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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第三章 二人の王子と極悪令嬢

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無敵の三人

「お取り込み中のところ申し訳ありませんが、まだ魔物が残っておりますゆえ、そろそろ戦闘態勢に戻っていただけませんか?」


『えっ?』


 ロゼッタにそう指摘されて、クレマン様と二人顔を見合わせる。確かにそれもそうだと気付いた二人は、お互い可笑しくて苦笑してしまった。


「すまなかった、ロゼッタ。もう大丈夫だ」


「現状を認識していただけて良かったです」


「あんた、ただ嫉妬しただけなんじゃないの? 私とクレマン様がイチャイチャしてたから。嫉妬する女って怖ーい」


「冗談が言えるほどお元気になられたようでなによりです。ついでに、フライヤーがまだ三匹残っておりますから、そちらとも戦いますか? お一人で」


「……ごめんなさい。今はダークウルフで手一杯です」


「結構。自分の能力を過信しすぎないのは大事です」


「ロゼッタは本当に良い先生をしているな。どうだ、国王陛下に国王軍の教導係として打診してあげようか?」


「お気持ちはありがたいのですが、お断りします。私は、自分からわざわざ死ににいくような無謀なことばかりする主人をお守りするだけで手一杯ですから」


「嫌味がさらに加速した……」


「なにか?」


「いいえ。その通りであります」


 ぐうの音も出ない。縮こまる私を見て、クレマン様は可笑しそうに笑った。


 そんな時、向こうから息子を心配してか、ヘルマンさんが駆けつけてきた。


「マティアス、無事か?」


「ああ、大丈夫だ。アンジェリーク様が助けてくれた」


「アンジェリーク様が?」


 どこに、とキョロキョロするヘルマンさんが申し訳なくて、「ヘルマンさん」と声をかけフードから縦ロールの一部を見せる。すると、彼は目を見開いて「あっ」と声を上げた。


「アンジェリーク様がどうしてここに?」


「それは私が後で教えよう。それよりヘルマン、マティアス、まだ動けるか?」


「はい!」


「大丈夫です!」


 クレマン様の言葉に、ヘルマンさんとマティアスは背筋をピンと伸ばした。


「では、ここは私達で片付ける。お前達は、他の自警団員達と合流し、残っている奴らを片付けてくれ。指示出しはヘルマンに任せる」


「はっ! 了解であります」


 マティアスが剣を取りに行き、私は倒したダークウルフの脇腹に刺さったままの短剣を抜きに行く。クレマン様とロゼッタは、何か話し合っていた。


「クレマン様、申し訳ないのですが、私と一緒にフライヤーを倒していただけませんか?」


「それはいいが。君なら一人でも十分だろう?」


「それはそうなのですが、あまり目立ちたくはないのです。ダルクール男爵や殿下達の目もありますから」


「なるほど。そういうことか」


「本当は、バレないよう魔法も使わないようにしていたのですが。アンジェリーク様のせいで台無しになってしまいました」


「ほう」


「あれは、ブチギレしたロゼッタが八つ当たりのようにやったことでしょう? 何でもかんでも私のせいにしないでよ」


「はあ?」


 ロゼッタが目を細めて抗議する。相変わらず、急に殺気を放ち始めるからタチが悪い。そんなに出し入れ自由なのか、それ。


「……ごめんなさい、私のせいです」


「よろしい。それと、あなた様は無理に戦わないでくださいね。もう気力も体力も限界でしょうから」


「おっしゃる通りです。無理はしません」


 そう私が認めると、ロゼッタはやっと殺気をしまいこんでくれた。


 ホッと胸を撫で下ろす。その時、一人の傭兵がダークウルフを蹴散らしながらこちらへ向かってきた。


「リザさん!」


「よお、妹ちゃん。無事か?」


「見ての通りです」


「そっか。でも、頑張ったな」


 リザさんは怒ることはせず、あっさりと褒めて私の頭を撫でる。やっぱり、いくつになっても褒められるのは嬉しい。


 そんな私達のやりとりを見て、すかさずロゼッタが間に入ってきた。


「どうしてあなたがここへ?」


「どうしてって、加勢にきたんだよ。向こうの方は下火になってきたからね」


「べつに、助けは必要ありませんが? こちらにはクレマン様がいらっしゃいますし」


「まあ、いいじゃん。固いこと言うなよ、お兄ちゃん。私にももうちょっと稼がせて」


 そう言ってウインクしてくるリザさんに対して、ロゼッタの片眉がピクリと反応した。


 うわ、露骨に嫌そうな顔してる。確かに、正体がバレないようにしたいロゼッタからしてみたら、動きにくくなって迷惑なんだろうけれど。


 最終的にリザさんの介入の是非を決めたのは、私ではなくクレマン様だった。


「いいじゃないか。人は多い方がいい。それに、傭兵は稼げるときに稼がないとな」


「さっすがクレマン様! 理解が早くて助かります」


 リザさんがロゼッタに向かって、ふふん、と鼻を鳴らす。明らかにロゼッタは不愉快そうだった。それを見てクレマン様が小声でたしなめる。


「そう不機嫌になるな。人数が多い方が、君の負担が減る。そうすれば、バレる確率も低くなるとは思わないか?」


「それなら、ここはクレマン様達にお任せして、私はアンジェリーク様と共に先にお屋敷に戻りたいところです」


「それは困るな。私もそろそろ体力の限界だ。老いには勝てんよ」


「私だって、終わるまで帰らないわよ」


「……そうですか。わかりました」


 ロゼッタが渋々剣を構える。そして、「いくぞ!」というクレマン様の号令で、全員走り出した。


 相変わらず、クレマン様とロゼッタはバッサバッサとダークウルフを切り倒していく。


 でも、リザさんも負けてなくて、自分の身長よりも長い槍を手足のように自在に操っては敵を倒していた。どうやら手練れのようだ。


「すごいなぁ……」


 この三人の強さは別格だ。そう思っているのはどうやら私だけではないらしく、戦い終わった兵士や傭兵達が、三人の戦い方を見て感嘆の声を上げていた。


 目立ちたくないとか言ってたけど、バッチリ目立ってますよ、ロゼッタさん。


 みるみるうちにダークウルフの数は減り、残りはフライヤー三匹だけになる。その間、私の出る幕はなかった。


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