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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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嬉し泣き(ロ)

「あーあ、みんな行っちゃったね」


「そうですね」


「ちゃんと反省しなよ? あと、ルイーズにきちんとお礼言うこと」


「もちろんです。ですが、あなた様も反省してくださいね。元はと言えば、すべてアンジェリーク様がお屋敷を脱走したのが悪いのですから」


「いちいち言わなくてもわかってるわよ」


 不服そうにアンジェリーク様は唇を尖らす。その後で可笑しそうにクスクス笑った。


「どうして笑うのですか?」


「いや、あまりにもいつも通りで安心したっていうか」


「安心?」


 すると、驚いたことに、アンジェリーク様の頬に一筋の涙が静かに流れ落ちていった。


「何故泣くのですかっ?」


「え?」


 私に言われて初めて気付いたのか、アンジェリーク様は頬を撫でる。そして、その手が濡れていることに驚いていた。そのまま、涙が後から後から溢れていく。ついにアンジェリーク様はしゃがみ込んでしまった。


「アンジェリーク様、大丈夫ですか?」


「ごめっ……なんか、止まんなくて……っ」


「申し訳ありません。私が何か気に障るようなことを申しましたでしょうか」


「違う、の……これ、たぶん嬉し泣き」


「嬉し泣き?」


「だって、もし、このままロゼッタが、私の護衛やめちゃったら、どうしようって、不安だったから……っ」


「アンジェリーク様……」


「でも、戻ってきてくれた……だから嬉しいの」


 涙を拭いながら、アンジェリーク様はそう笑いかける。そんな姿が愛おしくなってしまって。私はたまらずアンジェリーク様を抱きしめていた。


「不安にさせてしまい、大変申し訳ありませんでした。ですが、もうご安心ください。私は、何があってもアンジェリーク様の護衛はやめません。もう誰にもあなた様の隣を譲ったりはいたしませんから」


「本当?」


「ええ、本当です。ご存知ないのですか? 私の居場所は、アンジェリーク様のおそばにしか存在しないのですよ。離れることなどできるはずがありません」


「だったら、今回みたいなことはもう二度とやめて。自分は護衛に相応しくないとか、そんなこと二度と思わないで。あなただけなのよ、私の命だけじゃなく、この心まで守ってくれる存在は」


「心、ですか」


「そう。今回改めて思い知ったの。ロゼッタは他の人達と違って、心配しつつも、私の心を優先して守ってくれてたんだって。そんなことができる護衛は、世界中どこ探してもあなただけなんだから」


「そうでしょうね。あなた様の自由を守りつつ護衛を行えるそんな器用な人間は、人類最強である私くらいなものでしょう。今回の件で改めてそう自負いたしました」


「うわ、自慢」


「事実ですから」


 すました顔でそう答えると、アンジェリーク様がクスクス笑った。その笑顔が嬉しくて、私もつられて笑う。なんとも心地良い瞬間だった。


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