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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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私って信用ないな

「何のこと?」


「とぼけないでください。今二人の所へ行こうと思ったのではありませんか?」


「ううん、思ってないよ」


「ウソです。顔が動きたくてウズウズしてます」


「……私ってそんなに信用ない?」


「はい」


 迷わず頷かれて、私は深いため息をついた。


「今の私のこの状態見てわかるでしょう? まだ麻痺が残ってて、身体が全然言うこと聞かないの。とても一人じゃ出歩けないって」


「魔物に襲われ、重傷を負いながらも、ロゼッタさんを背負ってお屋敷に戻られたアンジェリーク様です。それくらいのことでは全然安心材料にはなりません」


「くっ。一見美談になりそうなあの行動が、まさか自分の首を絞めることになるなんて」


「自業自得です」


 エミリアのロゼッタ化が止まらない。弟子は師匠に似るのか? あんなのが増えたらたまんないよ。


 ……いや、待てよ。逆にこれを利用してみるか。


「あーあ、こういう時ロゼッタだったら、ため息つきながらも私のワガママに付き合ってくれるのになぁ」


「え?」


 おっ、エミリアが反応した。よしよし、これはいいぞ。


「イネスの容態が心配だなぁ。顔見に行きたいなぁ。ねえ、エミリア手伝ってよ」


「でも……」


「エミリアもさ、あの二人が何者なのか気にならない? 話聞きたくない?」


「それは……まあ」


「ちょっと部屋を出るだけよ。しかも、ちゃんとエミリアがそばにいるし。私は一人で動けないから逃げる心配もないし。べつに難しく考える必要はないと思うけど?」


「それはっ……ですが……」


 よし、あともう一押し。そう思い勢いづいた時、突然扉が開いて険しい顔のルイーズが入ってきた。


「エミリアお姉ちゃん、騙されちゃダメだよ。アンジェリーク様はそうやって言葉巧みに人を操って自分のワガママ叶えちゃうんだから。誘いに乗っちゃダメ」


「そう、だよね。うん、ルイーズの言う通りだ。ありがとう、危うく罠に引っかかるところだった」


 エミリアとルイーズが顔を見合わせて力強く頷く。ルイーズの発言がどうしても聞き捨てならなくて、私は慌てて二人に待ったをかけた。


「ルイーズ、その言い方ひどくない? それじゃあまるで私が詐欺師みたいじゃない」


「だって、事実ですから。前に師匠からそう言われてたんです。アンジェリーク様は人を動かすのが得意だから、護衛をする時はくれぐれも注意するようにって」


「くっ、ロゼッタめ。余計なことを。というか、ちょっと外に出るくらいいいじゃん。重傷負って五日間高熱出した後でも、ロゼッタはベランダに出たいっていう私のワガママ聞いてくれたよ?」


「それはロゼッタさんだからです。なんだかんだ言って、ロゼッタさんはアンジェリーク様に甘いですから」


「それに、師匠はお一人でもお強いですから。アンジェリーク様が無茶してもある程度対処できます。でも、私達はそうではありませんから。なるべく危険なことはさせないようにしないと」


「やだやだやだ! 私から自由を奪わないでっ」


 駄々をこねると、二人からキツく睨まれた。


「たった三日大人しくしてるだけでいいんです。子どもじゃないんですから、我慢してください」


「い・や・だ! ルイーズは私の私兵でしょ。主人の命令は絶対なんじゃないの?」


「では、命令してみてください。私をここから出せ、と」


 そう開き直られ、私は思わずぐっと口をつぐんだ。


 昨日の戦闘の時の命令と、今ルイーズに言おうとしている命令は質が違う。後者は百パーセント私のワガママ。それをロゼッタ以外の人間に命令するのは何故か気が引ける。なので、私は命令する代わりに頬を膨らませて抗議した。


「エミリアとルイーズのケーチ。もういい。ふて寝する」


『どうぞ、ごゆっくり』


 まるで嫌味かのように、二人の声が綺麗にハモる。悔しくて、私はなんとかかんとか身体をモゾモゾ動かして布団の中に潜り込んだ。


 ちょっと部屋の中を移動したいだけなのに、この言われよう。なんだ、普段の私はそんなにワガママでひどいのか。何もそこまで言うことないじゃん。


 こんな時、ロゼッタならため息つきながらも私のワガママ叶えてくれるのに。


 そんなことを思いながら、私は静かに目を閉じた。


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