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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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突撃した部屋の中

「トマ、イザック。悪いがここの護衛を頼む」


『ガッテン、兄貴!』


「レオナード?」


「戦闘で腕の力が弱まってる。だから弓を引く力が弱くて飛ばねーんだ」


そう言うと、彼は私の弓と矢を持つ手に自身の手を重ねた。そして、矢を弦に掛けて思い切り引っ張る。


「俺が手伝ってやる。だから、ボスは狙いを定めろ」


「あんたは弓の心得があるの?」


「ちょっとはな。ってか、しゃべってないで集中しろ。トマやイザックだって大怪我してんだ。そんなに長くは持たねぇぞ」


「確かに」


私が笑うとレオナードもつられて鼻で笑った。


ジェスとロゼッタは相変わらず動き回っている。下手をしたらロゼッタに当たりかねない。


いや、大丈夫。彼女なら矢が飛んできてもかわせるはず。落ち着け、私。相手に当たらなくてもいい。ただ、気を逸らせればいいんだから。


(大丈夫、あなた様ならできます)


そんなロゼッタの声が聞こえた気がした。


ジェスに狙いを定めて、レオナードと二人矢から手を離す。矢は綺麗な弧を描いて、そしてジェスの左肩を掠めていった。


「できた!」


「よしっ」


あまりに嬉しくて、ガッツポーズの後レオナードと顔を合わせてハイタッチした。ジェスは「いてっ」と左肩を押さえて呻く。その後で弓矢が来た方を睨みつけた。


「またてめぇか、アンジェリーク!」


「そうだけど。あんた、こっちを見てる余裕あるの?」


「あぁ!?」


睨んだ直後、彼の目の前にはもうロゼッタが迫っていた。


「よそ見は大敵ですよ」


ロゼッタは容赦なくジェスの首めがけてナイフを振るう。彼は辛うじて避けたものの、狭い階段の上だったのでバランスを崩した。ロゼッタはそのチャンスを見逃さず、相手の背後に回って蹴りを喰らわせた。


「うぉわっ」


ジェスは完全にバランスを崩して、後ろから階段を登ってきていた連中ごと巻き込んで落ちていく。ふいにロゼッタと目が合ったので親指を立ててみせると、彼女は呆れるでもなく頷いてくれた。よくやったと。


「よし、今がチャンスよ!」


用済みの弓矢を放り投げて、ロゼッタの元へと走っていく。途中、倒れたジェスとすれ違った。


「てめぇ……待ちやがれっ」


「待てと言われて待つバカはいないのよ」


 そう口の端を上げた後、彼を無視してロゼッタの元へと駆けつける。そして、背後から襲ってきた盗賊は、ロゼッタがしっかりナイフで蹴散らしてくれた。


「まさか、弓をお使いになられるとは思いませんでした」


「緊急事態だったからね。それに、あなたのために何かしたかったから。成功して良かった」


「……相変わらず、あなた様は人たらしですね」


「そうかもね。あ、でも後でレオナードにはお礼言っとこう」


 そこまで言って、一旦ロゼッタと顔を見合わせた。


「行きましょうか」


「ええ」


 二人して同時に階段を駆け上がる。目指すは、首領のいる二階の部屋。あいつさえ叩けば、常闇のドラゴンを壊滅できるはず。


「野郎ども、あいつらを止めろ! 首領のとこにはぜってー行かせんなっ」


 ジェスの怒号が背後で聞こえる。それでも、こっちの方が早い。


 階段を登り切ると、真っ直ぐ先に一つの扉が見えた。その周りには何人かの盗賊がいて、突然現れた私達に驚きつつも身構える。それでも、今の勢いづいた私達の敵ではなく、そいつらはあっという間に二人で蹴散らした。


「ここに首領が……」


「おそらく」


 ゆっくりとドアノブに手をかける。そして、一度ロゼッタと目を見合わせた後、その扉を勢いよく開けて中に入った。


 今まで散々お父様やカルツィオーネの人達を苦しめてきた常闇のドラゴンの首領を、やっとこの手で倒すことができる。私の負った深い心の傷を癒すことができる。この首領さえ討てば。


「え……」


「これは……」


 突撃した部屋の中。しかし、そこに首領の姿はなかった。それどころか、中はもぬけの殻だった。


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