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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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神の怒りが大地を揺らす

「まさか、ずっとここで待ち伏せしていたのか」


 その殿下の問いかけに対して、盗賊達はニヤリと笑った。


「ご名答。まさかお前らやダークウルフが出てくるとは思わなかったが、俺達ゃその女に用があんだよ。だから、そいつさえ置いていけば、命だけは助けてやる」


「お前達はバカなのか? ついさっきまで俺らにやられてただろ。よくもまあ、そんな大口が叩けるものだな」


「叩けるさ。だって、こっちには人質がいるからな」


 そう言って、盗賊の一人が顎で、連れてこい、と指示を出す。そして現れたのは、一人の盗賊に首に腕を巻きつけられた状態で動きを封じられたナターシャだった。


「ナターシャ!」


「お兄様……助けてっ」


「貴様ぁ!」


「おっと、動くなよ。動くとこいつの命はないぞ」


 盗賊の一人がナイフをナターシャの首元に突きつける。すると、彼女の顔が青ざめた。


「……イネス、ごめん。下すよ」


 そう断って、ノアは背負っていたイネスを下ろす。そして、ナイフを突きつけている盗賊をすごい勢いで睨みつけた。


「もし妹に手出ししたら許さない。死をもって償わせる」


「おー、怖い怖い。大丈夫だよ、そこの眼鏡女とこいつと交換だ。悪くない取引だろ?」


「ふざけるな。エマやイネスは渡さない。そして、妹も助け出す!」


「お兄様……」


「よく言った、ノア。それでこそ騎士だ」


 殿下が嬉しそうに笑いながら、剣の柄に手をかける。ギャレット様も、心配そうなコレットを背中から下ろして戦闘態勢に入った。

 そんな中、ロゼッタがルイーズに小声で指示を出す。


「ルイーズ、私が合図したらこの範囲だけでいいので地震を発生させてください。できますか?」


「はい、大丈夫です。心配なのは力加減くらいです」


「結構。ジルは地震の直後、あそこにいる弓矢の男を仕留めてください。野放しにしておくと厄介です」


「わかりました」


 ジルが頷き、二人の顔が緊張に引き締まる。


「ねえ、前にいる殿下達に地震のこと伝えなくていいの?」


「伝えたいのは山々ですが、あまり動くと敵に作戦がバレてしまいます」


「なるほど。じゃあ、バレないように伝えればいいのね」


「はあ? いったいどうやって……」


 眉間にシワを寄せるロゼッタに、不敵な笑みを向ける。私に任せなさいと。


「あんた達、こんなことしてタダで済むと思ってんの?」


「あぁ? 極悪令嬢は引っ込んでろ。お前は首領の獲物だ。首洗って待ってろ」


「おい、アンジェリーク。お前何を……っ」


 殿下の続きの言葉は、目だけで牽制した。それで彼には何か伝わったらしい。


「ああ、そう。だったらその首領にも言っといて。こんな悪さばかりしてたら、いつか怒った神様が大地を揺らして、あんたら成敗してくれるだろうってね!」


「はあ? 神が大地を揺らす? お前、頭大丈夫かぁ?」


 盗賊達が一斉に笑い出す。そして、殿下、ギャレット様、ノアの三人の視線が私に集まった。そこで私がすることはただ一つ。任せてと頷くことのみ。すると、殿下達も同じように頷いてくれた。

 ロゼッタと目配せをする。タイミングは彼女に任せた。


「あーあ、やってらんねぇなあ。いいから女寄越せや!」


「今です!」


 ロゼッタの合図にすぐさま呼応し、ルイーズが地震を発生させる。すると、盗賊達はわかりやすく動揺し始めた。


「な、なんだっ」


「地震だ!」


「ほんとに神様が怒ってるぞっ」


 それは、五秒くらいの短い地震だった。未だに動けない盗賊達とは違って、揺れが収まった直後、ジルや殿下達は一斉に動き出す。どうやら、私のあのセリフで作戦に気付いてくれたらしい。何事もやってみるもんだ。


「危ないっ」


 ルイーズが叫んだ後、私の少し手前の地面に矢が刺さる。見ると、弓矢の男が迫ってくるジルに矢を放っていた。しかし、三本目をセットした辺りで、彼はジルによってあっさりと制圧されてしまった。


「ナイス、ジル!」


 ルイーズがそう声を弾ませる。すると、彼は拳を挙げてそれに応えていた。


「ルイーズは引き続き、コレットとイネスの護衛をお願いします」


「わかりました」


「アンジェリーク様は……」


「大人しくしてるわけないでしょっ」


「……そのようですね」


 エマとイネスを狙ってきた男達を、ルイーズと一緒に蹴散らしていく。剣を交えると左腕が痛んだけれど、それすらハンデに思えるほどこいつら弱い。

 敵の数も最初の時より断然少ない。というか、もうすぐ制圧完了する。強いな、このチーム。


 殿下は、取引を持ちかけてきた男に詰め寄って、そして「ぎゃあっ」という醜い断末魔と共にあっという間に倒してしまった。

 ノアはというと、襲いくる盗賊達を蹴散らしながら、ナターシャを捕らえている男に一直線に向かって走って行く。


「お、おい! それ以上近付くと、この女の命はないぞっ」


「違うな。ナターシャを離さないと、お前が死ぬんだ」


 ノアは低い声で威嚇しながら、男に段々と近付いていく。

 そんな勇敢な兄の姿を見て、ナターシャの顔つきが変わった。それまでの怯えを振り払うかのように、キッと歯を食いしばる。その後で、彼女はなんと絡みついている男の腕に噛みついた。


「いでーっ」


 男はたまらずナターシャから腕を離す。その隙に、自由になったナターシャが走り出した。しかし、これまでの走り込みで疲れが溜まったのか、足がもつれて転倒する。


「いたたっ……」


 そう起き上がった時には、もうすでに腕を噛まれた男がナターシャのすぐ後ろに迫っていた。


「このガキっ……死ねぇ!」


「キャアァァ!」


「ナターシャ!」


 男が振り下ろした剣がナターシャに襲いかかる。しかし、間一髪でノアがナターシャと男の間に滑り込み、彼女をギュっと抱きしめた。直後、冷徹な刃がノアの背中の右肩から左脇腹を斜めに切り裂いていく。ノアの血痕が男の顔に飛び散った。


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