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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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目指すは世界一の魔法師

 大きな火の玉は、私達の背後にあった大きな木に直撃する。すると、その木や周辺の植物達が燃え始めた。それを見て、コレットが悲鳴をあげ、ノアが叫ぶ。


「マズイ! 植物達が……森が燃えちゃうっ」


「バカな! こんな深い森の中であんな大きな火の魔法を使えば、森が燃えるリスクが高くなることくらいわかるでしょうに。相手は何を考えているのか」


 ロゼッタが不快感を露わにする。同じ火の魔法使いとして許せないのかもしれない。それよりも、早く消さないとまた大規模な山火事に発展しちゃう。


「くそっ」


 私は火の元まで走ると、上着を脱いで、それを叩きつけるように火に当てる。それを見て、ラインハルト殿下が顔を赤くした。


「おまっ……痴女か!」


「早く消さないと! また山火事になったら、今度はシャルクの人達が危険に晒されるっ」


「っ……! わかった」


「殿下!」


 ラインハルト殿下が、ジャケットを脱いで私と同じように火を消そうとする。ノアもギャレット様も同じように参加した。しかし、火の勢いは強く、どんどん周りの植物達を侵食していく。それを見て、ロゼッタがルイーズに指示を出した。


「ルイーズ、あの炎に向かって、思い切り土を被せなさい。消えるまで何度も」


「土を?」


「できますか?」


 ロゼッタがルイーズを見つめる。一応尋ねてはいるけど、あなたならできる、とその目は語っていた。ルイーズも師匠のその思いに応える。


「もちろんです」


 力強く頷くと、地面に手を添える。すると、周辺の地面が激しく蠢き始めた。ナターシャとコレットが不安そうな顔をする。


「な、何っ?」


「すみません、ナターシャ様、コレット様。少し揺れますよ」


 直後、二十五メートルプール程の地面が宙に浮いた。そしてあっという間に砂レベルまで粉砕される。


「みなさん、逃げてください!」


 ルイーズのその叫びで、私達は炎から一旦離れる。そして、それを確認した後、彼女の号令で土は炎へと覆い被さっていった。それは波のように、何度も、何度も。


「おいおい、マジかよ……」


「こんな大きな魔法を正確にコントロールできるなんて。しかも顔色一つ変えずに。彼女何者?」


 殿下とノアがルイーズの魔法を見て唖然とする。


「ジル、これは相当努力しないと彼女に追いつけないぞ」


「わかってます。でも、負けるつもりはありません」


 ギャレット様の言葉に、しかしジルは不敵に笑って応える。焦っているのではなく、どこか誇らしそうなその顔を見て、ギャレット様は「そうか」と同じく不敵に笑った。


 そのうち、何回目かの土アタックでようやく火は消えた。


「ルイーズすごい! あんな魔法の使い方ができるなんて」


「これも師匠の指導のおかげです」


 ルイーズは少し照れながらも、魔法を使って飛んでいった砂達を集めて、くり抜かれた地面を元に戻していく。すると、あっという間に植物の生えていない土だけの地面が完成した。


「師匠、どうでしたか?」


「合格点です。火も消えましたし、抉った地面も完璧に元に戻っています。ただ、少々大きく地面を抉りすぎですね。周囲に人がいる場合は、あそこまで大きく抉り取るより、中程度をその都度火が消えるまで取っていく方が、周囲へのリスクが軽減されるのではないかと」


「なるほど」


「あと、土を飛ばす時のコントロールも気になりました。ギャレット様との戦闘の時も思いましたが、目標物への命中率がまだまだ低いようです。これは今後の課題ですね」


「あー、やっぱりそうですか。なんかまだ上手く操れないんですよね。重いというか、動きが鈍くなるというか」


「まだ魔力が上手く土に伝えられていないのでしょう。こればかりは数をこなして、自分なりの操るコツを掴むしかありません」


「はい、わかりました」


「ですが、今のであなたは実戦の方がはるかに覚えが早いと確信しました。突然の指示にも関わらず、自分で考えあそこまでできるとは。私も教え甲斐があります」


「……は、はい! ありがとうございますっ」


 ロゼッタの微笑みを見て、ルイーズが誇らしげに胸を張る。ジル以外の男三人はというと、ロゼッタの批評を聞いて、信じられないと言いたげに口をポカンと開けていた。


「ウソだろ……。あれでまだまだだって言うのかよ。あんな魔法使っといて息一つ乱してないんだぞ。それだけでもすげーだろ」


「魔法師団の魔法師でも、あそこまで使いこなしている奴なんて見たことありません。国王軍の魔法師団なら、未経験と年齢と身分を考慮しても、入団と同時に小隊長を任せてもいいくらいのレベルです」


「ロゼッタさんの指導どうなってんの? 合格基準高すぎじゃない?」


 殿下、ギャレット様、ノアがそれぞれ呟く。すると、ルイーズとロゼッタが淡々とそれに反論した。


「私が目指しているのは、世界一の魔法師ですから。師匠にもそのことを伝えて、厳しい指導をお願いしています。これくらいのことで満足してはいられないんです」


「彼女がそこまで覚悟を決めている以上、私も手を抜くわけにはいきませんから。たとえ私の指導で彼女が大怪我をしたとしても、彼女が音を上げない限りはこのスタイルを変える気はありません」


「変える必要なんてないですよ。むしろ、可哀想だからって手を抜いたら怒りますよ」


「私がそんな生優しい人間だとでも?」


「師匠はお優しいですから」


「そんなことをいうのは、アンジェリーク様とあなたくらいのものです。ですが、安心なさい。訓練に関しては情を持ち込みません。優しさは死に直結するだけですから」


「それを聞いて安心しました。これからもよろしくお願いします」


 そう言って、ルイーズはロゼッタに頭を下げる。相変わらずルイーズは素直だな。指導に手を抜くなという意見には同意するけど、私はそこまで素直に従えない。


「何今の……何がどうなってるの?」


 ナターシャが信じられないものでも見たかのようにボソリと呟く。それに私は笑顔で答えてあげた。


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