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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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欧米並のスキンシップ

 …………ん?


 最初、何が起こったのかわからなかった。なんだろう、このデジャヴ。前にもミレイア様に同じことされたような……。ってか、ちょっと待て!


「ノ、ノア!? あんた、ななな何して……っ」


「今のは親愛の証。え、ダメ? お母様はよくやってるよ」


「ミレイア様!」


「ああ、悪い。いつの間にか子ども達にも私の悪い癖が移っていたらしいな。まあ、いいじゃないか。一度や二度くらい。減るもんじゃないし」


「そういう問題じゃありません! ああ見えて、一応貴族の子息なんですよ? それなのに、こんなに軽々しくレディに口づけするなんて。変な噂がたってもいいんですか?」


「私は気にしないな」


「僕も気にしないよ。それに、みんな喜んでくれるし」


 そう言ってノアが使用人達にウインクする。すると、大勢の女性使用人達が頬を赤く染めた。いや、中には男もいたか。ジルは、ルイーズを守るように一歩前へ出て臨戦態勢に入っていた。


 ダメだ。この人達に正論を言っても無駄だ。確かに、日本以外の外国ではこういうのが挨拶代わりな国もある。彼らはそういう人達と同じ考えの持ち主なんだろう。考えを改めさせる方が無理だ。そこまで結論づけて、私はわざとらしく大きなため息をついた。


「共同経営者として、このスキンシップに慣れないといけないのか」


「慣れる必要はありません。その都度阻止すればいいのです」


 隣にいるロゼッタの声が低い。あーこれ、絶対怒ってる。


「それにノア様、アンジェリーク様を恩人とおっしゃっていましたが、あなた様の命の恩人はエミリアではありませんか? 彼女がいなければ、あなた様は今頃死んでいたのですから」


「はっ! そうだった。じゃあ、エミリアにも感謝しに行かないと」


 ノアがエミリアへと近付こうとすると、彼女の前にレインハルト殿下が立ち塞がった。


「ノア、前にも言ったが。貴族の子息として、女性に軽々しく口づけするのは良くないと思うが」


「でも、口にするわけじゃないし、さっきも説明した通り親愛の証ですから」


「だったら、褒美を取らせたらいい。それで十分だろ」


「えー? お金で解決って、僕あまり好きじゃないな」


「はっきり言わないとわからないかな。やるな、と言ってるんだ」


 レインハルト殿下がこれでもかと強く睨んで牽制する。すると、さすがのノアもたじろいだ。その背後から、ラインハルト殿下が彼の頭を鷲掴む。その顔つきは暗殺者のそれだ。


「テメェ、俺の目の前でアンジェリークにちょっかいかけるとはいい度胸だ。そのふしだらな性根俺が叩き直してやる!」


「ひぃぃ! こ、殺されるっ」


 ノアはなんとかもがいて殿下の手を頭から外す。そして、ライオンから逃げる鹿のように逃げ回り始めた。それを見て、マルセル様が深いため息をついて頭を抱える。それでも、使用人達は元気になったノアを見て、みんな楽しそうに笑っていた。


 そんな様子を見て、ミレイア様がレインハルト殿下をかいくぐってエミリアを抱きしめる。


「ミ、ミレイア様っ?」


「君は、息子の命の恩人だ。感謝してもしきれない。本当にありがとう……ありがとうっ」


 その声は震えていた。抱きしめる腕にさらに力が込められる。エミリアはというと、なだめるようにミレイア様の背中をさすっていた。


「私は、ノア様の、生きたい、という想いを手助けしただけです。本当に助かって良かった」


「君は欲がないな。もっと自分の手柄としてえばれば良いものを」


「すみません、これが私の性格ですので」


 そう言って、ミレイア様とエミリアは同時に微笑んだ。


「この恩を返さないのは性に合わない。何か欲しいものをリクエストしてくれ。褒美として渡す」


「いりません、そんなっ」


「ダメだ。それでは私とマルセルの気が済まない。そうだろう? マルセル」


「ああ、もちろん。君はダルクール家の次期当主を助けたんだ。それ相応の褒美をとらせたい。考えておいてくれ」


「しかし……」


「謙遜しすぎは可愛くないぞ」


 フッと悪戯っぽく笑うと、ミレイア様はレインハルト殿下の隙を突いて、エミリアの頬に口づけた。その鮮やかな手際の良さに、誰も反応できなかったくらいだ。

 三秒後、何をされたか理解したエミリアの顔が赤くなる。それを見て怒ったのは、レインハルト殿下だった。


「夫人! 見境がなさすぎるぞっ」


「おや? 羨ましいのなら、殿下もして差し上げたらいかがです?」


「なっ……!」


 挑発的なミレイア様の発言に、レインハルト殿下はたじろぐ。そしてエミリアと目が合うと、その頬を赤く染めた。


「紳士として、そんな軽々しくできるわけないだろ!」


 珍しくレインハルト殿下が声を荒げる。そんな様子を、ノアを締め上げているラインハルト殿下も不思議そうに眺めていた。


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