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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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嫌な予感

「油断大敵だよ、軍人さん。僕だってやる時はやるんだからねっ」


 そう言って、勝利を確信したかのように、手にした剣を大きく振り上げる。


「よし、ノアの勝ちね」


「! いえ、まだです」


 ロゼッタが何かに気付く。そしてノアに向けて何かを伝えようとしたまさにその時。フードの男を縛っていた蔓が、見えない何かによってすべて切断されてしまった。


「え? いったい何が……」


「まだ来るよ。ノア様避けて!」


 リザさんがそう叫ぶ。すると、二つの風の刄がノアに襲いかかっていた。


「風!?」


 一つは咄嗟に剣で防ぐ。ただもう一つは、かわすのが精一杯で、その際避けきれなかった風がノアの左腕を掠めていった。


「っつー……」


「ノア様、後ろです!」


 今度はロゼッタの叫びにノアが「え?」と呟く。彼の背後には自由になったフード男が、剣を構えて立っていた。その攻撃を、ノアは間一髪で避けて男と少し距離を取る。


「あ、危なかった……。リザさん、ロゼッタさん、ありがとう」


「お礼を言うのはそいつに勝ってからだよ、ノア様」


「もし勝てば、アンジェリーク様がコドモダケを貸してくださるそうです。そうですよね、アンジェリーク様」


 私は最初、「え?」と呟く。それでも、ロゼッタが肯定しろと目配せしてきたので、思わず頷いた。


「そ、そうよ。そいつに見事勝利したら、コドモダケ一週間は貸してあげる。だから頑張りなさい」


「一週間も!? 僕めっちゃ頑張るっ」


 ノアにやる気とパワーがみなぎり、勢いよくフード男に突撃していく。見た限り、剣のスピードも上がっていて、その変わりように男が驚いていた。


「キノォー」


 コドモダケが不服そうに服の中で私に抗議する。私はごめんのポーズをして彼に謝った。


「今回は非常事態だからさ。大目に見てよ」


 そう説得してみる。それでも嫌がるかなーと思っていたけれど、コドモダケは意外にもすんなりと頷いた。ノアに慣れてきたのか、今日はそんな気分なのか、彼は結構気まぐれだ。


「ノアはこれでいいとして。やっぱりもう一人いたね、魔法師」


「しかも、あの正確さからしてたぶん軍人」


「あとは、居場所の特定ですが……」


 ロゼッタが、風が来た方へ視線を向ける。しかし、それらしい人物は見当たらない。


「こちらに勘づかれることを恐れて、すぐさま気配を消しているようです。なかなか面倒くさい相手ですね」


「また私が囮になろうか?」


「いや、無駄だろうね。もしこの雷使いのやられ方を向こうが見てたら、用心して近付いては来ないだろうし」


「基本、魔法師は後方支援に回ることが多いですから。さらに不用心には接近してこなくなるでしょう」


「でもさ、なーんかちょっとおかしくない? 奴らの狙いは、姉妹かエミリアだろ。なのになんで前衛である騎士達は、わざわざ面倒くさいダルクール親子に襲いかかっていったんだろ。倒すのに時間がかかる上に、自分もやられちゃうかもしんないのにさ」


「二人がいたら姉妹を狙うのに邪魔だったからじゃなんですか?」


「もしそうなら、魔法師を使って二人を撹乱し、姉妹から引き離した方が任務もやりやすいはずです。それなのに、こんな自ら囮になるような戦い方をするなんて……」


「じゃあ、その魔法師に姉妹を襲わせるため、とか?」


「だったらもうとっくにやってるでしょ。今彼女達を主に護衛してんのは、姫の私兵である孤児二人。いくら一人は魔力が強くても、戦闘経験の浅い彼女なら軍人の相手じゃないと思うし」


「それもそうですね……って、ちょっと待ってください。どうしてリザさんはルイーズが魔法を使えるって知ってるんですか? 教えたことないですよね?」


「んなもん、傭兵としてあちこち行き来してたら、そんな噂くらい耳に入るよ。昨日も兵士達が、土魔法を使うアンジェリーク様んとこの孤児の女の子が、爆発の跡を見事全部元通りにしてたって騒いでたし」


「ああ、なるほど」


「それに、山火事の時の大規模な地震は、彼女の魔力が暴走したからなんだろ? 地震なんて滅多に起きないから、シャルクやヘルツィーオにまで噂は流れてたよ。その暴走のおかげで犠牲者も多数出たとか。あれ本当?」


「地震は確かに彼女の魔力が暴走したからですが、犠牲者はせいぜいダークウルフとロゼッタくらいです」


「は? 何あんた食らってたの? ダッサー」


「油断していたアンジェリーク様を庇った時に負ったのです。あれは私のせいではありません」


「ふーん。じゃまあ良かったよね。もしそれで殿下達に被害が及んでたらあの子重罪だもん。暗殺者一人の被害で済んだんなら良かった、良かった」


「はははっ、もう変なこと言わないでくださいよ、リザさん……」


 そこまで言い終えて、ふと違和感を覚えた。いや、違う。これは嫌な予感だ。


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