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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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不審者の名は、ノア・ダルクール

『え?』


 私とロゼッタとギャレット様の声がハモる。そして同時に視線がノアという男に注がれた。彼はバツが悪そうに顔を逸らす。


「確かノアって、マルセル様とミレイア様のご長男ですよね?」


「そうだ。こいつは俺の息子だ」


「えぇっ!?」


 まさかこの不審者があのノアだったなんて。確か武術が嫌いで、そのことでマルセル様とケンカして家出中なのよね。ということは、これマズくない?


「どうして北の森を彷徨いてた。答えろ」


 ノアは答えない。そんな彼を見て、マルセル様の顔にイライラが募っていく。耐えられず、代わりに私が答えた。


「コドモダケを探しに来たらしいですよ」


「コドモダケ?」


「この子です」


 手を出して呼びかけると、コドモダケが服の中から飛び出してきた。そして、みんなに自己紹介するみたいに、「キノっ」と言ってお辞儀をする。その珍しい生き物に、殿下達の目は釘付けだ。


「ノア様はこのコドモダケを探しに、山火事で焼失した北の森まで来られたそうです。ただ、格好が見るからに怪しかったので、私とギャレット様が不審者として捕らえてしまいました。ただ、その時コドモダケの瘴気がロゼッタに当たってしまって。今彼女はこんなことになってます」


 そう言ってチビロゼッタを指さすと、レインハルト殿下とラインハルト殿下は『ぷっ』と吹き出し、クレマン様は「ほう、ほう、ほう」と目を丸くして驚いていた。ただ、マルセル様だけが頭を抱えてため息をつく。


「またコドモダケか。そんなものにうつつを抜かして、こんな騒ぎまで起こして。恥ずかしくはないのか?」


「……べつに」


 吐き捨てるように言うと、ついにマルセル様の怒りが頂点に達した。


「いい加減にしろ! 好きなものばかりにかまけて武術を疎かにして。お前にはダルクール家の次期当主としての自覚が無さすぎる。それではおじい様のようになるぞ」


「ダルクール家の恥、ですか。みんなそう言うけど、ひいおじい様は苦しんでる人達のために一生懸命研究してただけです。それに比べたら、武術なんて誰かを傷付けるだけでなんの意味もない。無駄なのは武術の方だ!」


「なんだと!?」


 カッと頭に血が上ったマルセル様が、手を縛られたままのノアを殴る。ドラマのような展開に、思わず「わお」と呟いてしまった。コドモダケはというと、ビックリしたのか慌てて私の服の中へ逃げ込む。


「お前には失望した。もう二度と家に帰ってくるな!」


「ああ、そうかよ。こっちだってあんな家ごめんだね。清々した!」


 うわぁ、売り言葉に買い言葉で親子ケンカが泥沼化してるよ。これ、どうやってまとめんの?


 みんなどうすればいいかわからず黙りこくっている。そんな中、お父様が二人の間に割って入っていった。


「マルセル、少し落ち着きなさい」


「しかし……っ」


「ノア君も久しぶりだね。見違えるほど大きくなった」


「……クレマン様、お久しぶりです」


「二人とも頭に血が上って冷静な判断ができないようだ。どうだろう、マルセル。お互い頭が冷えるまで、ここでノア君を預かってもいいかな?」


「ここで? しかし、それではクレマン様にご迷惑をおかけしてしまいます」


「うちは構わないよ。私が提案したことだからね。それに、うちにも手のつけられない子どもがいるから、何が起こっても気にしないよ」


 そう言って、お父様が私を見て白い歯を見せた。


「……お父様が私をディスってくる」


「自業自得です。反省してください」


 チビロゼッタの無感情なツッコミが心に染みる。コドモダケが服から傘だけ出して何事かと首を傾げていた。


 そんなコドモダケを見て、それまで険悪だったノアの雰囲気が一変する。


「そうか、ここで預かるってことは、コドモダケと一緒に生活できるってことか!」


 直後、手を縛られたままでスクッと立ち上がる。そして、もの凄い勢いでこちらへと向かってきた。コドモダケが慌てて服の中へ隠れる。


「僕、ここに住みます。コドモダケと一緒に、一生ここで暮らします!」


「はあ!? 一生っ?」


「ある意味プロポーズですね」


「プロポーズだと!?」


 ロゼッタのツッコミに、ラインハルト殿下が反応する。ニール様は頭を抱え、お父様は「おやおや」とこの展開を楽しんでいた。ただ一人、マルセル様だけが険しい顔を向ける。


「勝手にしろ」


 そう吐き捨てると、マルセル様はお父様に一礼した後、一人馬車の待つ方へ歩いていった。


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