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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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味方の参戦

「ノア、お前はアンジェリークの手当てを頼む」


「わかりました。でも、処置が終わったら僕も参戦します。じゃないと、はらわた煮え繰り返って気が狂いそう」


「ふん、その判断はお前に任せる」


そこまで言って、ラインハルト殿下は目の前にやってきた盗賊を剣で薙ぎ払った。それにギャレット様も続く。


「やっと暴れていいってさ。この時をずーっと待ってたよ。姫の痛みの分も大暴れしてきてあげるからね」


リザさんはそう言うと、襲いくる盗賊達をその槍で蹴散らし始めた。まるで鬱憤を晴らすかのような豪快な蹴散らし方に、ロゼッタがわざと大きなため息をつく。


「やれやれ、落ち着きのない人ですね。ですが、今回ばかりは私も賛成です」


枷の外れたロゼッタが、躊躇うことなく盗賊達の群れの中へと飛び込んでいく。そしてその後に続いてきたのは、血飛沫と彼らの醜い叫び声だった。


「に、逃げろー!」


四人の参戦に、男達は蜘蛛の子を散らすかのように逃げ始めた。出入り口から出ようとする者や、窓から逃げようとする者、それぞれバラバラに逃げていく。しかし、男達の足は途中で止まってしまった。


「シャ、シャルク軍が……っ」


残念ながら、建物全体をぐるりとシャルク軍が包囲している。建物内から人が出てきたことで、空いた扉から外にいるマルセル様の声が聞こえてきた。


「お前達は完全に包囲されている。抵抗しても無駄だ。お前達のせいで苦しんだ民の分の恨みと、ダルクール家の次期当主を襲った屈辱をここで晴らさせてもらう」


そして、マルセル様は高々と剣を掲げた。そしてそれを振り下ろす。


「一匹も逃すな。全員駆逐しろー!」


『オー!』


マルセル様の号令と共に、兵士達が一斉に盗賊達へと向かっていく。その統率された無駄のない動きに、盗賊達はなす術なく次々と倒れていく。


「お父様カッコいいな。いつか僕もあれやってみたい」


ノアが、私の左太ももに包帯を巻きながらそう呟く。彼は非常に手際がよく、折れた指も枕木を当てて素早く包帯で巻いて固定していたし、太ももの方も傷薬か何かを塗った後、ガーゼを当てて素早く包帯で巻き始めていた。


「ノア、似合わなさそう……」


「失礼な。僕だって男だよ。やる時はやるんだから」


「そうだね……今のあんた、ちょっと、カッコいい、かも」


「へっ!?」


動揺したノアの手が狂い、手から離れた包帯がコロコロと床を転がっていく。その時、ノアの背後から盗賊が現れた。しかし、咄嗟に声が出ない。彼はまったく気付いていないらしい。


「そ、それってさ、つまりは、その……僕のこと少しは意識してくれてるってこと?」


意識? なんのことだろう。それよりも、早く後ろに気付いて。


危ない! しかし、私がそう伝える前にグエンがそいつを殴り飛ばした。男は軽々吹っ飛び、近くにいた別の男に当たって二人とも倒れ込む。


「油断大敵」


「ゆ、油断なんかしてないよ。今のくらい僕にだって対処できたし」


「ふーん」


「なんだよ、その顔っ」


ノアのツッコミを、グエンは無視して落ちていた剣を拾う。彼が手にすると、それはオモチャのように見えた。


「ありがとう、グエン……」


「俺はあんたの私兵。ボス守るの当然」


「そっか」


グエンはそのまま、私達のいる周辺に留まり、襲いかかってくる敵から守り始めた。彼は律儀な人らしい。


「また私兵増やしたの?」


「なんというか、流れで……」


「まったく、君の周りにはよく人が集まるよね……特に男が」


言ってる意味がわからず首を僅かに傾げる。しかし、ノアは答えないまま包帯を巻き始めた。そんな私達二人に向かって、一人の男がものすごい勢いで襲ってくる。


「アンジェリークゥぁぁ!」


それはジェスだった。その目は怒りに血走っている。そのただならぬ様子に、危険だと判断したノアが咄嗟に私の前に出た。そして、腰に下げていた剣の柄に手をかけ構える。


しかし、彼の間合いに入る前に、殿下がジェスのナイフを食い止めた。


「テメェ、また邪魔しやがって……っ」


「俺はあいつの護衛だって言っただろうが。何度も言わすな」


「クソが!」


ジェスの怒りは収まらない。そのままナイフを怒りに任せて振り回す。


「アンジェリーク! お前何しやがった。何しやがったんだ、あぁ!?」


ジェスの攻撃を防いでいた殿下が、一度剣で大きく薙ぎ払い、二人の間に距離ができる。そして、彼はニヤリと笑った。


「そんなに知りたいなら、俺が教えてやるよ。この悪女の悪知恵を」


悪知恵とは失礼な。いや、間違っていないのか。そんなことを心の中でツッコミつつ、私は昨日のことを思い出していた。


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