバが広い帽子を受け取る。

「良かったですわ。お気に入りなのです、この帽子」

と言って被ってみせた。

「良くお似合いです」

「それよりどうしてここがわかったのかしら?」

と言うと、顔を赤らめる。

「体力には自信がありますので、走って馬車を追いかけまして…でも、帽子が汚れていたので綺麗にして乾かしていたのですけど、遠征が入ってお渡しが今日に…」

と言って俯いた。


「あら、綺麗にして頂いたのね。感謝申し上げます」

「お詫びと言ってはなんですが、甘いものがお好きならオススメのお店があるので一緒に行きませんか?」

なんだか尻尾を振っている大型犬のように見える。

屈託のない笑顔。

純粋な瞳。


と、そこへ

「お嬢様!大変です!王族の方がお見えなのですけれど…」

と言うや、後ろから長身の黒髪が現れた。

「これはこれは、ウエストバーデン子爵令嬢。隣の男は誰かな?」

「ロイド・ライアンハート様にお目にかかります。本日はどのようなご用件で?」

カイエンも同じく立ち上がってお辞儀をした。


ロイド・ライアンハート。

あの後父に聞くと、国王の甥にあたるとのことだ。

父からは「気に入ったご令嬢を何度泣かせてきたかしれない。だからお前も気をつけなさい」と言われたけれど…。


「うむ、改めて君に求婚しようと思ってね」

「お断りしたはずですが」

「だから?」

「私は誰かと添い遂げるつもりはありません」

ロイドは、チラッとカイエンを見た。

「ふうん?」


タルトがキャンキャンと吠えた。

「こら!よせ!」

カイエンは嗜めた。


「やかましいな。犬は嫌いだ」


くすりと微笑み言い返す。

「あら、猫派ですの?どちらも可愛いですわ」

私はにこやかに笑った。


「ふん、今日は邪魔者もいることだし、失礼しよう」

ロイドは背を向けて去って行った。


「子爵令嬢はロイド様に求婚されているのですね。…その、なぜ断るのですか?それに、誰とも添い遂げるつもりはないとは…」

「ホワイト様、貴方には関係のないことです」

ぴしゃっと言って立ち上がる。


「帽子、ありがとうございました」

「え、あ、ちょっと…」

「お気をつけてお帰りくださいませ」

私は踵を返して振り返りもせず立ち去った。


残されたカイエンはタルトを抱いてふわふわの毛に顔を埋めた。

続きは明日15時ごろ投稿します。

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