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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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ジェスとの戦闘

「……わかりました。二人についていきます」


「ありがとう、理解してくれて」


「ですが。もし死んだら、後を追って説教しに行きますからね」


「おー怖い」


 わざとおどけるように肩をすくませる。その後でロゼッタが「行きますよ」とジル達に声をかけた。そしてみんな殿下達の方へ走り出す。それを見送った後、私はジェスに向かって剣を構え直した。


「バカだよなぁ、お前。自ら護衛を手放すなんて」


「だって、あんた程度なら私一人で十分だもの。それ以上は戦力過多で無駄ね」


「へぇ。じゃあやってみろよ」


 ジェスが屍となった仲間を踏み越えつつ突進してくる。私は一度呼吸を整えた。


 大丈夫、ちゃんと訓練通りにやれば問題ない。なんたって、私が師事しているのは、軍神と呼ばれているこの国の英雄と、人類最強と呼ばれている暗殺者なのだから。


「はあぁっ」


 襲ってきた左右二本のナイフを剣で防ぐ。そして剣を滑らせてそれを払うと、間髪入れずに横蹴りを放つ。しかし、それは当たることなく、彼はひょいと避けた。

 次に襲いかかってきた攻撃は、剣で受けることなく、最小限の動きでかわしていく。大丈夫、なんとか相手の攻撃が見えてる。


「ちっ、ちょこまかと逃げんじゃねぇ!」


「それもそうね」


 言うや否や、相手の隙を突いて攻撃へ反転する。しかし、二十人以上殺してきたというのは伊達じゃないらしく、そのことごとくをかわされた。


「へえ。貴族の令嬢にしちゃあやるじゃねーか」


「あんたも。もっと早くにくたばるかと思ってた」


「はんっ。その減らず口、いつまで叩けるかな?」


 ジェスがニヤリと笑った時、一匹のダークウルフがジェスめがけて襲いかかる。だが、彼はダークウルフが飛びかかる瞬間、ナイフでそいつの腹の辺りを切った。ただ、傷は浅く、彼らからしてみたらかすり傷程度だろう。その証拠に、ダークウルフはまだピンピンしていた。それなのに、ジェスはどこか余裕顔。それが気になる。


「何笑って……っ」


 すべてを言い終わる前に、突然ダークウルフが倒れた。よく見ると、舌を出し、血反吐を吐いている。この反応、もしや……。


「毒?」


「ご名答ー! このナイフにはなぁ、魔物でも数秒で死に至らしめる猛毒が塗ってあるんだよ。すごいだろ?」


「なんて卑怯な……っ。どうりで二十人以上殺せるわけだわ」


「お前もこの毒の味、食らってみろよ。ヒャーハハハッ」


 ジェスが不快な笑い声をあげながら、ナイフ両手に襲いかかってくる。私はそれを剣で防いだりかわしたりしながらなんとか耐える。


 ナイフに毒が塗ってあるのは予想外だ。これじゃあ、気を抜いたら死ぬ。かすり傷程度なら致し方ないと、緊張緩和させるために心の中で思ってたけど、それすらもアウトだなんて。これは私にとっては厳しい戦いだ。


「ほらほら、ビビッちまったかぁ? 動きが鈍ってるぜ」


「……うっさいっ」


 ダメだ、かわすので精一杯で攻撃する余裕がない。


 そんなことを考えている時。地面に倒れている屍に足がとられた。そのまま「うわっ」と背後から倒れ込む。すると、間髪入れずにジェスのナイフが襲ってきた。しかし、私はギリギリのところで横転してそれをかわす。すぐさま立ち上がると、ジェスが不愉快そうに舌打ちしていた。


「ちょこまかと逃げやがって。あー、面倒くせぇ」


「それはどうも」


 この二週間、お父様とロゼッタと、倒れるほど訓練しといて正解だった。でなければ、今頃はもう奴の毒の餌食になっている。努力はいつか報われるという言葉が今なら身にしみて理解できるよ。


 周りでは、もうダークウルフの方が盗賊達を圧倒し始めている。このままここにいたら、本当にみんな食べられてしまう。早くなんとか決着をつけなければ。


「首領には殺さず生捕りにしろ、って言われてっけどさぁ。もう殺しちまってもいいよなぁ。俺ぁ短気なんだよ」


「それは人生損してるわね。もっと長い目で物事を見るべきだわ。まあでも、私もあんたんとこの首領には会ってみたいけどね」


「あぁ?」


「これ以上カルツィオーネに手を出すなって、一発ぶん殴らないと気が済まないのよ!」


「……っ! てめぇ、やっぱぶっ殺す!」


 ジェスがこめかみに青筋を立てながら突進してくる。私は剣を構えて攻撃に備える。


 その時だった。突然左腕に鋭い痛みが走った。「いっ……」と呟きつつ見ると、そこに弓矢が刺さっている。矢が来たであろう方角を見ると、盗賊の一人が弓をこちらに構えているところだった。ただ、すぐにダークウルフに襲われて姿が見えなくなる。しまった、油断した。


「ヒャーハーッ!」


 そんな私にお構いなしにジェスが襲ってくる。ナイフを剣で受けると、ズキリと左腕に痛みが走った。ダメだ、力が入らない。その勢いのまま押し倒された。なんとか剣で防いでいるけれど、上から押さえる分相手の方が有利。どんどんナイフが顔に近付いてくる。


「どこを刺してほしい? 鼻か? それともそのクソ生意気な目かなぁ?」


 ジェスはゾッとするほどの気味が悪い笑みを向ける。反吐が出そうだと反論したいけど、今はそんな余裕がない。マズイ、左手に力が入らなくなってきた。


「苦しみながら死ね、アンジェリーク!」


 その直後、ジェスの背後で爆発が起こった。一瞬「あ?」と相手の力が弱まる。チャンスだ!


 私は素早く左腕に刺さった矢を抜き取ると、それを彼の首の付け根に突き刺した。ジェスが「ぬわぁっ!」とナイフを落とす。私はそれを引っこ抜くと、最後に渾身の力で奴の左目をその矢で突き刺した。


「くらえ、クソ野郎!」


「ぎゃあぁぁぁ!」


 ジェスは矢が刺さったままの目を押さえてうずくまる。そんな彼を蹴飛ばして、私はやっと解放された。


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