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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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覚悟を問う

「俺も……弟達も助けてくれ! あいつらは俺の唯一の家族なんだ。だから、あいつらを助けてくれるなら、俺はなんだってする」


「なんでも? 本当に?」


「ああ、ほんとだ」


 リーゼント男と私の瞳がぶつかり合う。グエンの時とは対照的に、私は冷めた態度で彼に近付いた。彼らには、未遂とはいえ襲われそうになった前科がある。


「じゃあ、あなたの弟達を助けてあげる代わりに、一生私の奴隷になりなさい」


「ど、奴隷……!?」


「私は、常闇のドラゴンを壊滅するために自分の命を懸けるの。それに対する対価としては安いものだと思うけど?」


「それは……っ」


「女性や子どもは襲わない。それがあなたのポリシーだったわね。でも、奴隷にはそんなもの必要ない。私が女性や子どもも殺せと命令したら、あなたそれに従える?」


 これは覚悟の問題だ。私は、自身の命を餌にしてでも、常闇のドラゴンと対峙する覚悟がある。それに見合うほどの覚悟を持てるのか。聞きたいのはそこだ。答え次第では無視しても構わないと本気で思っている。


 男はすぐには答えない。まるで究極の選択を迫られているようだ。その顔が苦悩に歪んでいる。


 なんだ、その程度か。なら、この話はなかったことにしよう。そう思っていたその時。


「……いいぜ」


「え?」


「一生あんたの奴隷になってやる。だから弟達を助けてくれ」


「本当にいいの? あなたのポリシー曲げられる?」


「弟達のためなら曲げてやる。俺ゃ元々善人じゃねーんだ。唯一の家族守るためなら、極悪令嬢にだって魂売ってやるよ」


 覚悟を決めた人間がする目と表情。これは本気で覚悟を決めた証だ。守りたい何かのためなら、悪魔に魂をうることも辞さない、か。だが、そうでなければ助け甲斐がない。私の唇は器用に上がっていた。


「いいわ。あなたの覚悟受け取った。弟達もついでに助けてあげる」


「ほんとか!?」


「ええ。その代わり、約束破ったら三人まとめて死刑にするから。肝に銘じておくことね」


「安心しろ、俺は約束を守る男だ」


「どうだか」


 話が終わったと感じたのか、お父様達が部屋の中へと入っていく。そして、お父様はグエンが落とした大剣を拾い、念のためなのか彼から遠ざけた。


 一息つく私に、ラインハルト殿下が近付いてくる。


「お前はまた面倒なことを引き受けたな」


「どうせ壊滅させるんです。今さら約束の一つや二つ変わりませんよ」


「まあ、お前らしいっちゃらしいが」


 そう言って殿下は苦笑する。その後ろでニール様が険しい顔をしていた。


「それで、これからどうする?」


「どうするもこうするも、これは願ってもないチャンスです。これを生かさない手はありません」


「生かすって……お前は何をする気だ」


 そのニール様の問いにはすぐに答えず、私は一度グエンとリーゼント男を振り返った。


「あなた達、私を連れて来いって言われたみたいだけど。連れて来る場所の指定はあったんでしょ?」


「ああ」


「とりあえず、捕まえたらここに連れて来い、って言われた場所はある」


「ということは、そこに彼らが潜伏している可能性が高いということです」


「まさか、わざと捕まって奴らの居場所を特定するつもりか?」


「そのまさかです。これ以上に良い方法が?」


 みんなに問いかけるように見渡す。しかし、誰もすぐには答えられないようだった。当たり前か、打つ手はもうこれくらいしかないのだから。


「確かに、その作戦しかないかもな。だが、前にも言ったようにお前の命の保証はない。それでもやるか?」


「愚問ですね。何度も同じこと言わせないでください」


「そうか……」


「大丈夫ですよ、安心してください。ちゃんと保険はかけておきますから」


「保険?」


 眉間にシワを寄せる面々を無視して、私の視線はロゼッタへと移動した。


「ねえ、ロゼッタ。あなた私のために死ねる?」


 静かに、それでいて淀みなくそう問いかける。彼女は驚いたという風に目を見開いた。ただ、それはほんの一瞬の出来事で。ロゼッタの顔がみるみるいつものポーカーフェイスに戻っていく。そして、強く、はっきりとした口調でこう答えた。


「はい。もちろんです」


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