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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第三章 二人の王子と極悪令嬢

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兄妹設定で

 クレマン様が鎧や剣を身につけて玄関を出ると、そこには五十人くらいの人達が集まっていた。よく見ると、マティアスも強張った顔をして立っていた。


「我々はこれから、レインハルト殿下、ラインハルト殿下の救出に向かう。最近の魔物の多さからいって、けっして油断はできない。さらに、レインハルト殿下は深手を負っている。もはや一刻の猶予もない。本来なら君達を危険に晒したくはないが、私一人の力ではどうにもならない。だから、君達の力を借りたい」


「水くさいですよ、クレマン様!」


「我々は、クレマン様のお役に立てて光栄です!」


「ありがとう、みんな。みなの健闘を祈る。出発!」


『オォーー!』


 雄叫びがカルツィオーネの大地を震わす。そして、クレマン様の馬は走り出した。


 クレマン様の後ろには、エミリアがしがみついて乗っている。ここへの待機組以外の面々は、馬に乗れる者は馬で、そうでない者は走って向かうことになった。


「ロゼッタも馬に乗れるじゃない」


「ご冗談を。ここで馬に乗ってしまったら目立ってしまいます。それに、これはアンジェリーク様への良い訓練になるかと。持久力はあった方が断然有利です」


「わかってるわよ、そんなこと。こんなことになるなら、朝頑張って走るんじゃなかった」


 クレマン様の馬とダルクール男爵の馬は、もうはるか遠くになっている。これが貴族と平民との差か。


 はあ、と思わずため息をつく。すると、男爵が連れてきた傭兵の一人が、私の所へ近付いてきた。よく見ると、相手は女性だった。


「へえ、あんたも女性なんだね。めっずらしー」


「女性ってわかりますか?」


「そのフードからチラチラ見える髪を見たらね、さすがにわかるよ」


「はははっ、そうですよね」


 気のせいか、ロゼッタが顔を逸らして笑っているような気がする。こんにゃろう。


 男性用の服なので、ある程度ダボついているから、胸の膨らみはそんなにわからないだろうとは思っていたけど。まさか、そこでバレるとは思わなかった。忌々しい縦ロールめ。


「向こうの男は兄弟か?」


「はい、兄です。私は危険だから家で待ってろと言ったのですが。妹は言うことを聞かなくて」


「そうなの? どうりで足取りがおぼつかないわけだ」


 走り方一つで運動不足を見抜けるとは。確かに、今は短剣を腰に下げているから、ちょっと重くて動きは朝より鈍いけど。ロゼッタは私と違って長剣を腰に下げているのに、私より軽やかに走っている。その差も大いに関係しているのかもしれない。


 というか、やっぱりロゼッタは男に見えるんだ。しかも、兄妹設定とは。


「あなたは傭兵なんですよね? 長いんですか?」


「まあね。もう五年以上はやってるかな」


「おぉ。大先輩だ」


「そっちは?」


「私はまだ全然。最近になってやっと兄から剣を教わり始めたばかりで」


「お兄ちゃんに?」


「兄は昔魔法師団に入っていて。剣も魔法も得意なんです」


「へえ、そりゃどんな戦い方をするか楽しみだ」


 女性は興味津々といった様子で笑う。ロゼッタはというと、いつもの調子で相手にしないという感じだった。


「私は、リザっていうんだ。お互い頑張ろうな」


「はいっ」


 そう白い歯を見せて笑うと、リザさんは一つにまとめた髪を揺らしながら、集団の前の方へと走って行った。


「傭兵の中にも女性はいるのね」


「女性の場合は、剣士になれても、受け入れてくれる職場がほとんどありませんから。そういう人達は、大概実力主義の傭兵になることが多いようです」


「性差別だわ。許せん。落ち着いたらカルツィオーネで女性剣士も募集するよう、クレマン様に進言しよう。どうせ人手不足なんだし」


「ずいぶんと偉くなったものですね」


「提案するだけよ。それくらいいいでしょ」


「この話は、現場に着いてからにしましょう。どんどん遅れてますよ」


「……っ、わかってるわよ」


 そう反論する間にも、のろまな亀の私はどんどん抜かされていく。先頭集団の中には、ヘルマンさんとその息子のマティアスの姿があった。


「私が着く頃には、もう終わってたりして」


「なるほど。その手がありましたね」


 しまった。これでロゼッタは私の尻を叩かなくなる。これは本当にあり得るかもしれない。


「そんなことに、なって、たまるかぁっ」


 気力を振り絞り、私は前を行く集団を目指して走った。


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