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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第五章 常闇のドラゴンVS極悪令嬢

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頭を冷やしなさい

「いい加減頭を冷やしなさい、この若造が。目的のためなら何をしてもいいというのなら、あんたもロイヤー子爵と同じじゃない」


「それはっ……」


「もし本気であんたが目的のためなら権力振りかざしてそんなことしてもいいと思ってんのなら、私はあんたを心の底から軽蔑する。二度と私の前に現れないで」


「…………っ」


 心底軽蔑した目で殿下を睨む。すると、わずかに彼は怯んだ。そんな私達の間に、すかさずギャレット様が割って入ってくる。


「貴様、殿下に対するその非礼を詫びろ。でなければここで斬り捨てる」


「やれるものならどうぞ。自分に歯向かう者は皆殺しにする、そんな独裁者が作る世界になど何の未練もありませんから」


「何を……っ」


「僕もアンジェリークの意見に賛成だね。彼女達からは悪意を感じない。いくら指示を受けて放火をしていたからって、そんな彼女達をみんなで寄ってたかって虐めるなんて紳士のすることじゃないよ。賊と一緒だ。僕は反対だね」


「ノア。お前まで……」


 マルセル様の呟きが部屋の中に落ちる。一触即発のムード。ジルとルイーズなんか、あまりの剣幕に身体を硬直させているくらいだ。そんな二人に申し訳ないとは思うけど、こっちだって譲れない。


 そうやってお互い睨み合う。そんな私達を止めたのは、穏やかな声をしたレインハルト殿下だった。


「ラインハルト、もういいよ」


「レインハルト……しかしっ」


「ラインハルトが俺のために怒ってくれてるのはわかってる。でも俺は、彼女達から無理矢理話を聞き出そうとは思わない」


「しかし殿下、いくら指示を受けただけとはいえ、あの二人のせいで殿下は瀕死の重傷を負ったのです。その経緯を聞く権利はあるかと」


「もちろん、どうしてそんなことをしなければならなかったのか知りたいとは思ってる。でも、拷問までして知りたいとは思わない。ノアが言うように、俺にも彼女達が悪人のようには見えないからね」


「あのっ! 俺もそう思います。あのエマっていう人、昨日の戦闘の時アンジェリーク様を守ってくれましたから。そんなに悪い人じゃないんじゃないかと」


「ジル、お前まで……」


 ギャレット様と目が合い、ジルは慌てて顔を逸らす。彼は彼なりにギャレット様の暴走を止めたいのかもしれない。ただ、ルイーズは少し違うようで。


「私もお二人のやり方には反対です。今のお二人は、師匠を追い詰めたあの時と雰囲気が似ています。実に不愉快です。あれ、今でも私許してませんから」


「ルイーズ、もう過ぎたことです。やめなさい」


 そうロゼッタに嗜められる。それでもルイーズは、黙ったまま二人を睨みつけていた。


 マルセル様は、両殿下の意見が割れたため、どうしたら良いかと思案している。ミレイア様はというと、自分は口を挟むべきではないと判断したのか、ただ事の成り行きを静観していた。


「お二人のやり方に反対している人の方が多いようですが。民主主義的にいけば、多数決で我々の意見の勝ちになります。何より、死ぬほどの恐怖体験をした当事者であるレインハルト殿下やジルやルイーズまでもが反対している。それでもお二人は、自分達のやり方を貫きますか?」


「それは……」


「はっきり答えなさい、ラインハルト」


 強めに問いただす。すると、ついにラインハルト殿下が折れた。


「……悪かった。強引な取り調べはしない」


「殿下っ」


 そのまま、ラインハルト殿下は舌打ちしながらドアから離れる。そして反対側の窓際まで来ると、不服そうに腕を組んで寄りかかった。そんな彼の様子を見て、レインハルト殿下が苦笑する。


「悪かった、アンジェリーク。ラインハルトも悪気があってあんな強引な真似をしたわけじゃないんだ。すべては、あの時死にかけた俺のため。だからどうか、俺に免じて許してやってほしい」


 この通りだ、とレインハルト殿下は頭を下げる。双子なのにこうも性格が違うとは。足してニで割れば丁度いいのに。


「べつにレインハルト殿下が謝る必要はありません。悪いのはラインハルト殿下ですから」


 嫌味で言うと、ラインハルト殿下が気まずそうに舌打ちした。抗議したつもりだろうが、今の私には効かない。無視しよう。


「しかし、イネスの体調の回復を待ってたら話を聞くのがいつになるかわからないぞ」


「大丈夫だよ、お父様。こっちにはコドモダケの抜け殻があるから。アンジェリークの麻痺を治したくらいです。きっとイネスの病気も治るはず」


「とかなんとか言って。ほんとは治るかどうか実験したいだけなんじゃないの?」


「ち、違うよ! 確かに効くのかどうか興味はあるけど、純粋にイネスに早く良くなってほしいだけだよ。彼女苦しそうだったし」


 ノアの表情が苦しそうに歪む。そういうところからも彼の優しさを感じた。


「じゃあ、早くそれ飲んで良くなってもらいましょう。明日には薬は完成するんでしょ?」


「まあね。薬といっても、抜け殻を細かく刻むだけだけど。本当は乾燥させて粉々に砕いて飲みやすいよう粉末状にしたかったんだけど。つい勢いで明日には完成するって豪語しちゃったからね。イネスには悪いけど、ちょっと飲みにくいの我慢してもらわなきゃ」


「あれ、死ぬほど苦いからね。そこも考慮して作ってあげてよ」


「もちろんだよ。任せて」


 ノアが親指を立てて笑う。どうやら任せても大丈夫なようだ。


「では、エマとイネスの二人から話を聞くのは、イネスの体調がよくなってから、というこで」


 確認と殿下達に釘を刺す意味も込めて、改めて念を押す。ラインハルト殿下の舌打ちがまた聞こえた気がした。


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