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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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エミリア包囲網

「では、この話はもう終わりにしよう」


「ちょ、ちょっと待ってください。本当によろしいのですか? そんな寛大な処置をしていただいても」


 エマは戸惑っている。もうすっかり死刑になると思ってたのに、罪が軽くなるかもしれないなんて。そんな風な顔だ。レインハルト殿下はというと、微笑み一発でそれを吹き飛ばした。


「いいんだよ、べつに。実際に襲われた俺がいいって言ってるんだ。気にすることはないよ」


「そうは言っても……」


「ただし、きちんと陛下の前でさっきの内容を話してほしい。ロイヤー子爵は許せないからね。それが条件だ」


「はい。それは必ずお話しすると約束します。本当に、本当に、ありがとうございました!」


 エマとイネスは深々と頭を下げる。その後でエミリアへと声をかけた。


「エミリア、あなたの言ってた通り、レインハルト殿下はとてもお優しい方だったわ。信じる力をくれてありがとう」


「そんな、私は何もしてないですから。お二人の想いが通じただけです」


「お礼に一つ忠告しておく。ロイヤー子爵には気を付けなさい。彼は紛れもなくあなたを狙ってる。回復魔法の使い手であるあなたを」


「それは……心得ています。愛人にしようとなさっているんですよね?」


「それならまだマシな方よ。ミレイア様を下心有りで狙っているのとは違って、あなたの場合は回復魔法の使い手を増やす種馬くらいにしか考えてないわ。だから、散々子どもを産ませた挙句、死ぬまで奴隷のように働かせかねない」


 エマの忠告に、エミリアが言葉を失う。取り乱さないようにはしているけれど、その顔には動揺が広がっていた。しかし、打って変わって鋭い目つきをしたレインハルト殿下がそんな彼女を励ます。


「エミリアはロイヤー子爵なんかには渡さない。絶対に。そうだろう? アンジェリーク」


「ええ、もちろんです。私の大切なものに手を出したらどうなるか、その身をもって知らしめてやりますよ」


「いよ、さすが極悪令嬢」


「ノア、うるさい」


 キッと睨むと、彼はわざとらしく両手を挙げて「おー怖い」とおどけてみせた。それでも、エマの表情は険しい。


「ふざけていると死ぬわよ」


「は?」


「逃げ回っている時、盗賊達の話を盗み聞きしたのよ。回復魔法の使い手を捕まえたら、子爵から賞金がもらえるぞ、って」


「エミリアにも賞金をかけたの!?」


「それだけじゃない。ヘルツィーオ軍も動き出しているから早くしないとあいつらに取られるぞ、とも言ってた」


「まさか、エマやエミリアを捕まえるために軍まで動かし始めたのか……」


 マルセル様の呟きが部屋に落ちる。もしそれが本当なら、とても厄介なことになってきた。


 盗賊達は武術については素人だ。だから、正直数が厄介なだけで訓練された我々の敵じゃない。


 しかし、軍は違う。日頃から訓練を続け、非常事態に備えている武術のスペシャリストだ。しかも盗賊と違って統率もとれている。個々で感情的に動かない分、盗賊よりも撃破するのが難しい。確かにエマの言う通り、気を抜いていると死んでしまうかもしれない。


 そんな思いがみんなの表情から漏れていたのだろう。とうとうエミリアは俯いてしまった。


 それでも、彼女の顔を上げさせたのはレインハルト殿下だった。


「盗賊だろうが、軍だろうが、エミリアは誰にも渡さない。この命に代えても俺が守る。絶対に」


 強い決意を込めた声だった。こんな意思の強い目をしたレインハルト殿下を見たのは初めてだったので、思わず胸に熱い何かが込み上げる。


 喜び、感動、誇らしさ。いち国民として、いち作者として、彼が存在することを誇りに思う。そんなことを思わせてしまう魅力が彼にはあった。思わず頬が緩む。


「殿下、もしかしてそれってプロポーズですか?」


「ぶっ」


 ちょうどハーブティーを飲もうとしていたレインハルト殿下は、私の言葉を聞いてはしたなく吹き出した。


「だって、誰にも渡さないとか、絶対守るとか。よくあるプロポーズの言葉だと思ったんですけど」


「アンジェリーク!」


「うわ、殿下顔真っ赤」


 クククっと笑うと、レインハルト殿下は怒ったような表情を見せる。しかし、ふいにエミリアと目が合うと、耐えられなくなったのか、ふいと顔を逸らした。


 そんな慌てふためくレインハルト殿下を見て、私と同じく笑い始めたのはラインハルト殿下だった。


「ははっ! レインハルトも極悪令嬢には敵わないか」


「ラインハルトまでからかうのはよしてくれ」


「いや、お前があんなに感情的になるのは珍しいんでな、ちょっと嬉しかったんだよ」


「そうか?」


「そうだ」


 クククっとラインハルト殿下は笑う。少し前まで不機嫌そのものだった彼が笑ったことで、一気に場が和み始めた。


「はい、はーい! 僕もエミリアを守るよ。なんたって君は、僕の命の恩人だからね。受けた恩は必ず返すのがダルクール家の家訓だよ。ね、お父様」


「ああ、そうだ。君も、そしてクレマン様も、必ず俺が守る」


「ノア様……マルセル様まで……」


「ちょっと、ちょっと。私のこと忘れないでよ。エミリアはヴィンセント家のメイドであり、私の私兵なんだから」


「私兵って……私をアンジェリーク様の私兵にしてくださるのですか!?」


「ええ、ここまで問題が発展してしまった以上、あなたをこのまま野放しにしておくことはできないからね。あなたを私の私兵として迎え入れて、守るべき強固な理由をロイヤー子爵に突きつけてやるわ」


「アンジェリーク様……」


「まあ、そうでなくても全力で守るけどね。ロイヤー子爵なんかの好きにはさせない。エミリアを好き放題こき使っていいのは私だけなんだから」


「アンジェリーク様らしい解釈の仕方ですね。ですが、私も同意見です。私の弟子である以上、あなたを守るのは師としての責務ですから。安心してください」


「ロゼッタさんまで……」


 みんながみんな、温かい眼差しでエミリアを見つめる。エミリアはというと、熱くなった目頭を必死に隠していた。


「私も負けません。ロイヤー子爵のものになんか絶対なりませんから。私も全力でみなさんと戦います」


「そうそう、そうこなくっちゃね」


 そうでなければ、主人公など務まらない。私が頭の中で育てた甲斐がない。せっかくレインハルトといい感じになってきたんだ。ロイヤー子爵なんかに物語の完結を邪魔されてたまるか。


「全員異論はないようだな」


 マルセル様がこの場を締め、全員がそれに頷く。その後でハーブティーに口付けると、もうそれは冷めていた。


皆様、いつも読んでくださりありがとうございます。


ついに話のストックが切れてしまいました……。


ここの話は焦って書くよりも、じっくり時間をかけて書きたいと思っているので、ワガママを言って誠に申し訳ありませんが、少しお休みさせていただきたいと思います。

期間は、9/6〜10/10まで。1ヶ月強のお休みとなります。自分の力不足です。本当にすみません……。


その代わりと言ってはなんですが、昔書いた作品を投稿したいと思います。

詳しくは、活動報告をご覧ください。


こんなダメ人間の私ですが、これからも読んでいただけると幸いです。

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