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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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ルイーズを焚きつける悪女

 薪を集めに行くかと子ども達に声をかけると、彼らは「行くー!」と元気いっぱいに手を挙げてついて来てくれた。たぶん、みんなもご飯ができるまで暇だったんだろう。ちょうどいい暇つぶしができてみんな大喜びだ。


「ジルとルイーズも来て。みんなのお守り兼護衛として」


「え、でも……」


「ココットさん、ルイーズ借りてもいいですよね?」


「ああ、いいよ。こっちはなんとかなるから、いっぱい薪集めてきておくれ」


「だって。ほら、子ども達が待てないみたいだから行くよ」


「わ、わかりました」


「ほらジルも」


「う、うん」


 相変わらず、二人は微妙な距離を空けて歩いている。そんな中、子ども達と一緒にエミリアとレインハルト殿下も、子ども達のお守り役としてついて来てくれていた。


「やっぱり、孤児院の周りもけっこう燃えてるね」


「孤児院自体も半焼してましたから。本当に間に合って良かったです」


 孤児院の周りは、半分燃えて半分は残ったという感じ。子ども達は慣れた様子で、孤児院の周りの小枝なんかを集めている。中には共働きの親から預かっている子もいて、そういう子達にどこで取れるか教えたりもしていた。


「あんま遠く行っちゃダメよ。まだダークウルフが残ってるかもしれないから」


『はーい』


「……って、返事してるけど、基本みんな自由だから。ジルとルイーズは子ども達見てて。遠くへ行きそうならダメだよって声かけて止めて。ほんとに危ないから」


『わかりました』


 そう返事を返した後、二人は離れてそれぞれ子ども達の所へと向かう。そんな二人の姿を見ながら、私はやれやれと腰に手を当てた。


「あの二人もどうしたもんかね」


「ほっとけば? 子どもなんだし、時間が経てば元通りに戻るって」


「子どもとはいえ、そんな単純なものではありません。彼らなりに悩むことだってある。ですが、ギャレット様のように強制的に干渉するのも何か違うような気がします」


「そうなのよね。そこが難しいところなのよ。べつに二人はケンカしたわけじゃないし、仲違いしたわけでもない。でも、ちょっとギクシャクする。これってどうしたらいいの?」


『さあ』


 ロゼッタとリザさんの声がハモる。二人を責める気になれないのは、私も答えがわからないから。


 ルイーズの魔法の暴走は、どちらが悪いわけでもない。強いて言うなら、ロイヤー子爵が悪い。ただ、そう言ったところで二人が納得しないのもわかっている。


「このままでは本当にマズイですね。何か早く手を打たないと……」


 ロゼッタの呟きが森に落ちる。その時、子ども達の緊迫した声が聞こえてきた。


「あれ? ニーナは?」


「ほんとだ、どこにもいない」


「さっきまでここにいたのに」


 思わず周囲を見渡す。確かにニーナの姿はどこにも見当たらなかった。数人の子が近くにいたジルを捕まえる。


「ねえ、ジル。ニーナがいなくなっちゃった。どうしよう」


「危ないんだよね?」


「もし魔物に見つかっちゃったら……」


「大丈夫だ。俺に任せろ」


 ジルがお兄さんの顔つきになる。そして、子ども達を安心させるように微笑んだ。


「俺がニーナを探してくるから、お前達はここで待ってろ。動くんじゃないぞ」


「でも……」


「俺はアンジェリーク様の私兵だ。ダークウルフももう何匹も倒してる。だから安心しろ」


 そこまで言った後、ジルは私へと声をかけた。


「アンジェリーク様、俺がニーナを探してきます」


「わかった。ここにいる子達の安全を確保しなくちゃいけないから、私は一緒に行けない。だから頼んだわよ」


「はい!」


 ジルは敬礼した後、すぐさまニーナを探しに孤児院とは反対の方向へ駆けていった。そんなジルの姿を、ルイーズが不安げに見つめている。


「ねえ、姫。一人で行かせて良かったの? 私もついて行こうか?」


「ダメです。もしリザさんが抜けた後でダークウルフに囲まれでもしたら子ども達が危険です。それだけは絶対に避けなければいけない」


「しかし、ジル一人だけで探すのは大変ではないですか? もしダークウルフに襲われた時、彼はニーナを守りながら一人で戦えるかどうか」


「それも折り込み済みで彼は行くと手を挙げたんでしょう。だったら、今はそれを信じるしかないわね」


「でもさ、もしそれで死んだら?」


「そしたらその時です。お墓くらいは作ってあげますよ」


「うわ、ひどい」


 リザさんが両手で自身の身体を抱きしめながら、わざと身体を震わせる。その時、「あのっ」とルイーズが声をあげた。


「私も行きます。一人より二人で探す方が見つかる可能性も高いですし、ジル一人だけだと心配ですから」


「そう? じゃあお願い」


 そう言うやいなや、ルイーズはジルを追いかけるように慌てて走っていった。そんな彼女の様子を見て息を吐く私に、ロゼッタとリザさんがつつつっと顔を近付ける。


「姫ってやっぱり悪女だね。ジルを一人で行かせたの、あれわざとでしょ?」


「そうですけど」


「ルイーズを焚きつけるためとはいえ、あまり良い案とは思えませんね」


「いいのよ、あれくらい危機感煽らないと。そうでもしないとルイーズは動かなさそうだったし」


「まあ、ダルクール家の隠れ家で魔物と盗賊に襲われた時もなんとか助かったんだもんね。一人は魔法が使えるし。大丈夫か」


「荒療治ではありますが、クレマン様達がほとんどダークウルフを倒してくださっていますし。襲われる可能性は低いでしょう。二人に任せますか」


「そうしよう。じゃあ、薪集めようか」


 二人が頷いたのを確認して、子ども達と一緒に薪を集める。しばらくすると、ジルとルイーズとニーナが燃えた森の方から歩いて戻ってきた。ただ、ジルとルイーズの顔は険しい。


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