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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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続々参戦

「姉妹の移送に関しては、今すぐに決めるのは難しいかと思われます。また後日でもよろしいかと」


異議なし、とみんな頷いた。


「今喫緊の課題は、常闇のドラゴンでしょう。市民権を求めてたくさんの元盗賊や市民権の無い貧しい者達がカルツィオーネに集まってきています。加えて、連日の襲撃で向こうの戦力もかなり落ちている。さらに、向こうはアンジェリークに固執するあまり冷静さを欠き始めた。叩くなら今が絶好のチャンスかもしれません」


ニール様の考察に、しかしラインハルト殿下が待ったをかける。


「おい、ちょっと待てよ。ロイヤー子爵はどうすんだ。向こうは軍を動かし始めたんだぞ。このままほっといたらヤバいだろ」


「確かにその通りです。ですが、両方を相手にするのは分が悪い。ですから、今は両方を相手にするより、より勝率の高い方を先に叩く方がよろしいかと」


「ニール様の言う通りですね。ロイヤー子爵は盗賊を隠れ蓑にして襲撃事件を繰り返している。であるならば、その大元である常闇のドラゴンを先にぶっ潰せば、少なくとも簡単に事を起こすことは難しくなる」


「そういうことだ」


私の追加解説にニール様が頷く。こういう時の考え方は一緒らしい。


「自警団員は集まりそうなんですか?」


「みんな常闇のドラゴンには手を焼いていたからな。クレマン様が本気で討伐に乗り出すのならと集まりは悪くない。ただ、それでも盗賊の数に比べたら人数的にまだ少し厳しい状態だ」


「そうですか」


さすが過疎地カルツィオーネ。そう簡単に大勢は集まらないか。いや、それでもニール様が集まりは悪くないというのなら、普段よりも結構な数が集まっているのかもしれない。みんなも本気で常闇のドラゴンをなんとかしたいんだ。


「国王軍も貸すぞ」


そう提案したのは、ラインハルト殿下だった。ギャレット様もレインハルト殿下も異論なしと頷く。


「殿下達が二度も襲われたのです。十分動員する理由になります」


「それに、俺達が襲われたとあってみんなの士気も高い。是非協力させてくれ」


「ありがとうございます、ラインハルト殿下、レインハルト殿下。我々にとっては願ってもないお申し出です。ありがたくお借りいたします」


「我々国王軍も、直接クレマン様の指揮に触れる貴重な機会をいただけて光栄です。是非ご一緒に戦わせてください」


「ありがとう、ギャレット。共に殿下とカルツィオーネのために戦おう」


「はっ!」


軍神にそう言われ、ギャレット様は座ったままで敬礼する。その顔はどこか誇らしそうだ。普段なら暑苦しいとツッコむところだけど、今回ばかりはその軍人気質が頼もしい。


ギャレット様に触発されたからだろうか。マルセル様も後に続く。


「我々もご一緒します」


「いいのか? 常闇のドラゴンはロイヤー子爵と繋がっている。事を構えれば、下手をすればカルツィオーネだけでなく、シャルクとヘルツィーオの争いに発展しかねない」


「それも覚悟の上です。殿下方にも申し上げましたが。ダルクール家の次期当主が襲われたのです。現当主として、これを見過ごしては末代までの恥。どうぞクレマン様と共に常闇のドラゴン壊滅に向けて戦わせてください」


「僕からもお願いします。エマやイネスを騙して、幼い子どもの心を弄ぶなんて許せません。僕も一緒に戦わせてください」


マルセル様だけでなく、争い事が嫌いなノアまで頭を下げる。すると、お父様が一段と顔を引き締めた。


「常闇のドラゴン掃討作戦では、かなりの危険が伴う。今回の襲撃事件よりもさらに激しい戦いになるだろう。それでも共に戦う覚悟はあるか?」


「はい、あります!」


今まで見たこともないくらいのノアの凛々しい姿に、思わずドキっとした。普段からそれくらいしっかりしていれば、もっとモテるだろうに。でも、それだけ彼も今回の戦いには本気だということだろう。

お父様も彼の覚悟を感じ取ったらしい。マルセル様に目配せした後で一度小さく頷いた。


「君の覚悟は受け取った。共に戦おう」


「ありがとうございます!」


ノアの顔が明るくなる。人に認めてもらえた気がして嬉しいのかもしれない。内容的にはあまり素直に喜べないけれど。それでも本人がそれで良いというのなら、私がとやかく言うことではない。


ふう、と息をつく。すると、リザさんが小声で「姫、姫!」と私を呼んだ。目が合うと、人差し指で自分の顔を差す。なるほど、自分のこともみんなに伝えてくれ、と言いたいらしい。


「ニール様、今回の常闇のドラゴン掃討作戦に、リザという傭兵を加えたいと思うのですが。よろしいですか?」


「彼女を?」


「はい。リザさんは傭兵としてとても優秀ですし、先ほどの襲撃事件でも大変助けてもらいました。きっと、彼女一人で百人分の働きはしてくれると思います」


「違うよ、姫。千人分だ」


そう言って、リザさんはニシシっと笑う。隣でロゼッタが呆れたというようにため息をついていた。


「前にも言ったが、今回の一連の件に関しては傭兵を雇うことも厭わない。雇いたいなら雇え。費用はこちらで払う」


「ありがとうございます」


「それで。彼女はお前の護衛にするのか?」


「違います。リザはただの討伐隊の一人として雇われるだけです。アンジェリーク様の護衛は変わらずこの私が務めます」


そう私の代わりに答えてくれたのはロゼッタだった。すると、リザさんも負けじとしゃべりだす。


「私は護衛でも構わないんですけどねぇ。一度そこの暗殺者に泣いて頼まれて、姫……アンジェリーク様の護衛も務めましたし」


「あれは気の迷いですし、泣いてもいません。結果断られているのですから、あなたにアンジェリーク様の護衛は無理です。諦めていち傭兵として働きなさい」


「あんたに命令される筋合いないんだけど。そっちこそ間抜けにもコドモダケの瘴気浴びて弱々チビ助になってんだから、姫のこと考えたら私に護衛任せるのが一番安全でしょが。未練ったらしくしがみ付いてんなよ、このヘナチョコ」


「あなたこそ、アンジェリーク様にはっきりと断られたのですから、いい加減諦めなさい。未練たらしくてみっともない」


「あぁ? なんだやんのか?」


「そんなに死にたいのなら、そうして差し上げますが?」


お互い殺意を込めて睨み合う。すると、それまで我慢していたニール様が限界をむかえた。


「いい加減にしないか! ここには両殿下やクレマン様やマルセル様もいるんだぞ。見苦しいものを見せるな」


しっかりと叱られている。本人達もその一喝で冷静さを取り戻したのか、『すみませんでした……』と謝ってしおしおと肩を萎ませていた。


「まったく。ロゼッタがあそこまでムキになるのも珍しいが。本当に雇って大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。顔を合わせれば空気を吸うようにケンカする二人ですが、ああ見えてお互いのことは信頼してるようですから。二人とも私のために働いてくれるはずです。ね? 二人とも」


そう二人に微笑みかける。すると、ロゼッタとリザさんはポリポリと頬を掻いた。


「私はリザがいようといまいと、アンジェリーク様をお守りするだけです。必ずやその信頼に応えてみせます」


「私だって、誰がいようが報酬分の仕事はきっちりしてみせるさ。それがプロってもんだからね。任せといてよ」


「二人とも期待してます」


そう言った後でニール様に目配せをする。ほら、大丈夫でしょ、と。彼は、ふんと鼻を鳴らして眼鏡の位置を正した。


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