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熊のような犬とは

鳥がさえずる清々しい朝の窓辺で深呼吸する。

ここから見える景色は春には花が咲き誇り、夏には緑色の木漏れ日が揺れ、秋は高い空に雲が流れ、冬は張り詰める空気に綿飴のような雪が舞う。


「お嬢様、パーティの招待状がわんさか届いています」

トレーの上にはどこから聞きつけたものか、沢山の令嬢から噂の的にしようという企みが届いている。


「…こういうことには耳聡いわね…」

「どうされますか?」

「"婚約破棄で傷心"してるから言い訳できて良いわね」

「左様でございますね」

「少し外に出たいわ」

今日は暑くなりそうで、ツバの広い紫の帽子を被って馬車に乗った。


行き交う人々は皆、愛とはどういうものなのか知っているのだろうか。

胸を締め付けるような恋をしたことがあるのだろうか。

走り回っているあの子どもは、これからそれを知るのだろうか。

そんなことを考えていると、新しく出来たらしい洋菓子店が目に入る。

「ちょっと止めて貰えるかしら?」


わくわくしながら店に入ると、可愛らしい水色の壁紙に、店内の装飾は白を基調としていてカウンターやテーブルも全て白で揃い、清潔な印象だ。


ショーケースに並んでいるタルトを見る。

女性人気ナンバーワンのいちごタルトは絶対として…レーラはりんごが好きだから、それも買うとして…


散々悩み抜き、使用人達の分も併せて沢山のタルトを買い、店を出る。


ほくほくしながら馬車に乗ろうとしたその時、


「助けて!!助けてください!!」

という声がして声の方を見ると、ものすごい勢いで走ってきた男性がとっさに私の背後に隠れた。

私の紫の帽子がふわっと飛ぶ。


「???」

一瞬訳が分からなく、侍女達がお嬢様から離れなさい!無礼ですよ!などと声を荒げているのに気がつき、

「待って待って!何があったのかまず確認を!話はそれからです」

ぶるぶる震えるその人に落ち着くよう言うと、

「い、犬が…」

「いぬぅ?」

「ものすごい、熊のような…お、おそ…恐ろしいほど大きい…」


きゃん!!と高い鳴き声に下を向くと、子犬が尻尾を振って私の足元に擦り寄った。


「熊のような…犬ってこの子かしら?」

抱き上げて見せると

「ひゃああああ!?」

その男性は悲鳴と共に硬直した。

「あら、ごめんなさい…大丈夫?でも良く見て、この子、まだ子犬よ?」

「え?」

私の手に抱かれ、きゃんきゃん!と尻尾をふる。

「…本当だ…」

その男性は、これはご令嬢に大変失礼を…と言いながら落ちた帽子を拾い上げた。


「あら」

薄茶色の髪の毛に、ヘーゼルの瞳の男性は良く見ると、このわんこに色合いがとても似ている。


わん!と言いながら子犬は男性に飛びついた。

「うわああああ!!!!」


叫びながら去って行った。

「お嬢様!!どこも触られていないですわよね!?…なんて無礼なの…!」

「大丈夫よ。なんだか、嵐のような人だったわね…」

面白いものを見たと思い、馬車に乗り込んだ。


「あ、お嬢様…お帽子が…」

「持っていかれちゃったわね。いいわ。久しぶりに面白かったから」


なんだか、大型犬みたいな人でもあった。

なんとなく子犬が懐くのもわかる気がする。

本日まだまだ投稿します。

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