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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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私の邪魔しないで

「チッ、どいつもこいつも使えねぇな。だったら俺がやってやるよ!」


ついにジェスが自ら動いた。ナイフを両手に掲げ、迫り来るロゼッタに向かっていく。彼女もジェスに気付いて身構えた。そしてお互いのナイフが交わり、金属同士がぶつかる鈍い音が響く。


「暗殺者だかなんだか知らねえが、今のお前は子ども。俺がぶっ殺してやる」


「やれるものならどうぞ」


冷淡なロゼッタの声。それを跳ね除けるように、上段にいるジェスが力任せにロゼッタを振り払った。彼女は僅かにバランスを崩すも、すぐさま立て直しジェスへと向かおうとする。


その時背後から盗賊の一人が剣を向けてきた。しかし、ロゼッタはまるで後ろに目でもあるかのように、振り向くこともせず正確に相手の攻撃をかわして、なおかつ左太ももにナイフを突き立てる。そして、それをチャンスとばかりに襲いかかってきたジェスのナイフを、何食わぬ顔で再び軽やかに避けていた。隙があれば反撃しているくらいだ。


「相変わらず、うちの護衛の戦闘能力は半端ないわね。あの姿で盗賊達と互角にやり合えるなんて。つくづく味方で良かった」


「同感」


「あんなのと戦いたくはねぇな。命がいくつあっても足りねぇ」


そんなことを言い合いつつ、三人は盗賊達を蹴散らしながらロゼッタへと向かう。半分以上はロゼッタが持っていってくれたから、蹴散らすのが大分楽になった。


「オラオラァ! 人類最強なんてそんなもんかよ」


ジェスの挑発にロゼッタは応えない。ただ淡々と毒の付いたナイフをかわしては、隙をついて反撃している。ただ、ジェスに加勢してくる連中が鬱陶しそうだった。


子どもの姿であれが限界というのもありそうだけれど、彼女の場合そうじゃないような気がする。もしかしたらチャンスを伺っているのかも。


「何か……」


ジェスの気を逸らすことはできないだろうか。一瞬でもいい、それさえできれば彼女ならなんとかできるはず。


ロゼッタのおかげで、階段まではもうちょっと。でも、ただ加勢にいくだけじゃかえって彼女の邪魔になりかねない。いったいどうしたものか。


そんなことを考えながら進んでいると、ふいに何かに躓いて転んでしまった。


「いててててっ……」


「おいおい、大丈夫か?」


「大丈夫、問題ないわ」


そう答えつつ起き上がった私の目に飛び込んできたのは、弓矢を背負って倒れている弓使いだった。その近くには無傷の弓も転がっている。それを見て閃いた。


「こうなったら一か八か……っ」


弓を拾って矢を手に取る。そして、矢を弦に掛け思いっきり引っ張った。狙うはもちろんジェス。


「なんだ、ボスは弓も使えんのか」


「いいえ、初めて触るわ」


「はあ!?」


「ボスドリル、無謀」


「そんなことわかってんの。いいから、あんた達はつべこべ言わずに私を守る」


弓矢を触るなんて、前世の弓道部の体験入部以来だ。基本的な動作は教わったけど、たった一日でマスターできるわけがない。初めのうちは飛ぶことすら困難で、ようやく前へ飛び始めたのは体験入部の終わり頃。それ以降は自分には向いていないと諦め触っていない。


案の定、一本目は飛ぶこともなく真下に落ちた。


「おいおい、弓矢はどこだぁ?」


「お嬢様に扱えるわけねーだろ」


周囲の盗賊達から失笑が漏れる。それでも、私はめげずに二本目を手に取った。しかし、それもやはり飛ばずにしおしおと落ちていく。そして、三本目を手にしたところで、レオナードが矢を持つ私の手首を掴んだ。


「もうやめとけって。そんなすぐできるわけねーんだから。今のこの状況考えたら、そんな悠長に弓の練習なんかしてる場合じゃねーだろ」


「そんなのわかってるわよ! でも、もはやできるできないの問題じゃないの。やるしかないの。悔しいけど、今この状況で私がロゼッタのためにできることは、これくらいのことしかないんだから。だったら、つべこべ言わずにやる」


「だからって……」


「自分には何もできないって、指を咥えて見てるだけの人生はもうごめんよ。それで死ぬくらいなら、百回でも千回でも失敗して笑われてやるわ。だからお願い、私の邪魔しないで」


強い意思を込めてレオナードを睨みつける。そして、弓を握る手に力を込めた。


レオナードの判断は正しい。グエンの無謀だという意見も間違っていない。それはわかっている。それでも、どうしてだろう、自分ならできると信じてあげたい。私だってロゼッタの力になれるんだって、そう思いたい。こんな状況だからこそ、みんなに甘えるだけの自分でいたくないのだ。


しばらく私とレオナードの視線がぶつかり合う。それでも、頑として譲らない私を見て、彼は大きなため息をついた。


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