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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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メイドは優秀な諜報員(ロ)

部屋に戻って一息つく。


対アンジェリーク様用にリザという保険もかけた。これで万が一脱走してもリザが守ってくれるはず。


「ひとまず一安心、というところでしょうか」


そう口にはしてみたものの、どうしてだろう、胸の不安が拭えない。本当にこれで大丈夫だろうか。見落としはないだろうか。そんな思いが胸をよぎる。


今さら気付いた。他人にアンジェリーク様のことを任せることが、こんなにも不安なことだったなんて。


自分が護衛するのであれば、こんな不安に思わなかった。絶対に自分が守ってみせると変な自信があったし、不測の事態が起きても自分なら対処できると確信していた。


でも、他人は違う。弟子達やリザのことを信じていないわけじゃない。ただ、自分が想っているほどに、彼女達もアンジェリーク様のことを想っているだろうか。特にリザは傭兵。アンジェリーク様への思い入れもそれほど無いだろうし、何より契約金以上の仕事はしないのではないか。


「こんなことなら、私が護衛をした方が良かったのでは……」


そこまで言って、言葉をかき消すように首を横に振る。


何をバカなことを。今の私は五歳児。魔法は使えても、戦闘能力はそこら辺の兵士と変わらない。それなら、私より強い相手に護衛を任せた方が安全に決まっている。それなのに、どうしてもこれで安心だと思えない。


右手で胸元を握りしめる。すると、部屋の外で女性達の声が聞こえてきた。耳をそば立てて聞いてみると、その内容から話しているのはどうやらメイド達のようだった。


「ねぇ、私達見ちゃったのよ」


「見たって何を?」


「アンジェリーク様がノア様にお姫様抱っこされてるところ」


『えぇーっ!?』


声が大きかったのか、慌てて「しーっ」という声が続く。アンジェリーク様の名前が出てきて、私は思わずドアの前に張り付いた。


「アンジェリーク様が廊下に倒れててね、ちょっと泣いてるみたいだったの。それをノア様が見つけて、優しくお姫様抱っこしたのよ。部屋まで送るって」


「きゃあ、素敵!」


「ノア様にもそんな男らしいところあったのね」


「ほんとよねぇ」


なんて言って、キャッキャと笑い合っている。それに反比例するように、私は冷静な分析を始めた。


廊下に倒れていた、ということは、やはり脱走を図ったということだろうか。それでも、倒れていたということは、まだ麻痺が残っているのだろう。ただ、泣いていたというのがよくわからない。怖い夢でも見ていて泣いてしまったのか、はたまた不自由な身体を嘆いたからなのか。情報が少なすぎてこればかりはさすがの私もわからない。でも、どうしてだろう。その泣き顔を想像したら胸が苦しくなった。


「婚約?」


メイドのその驚いたような声に我に返る。彼女達のおしゃべりはまだ続いていた。


「ほら、ノア様って今まで植物にしか興味なかったから、婚約者もまだいないでしょう? もしかしたら、このままアンジェリーク様とご婚約しちゃったりして」


「ないない! 相手はあの極悪令嬢よ? ダルクール家の名に傷が付くわ」


「でも、ノア様も旦那様も、そこはあまり気にしないんじゃないかしら。奥様のことだってあるし」


「そうそう。恋愛結婚もアリ、って感じよね」


「あのノア様が恋愛?」


「想像できないわ」


『ねぇー』


ノア様、ひどい言われよう。まあ、彼の場合仕方ないのだろうけれど。


もう聞くことはないか。そう思いドアから離れようとしたその時。


「ねえ、あのエマとイネスっていう姉妹、怪しくない?」


唐突に二人の名前が出てきて、私は再びドアに張り付いた。


「私、見ちゃったのよ。イネスって子に水を持って行った時、エマの荷物の一部が飛び出してて、その中にあったの」


「何が?」


「軍人が身に付けるエンブレム」


「えっ、あの子達軍人なの?」


「わからない。でも、問題はそこじゃなくて。そのエンブレムの方」


「どういうこと?」


「あのエンブレム、ヘルツィーオ軍のものよ」


『えーっ!?』


再び「しーっ」という声が飛び交う。私も思わず声を出してしまいそうだった。


誤字脱字報告ありがとうございます。

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